日本版SOX法で台風の目 ― プロティビティがSAPと協業
2005/12/7
SAPジャパンとプロティビティ ジャパンは12月6日、日本版SOX法関連のサービス強化で協業したと発表した。SAPジャパンのSOX法対応の文書管理ツール「SAP MIC(Management of Internal Controls)」とプロティビティの内部統制文書化テンプレート「標準RCM(Risk Control Matrix)」を連携させ、SOX法対応で最も時間がかかるとされる内部統制に関するプロセス文書化の作業を効率化する。
プロティビティ ジャパンは2003年1月に設立。親会社の米プロティビティは元アーサーアンダーセンのコンサルタントが独立し、2002年に設立したリスクコンサルタントの専門企業。プロティビティ ジャパンは米国ニューヨーク証券取引所上場で、米国SOX法に対応した日本企業26社のうち、12社のコンサルティングを担当したという。プロティビティ ジャパンの代表取締役社長 神林比洋雄氏によると日本版SOX法の対応を検討する日本企業から多数の問い合わせがきていて、「すでに契約した企業もある」。
プロティビティはSAPのほかに、TISとも日本版SOX法を巡って提携済み。神林氏は国産ERPベンダやシステム・インテグレータなどほかのパートナーとの協業にも積極的な姿勢を見せている。これから本格化を迎える日本版SOX法関連のビジネスの中で、プロティビティは台風の目になりそうだ。
プロティビティ ジャパンの代表取締役社長 神林比洋雄氏 |
SAPとプロティビティが協力するのは、日本版SOX法の対応の中でも最も工数がかかるといわれる業務プロセスの文書化のフェイズ。文書化とは業務の一連の流れについて、その仕組みや担当者の権限、予算の執行、帳票の記載内容などを標準化して記述する作業。1つ1つの業務プロセスについて考えられるリスクを洗い出し、リスクを避けるためにどのような対処を行うかも記載する必要がある。作成する文書は外部監査に耐える厳格な内容が求められる。「財務諸表が間違ってしまうかもしれないリスクを企業がどう評価し、どうコントロールするかを文書で示すのがSOX法の趣旨」(神林氏)
SAPが示した資料によると、企業がSOX法に対応するためのフェイズは、「評価範囲の決定」「全社的統制の文書化」「IT全体統制の文書化」「プロセス統制の文書化」「テスト・評価・改善」の5段階。そのうちで最も時間がかかるのがプロセス統制の文書化で、51%を占める。SAPジャパンの代表取締役副社長 COO兼CFO 藤原浩氏は「多くの時間がかかるのは参考するサンプル文書がないから。多くの企業は統制の対象となるプロセスで行うべき“統制”と、統制を阻害する“リスク”を整理した経験が少なく、作成すべき内部統制文書のイメージがつかめない」と説明した。
SAP MICと連携させるプロティビティの標準RCMは「監査法人が要求する内部統制の文書化のフォーマットに即したデータサンプル」。業務サイクルごとに「財務報告目的」に関連する標準的なリスクと、リスクを低減するサンプルコントロール(統制)が示されている。神林氏は「リスクとコントロールはN対Nの関係にあり、サンプルのテンプレートが必要。標準RCMはあるべきリスクやコントロールの特定を容易にし、文書化作業の時間を節約できる」と説明した。標準RCMは現在、日本版SOX法に合わせて改定中。2006年初めにも公表されると見られる金融庁の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」の最終版と、実務指針を受けて微調整し、2006年3月に提供開始する。
標準RCMの価格は約700万円。ある企業では標準RCMを適用することで、文書化の時間を2〜3割削減できたという。SAPの藤原氏は「顧客の案件ベースで、ベストの効果がでるように共にワークした方がよい部分については協業を深めていく」とも述べ、日本版SOX法に関して別分野でも協業を検討していく姿勢を示した。
(@IT 垣内郁栄)
[関連リンク]
SAPジャパンの発表資料
プロティビティ ジャパン
手早く分かる「日本版SOX法ポータル」開設
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