これからのスパコンは、安いLinuxクラスタの時代?

2005/12/9

 リナックスネットワークスは12月8日、報道関係者向けの説明会を実施し、同社の活動概要などを説明した。同社 COO ディーン・ハッチングス(Dean Hutchings)氏は、「スーパーコンピューティング(HPC)市場における、Linuxクラスタのシェアは年々拡大しており、いまや50%を超えている。2004年度には対前年比30%増の72.5億ドルに達した」と語り、HPC市場で価格対性能に優れるLinuxクラスタが優位であると強調した。

リナックスネットワークス COO ディーン・ハッチングス氏
  リナックスネットワークスは1989年設立の会社で、設立当初はプリント基板などを製造していた。その後、1997年に世界で初めてLinuxクラスタのスーパーコンピュータを発売し、現在ではLinuxクラスタのスーパーコンピュータ専業メーカーとなっている。いままでに150社、400のスーパーコンピュータシステムを納入したという。

 ハッチングス氏は、「従来、スーパーコンピュータはレガシーシステム上で動くものが多かったが、近年ではクラスタが増えており、2004年第4四半期にはほぼ50%になっている。また、顧客も従来は95%が官公庁だったが、現在は45%が官公庁、55%が民間だ。このように市場はめまぐるしく変化している」と説明。日本は、米国に次ぐ世界第2のHPC市場であり、同社もアイシン精機や産業技術総合研究所(AIST)などに50セット以上を販売したという。

 同氏はLinuxクラスタのメリットに「コストパフォーマンス」と「アプリケーション最適化」を挙げる。同社のスーパーコンピュータである「LS-1」や「LS/X」シリーズでは、CPUにOpteronやItaniumを利用しているほか、OSはSUSE Linuxを採用するなど汎用的な製品で構成し、コストを削減している。一方で、通常横向きに設置する筐体を縦置きして熱効率を改善したり、スーパーコンピュータ上で動くアプリケーションをスーパーコンピュータ向けに最適化し、処理速度を改善するなどのコンサルティング活動も行っている。

米ボーイングの使用例。緑の部分がスーパーコンピュータのみを使用し、赤い部分は風洞のみ。グレーの部分はスーパーコンピュータと風洞の両方を利用しているという
 同社最大の顧客である米ボーイングは、次期ジャンボ旅客機「ボーイング787」の設計・開発にLinuxクラスタを利用。流体力学を中心にさまざまなテストをスーパーコンピュータ上で行っているという。一方、従来どおりの風洞を使った実験も行っているが、「やはり風洞の方が時間もコストも何倍もかかることから、将来的にはすべてスーパーコンピュータ上で設計・開発を行いたいようだ」(ハッチング氏)とコメントした。

 ハッチングス氏は、「現在、スーパーコンピュータのトップ500の3.5%をLinuxクラスタが占めている。当社は平均32〜64CPUのシステムを出荷しているが、業界平均は8〜128が中心だ。浮動小数点の計算が速いだけではダメであり、アプリケーションをいかに効率よく動かすかが重要だ。当社はアプリケーションを最適化することで平均40%速度を改善している。価格面でも、あるケースでは他社製品の10分の1程度に抑えることができた。Linuxクラスタは、コストパフォーマンスとアプリケーション最適化で対抗していきたい」と抱負を語った。

(@IT 大津心)

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