ユーザーよ。Linuxに目覚めよ!!〜日本OSS推進フォーラム
2006/2/18
日本OSS推進フォーラムは2月17日、日本OSS(オープンソースソフトウェア)推進フォーラムセミナー「オープンソースが企業システムを変える!〜政府と民間が共同で行うOSS基盤整備事業とその成果〜OSS先端ユーザ企業に見る新たな世界」と題した講演会を実施した。
日本OSS推進フォーラム 代表幹事 桑原洋氏 |
OSS推進フォーラムの活動状況では、まず「OSSを政府が調達する際のガイドラインの作成と実証実験」や「OSSに関する主に中韓の推進」などを挙げた。ガイドラインの作成では、政府や自治体のシステムでOSSを調達する際の記述例の提示や、学校でのOSSデスクトップ利用の実証実験の提案などを行っているという。国際協力では、現在は主に中国と韓国との間でOSSの情報共有を行っているが、「今後は中韓にとどまらず、全世界的に展開していきたい」(桑原氏)と語り、今後の展望を示した。
桑原氏は、今後OSSが発展していくためには「ユーザーにメリットを啓蒙し、導入意欲を高めること」や「技術・機能的に先進的であること」「短期間で移行できるような親和性の確保」「政策制度面での条件整備」などが重要だと説明。中でも「OSSというと“無料”にばかり目がいきがちだが、すべてが無料はよくない。よいアプリケーションは有料で利用するべきだ。それにより競争が生まれて洗練される」と述べ、競争と協調のバランスが最も重要であると主張した。同氏は、今後OSS発展のカギを握るのはユーザーの目覚めとその要求への対応や、OSSの先行性の確保だとし、「OSSはユーザーニーズを先行していく。ユーザーは、早くLinux、OSSのよさに目覚めてほしい」と語った。
経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 課長 鍛治克彦氏 |
OSSについては、利用者の観点から「1社独占ではない選択肢の拡大」や「1社依存状態によるセキュリティ懸念からの脱却」などのメリットが、ベンダ側の観点では「オープンな協業による新しいイノベーションの促進」や「ブラックボックスのない環境」などのメリットが考えられるという。これらを考え、経済産業省では、技術開発や国際協力、法的課題、OSSの利活用促進のための具体的施策を数多く考えているとした。
次に法的問題については、米IBM会長の「パルミサーノ・レポート」を取り上げ、「パルミサーノ・レポートでいわれているように、ITのような進歩の早い分野では特許による保護よりもOSSの方がよいのではないだろうかという議論を始めている。欧米でも非常に加熱している議論であり、いま政策的にホットな問題だといえるだろう」と説明。一方で、「バイオ分野では特許による保護が非常に重要だ。このように、分野によって、まったく性質が異なるため、慎重に議論して進めていかなければならない」と語り、当面は慎重な議論をしていく姿勢を示した。
このようなソフトウェアの法的保護の問題を論じるために、経済産業省では「ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会」を設立。その中間報告では、ソフトウェア分野では、「多層レイヤ構造」や「ロックイン傾向が強い」といった特性や、「イノベーションが累積的に発生する」「ほかのハイテク産業に比べて資本コストが低い」「技術変化スピードが速い」といった5つの特質があることが明らかになったという。これらの特性を踏まえた上で、今後さらなる議論を重ね、しかるべき施策を行っていくとした。
最後にデジタルコンテンツでは、「いま、デジタルコンテンツ市場がコンテンツ市場全体をけん引している。年率20%以上の伸びだ。今後はデジタル放送を中心にコンテンツのデジタル化が飛躍的に拡大していくだろう。一方で、人材や資金の不足や、参入障壁、流通チャンネルの整備など課題も多い」とし、「知的財産権の保護と利用のバランスや有害情報の青少年への影響、DRMの相互運用性の確保などまだまだ検討しなければならない課題が山積の状態だ」と語り、今後デジタルコンテンツを普及させるための課題を洗い出し、早期に対策を打つ方針であることを示した。
(@IT 大津心)
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