日本版SOX法に上場企業の80%が「負荷が大きい」、NRI調査
2006/2/22
野村総合研究所(NRI)が2月21日に発表した日本版の企業改革法(通称:日本版SOX法)についての調査で、上場企業の80%以上が日本版SOX法の対応負荷が「非常に大きい」「大きい」と答えている。内部統制の文書化やリスクの洗い出しが難しいとしている企業が多い。一方、対応は「あまりコストをかけずに必要最低限のレベルを確保」としている企業もあり、NRIは「日本版SOX法に対する意識は高いものの、受け身的な対応が中心」と指摘している。
調査は東証1部、2部、東証マザーズ、JASDAQに上場する主要企業に実施。2005年12月に実施し、380社が回答した。この380社は米国市場には非上場で、内部統制の整備は日本版SOX法対応が初めての企業が多いとみられる。
日本版SOX法の導入が検討されていることについては86.1%の企業が「知っていた」と回答。2005年7月に金融庁が公開した日本版SOX法の草案も61.2%の企業が「見た」としている。また、「何らかの対応を開始している」という企業が63.4%あり、積極的な姿勢が分かる。
ただ、その対応内容は「(監査法人、コンサルティングファームなど)社外のサービス提供者に相談した」(61.9%)や、「責任者またはリーダーを任命した」(34.7%)、「プロジェクトを立ち上げた」(31%)が多く、準備段階の作業が中心。「具体的な作業を実際に開始した」は23%、「作業計画を作成した」は20.5%にとどまっている。
業種別では電力・ガスや金融で、何らかの対応を開始した企業が多い。一方、商業やサービスは、他業種と比較して対応を始めた企業が少ない結果になった。
日本版SOX法の対応負荷については、42.6%の企業が「非常に大きい」と回答。「大きい」と答えた企業も37.9%あり、80%以上の企業が対応負荷の大きさを認識している結果となった。対応負荷が「小さい」と答えた企業は1.3%だった。
対応で特に難しい事項を複数回答で聞いたところ、「統制の文書化」が61.3%で突出して多かった。内部統制の整備では、ビジネスプロセスの文書化が最も時間、コストがかかるとされている。ERPベンダやコンサルティングファームも文書化を支援するサービスを相次ぎ発表していて、内部統制関連ビジネスのポイントになっている。2番目に多かったのは「リスクの洗い出し」(33.4%)。「対象範囲の決定」(31.8%)や「統制の業務への適用」(31.6%)、「情報システムの改変」(31.3%)などが続く。
一方、対応への考えでは消極的な姿勢が目立つ。約半数に当たる47.1%の企業は日本版SOX法対応について「(同業など)他社と同等レベルを確保」と回答。「あまりコストをかけずに必要最低限レベルは確保」の企業も36.8%いて、NRIは「やや受け身的な側面も否めません」としている。「多少のコストをかけてでも高レベルを確保」するとしている企業は16.1%に過ぎない。
NRIは今回の調査から「現時点で日本企業は、日本版SOX法に対する認識は高いものの、受け身的な対応が中心となっている」と指摘。そのうえで、「中長期を見据えたERM(エンタープライズ・リスク・マネジメント)の仕組みを本格的に構築するという全社的な取り組みにシフトしなければならない」と訴える。さらにそのためには「リスクの洗い出し」や「リスクの重要性の特定」など、事前の検討が極めて重要になるとしている。
(@IT 垣内郁栄)
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野村総合研究所の発表資料
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