ライブドア、内部調査結果を公表、外部調査委員会設置も

2006/2/25

[わたしにいわせれば大馬鹿野郎]

ライブドアの執行役員社長兼CEO 平松庚三氏

 ライブドアの執行役員社長兼CEO 平松庚三氏と執行役員上級副社長 清水幸裕氏は2月24日、およそ1時間30分にわたる記者会見に応じた。この会見は日本記者クラブが両者に参加を要請したもの。2月23日付けで代表取締役に就任した山崎徳之氏は米国滞在中で不参加だった。

 冒頭、平松氏は「社長就任から4週間たってようやく『ライブドアをわたしの責任で再建していきたい。再建してやろうという』ことがいえるようになった。これまではブルペンで1球も投げずにマウンドに上がった投手のような気分だった」と野球に喩(たと)えながら、自らの心境を語った。そして、「わたしにいわせれば(自分も含めてこれまでのライブドアは)大馬鹿野郎だった」と強い口調で旧経営陣が指揮した同社の状況を批判した。

[マネジメントに対する教育・研修プログラムは皆無]

 今回の会見では、2月13日の記者会見で平松氏が言及した「コンプライアンス強化委員」(アドバイザー:麗澤大学企業倫理研究センター 副センター長 梅田徹氏)の調査に基づくレポートの概要が発表された。公表内容はあくまで概要であり、数値や具体的な個人名などの詳細データは明らかにされなかった。調査はインタビュー形式で行われた。インタビュー実施者はコンプライアンス強化委員会メンバー3人とオブザーバーとして内部監査室の2人。取締役、監査役、執行役員を含む14人を対象とした。

 レポート概要を見ると、同社のガバナンス体制は、一部の取締役(「逮捕された取締役と認識してもいい」と執行役員上級副社長 清水幸裕氏がコメント)への権限・情報の一極集中による独裁的なものだったことがうかがえる。また、一部取締役が内部監査室の報告に対し、“顕在化していない問題にコストをかける必要がない”として耳を傾けることがなかった状態をも明らかにした。

 また、企業組織のコンプライアンス上、社員にとっての判断基準となる倫理綱領が欠如しており、マネジメント層に対する教育・研修プログラムも一切ない(一般社員教育は1時間の入社ガイダンスのみ)状態で、平松氏が「今回の事件は(社会的な影響力を持つ企業としての)認識の欠如、モラルの欠如が引き起こした」と総括できるほどに杜撰(ずさん)なコンプライアンス体制だった。

 さらに、3カ月の査定期間の設定によるプロセスを重視しない短期利益追求型の社内文化、バックオフィスの軽視(広報にも売上目標が課されていた)などの指摘もあった。

 これらの調査結果を受けて平松氏は、ライブドアグループの今後の経営方針を発表、ポータルサイト「Livedoor」を中心としたオンラインサービスに注力する意思を示した。

[事業の柱は3本]

 平松氏が示したライブドアグループの今後の経営方針は、ビジネス領域を「メディア」「ファイナンス」「ビジネス・ソリューション」の3つに絞り、これらの領域をポータルサイト「Livedoor」を中心に展開するもの。ただし、東京証券取引所は堀江貴文前社長らが有価証券報告書の虚偽記載容疑で再逮捕されたのを受け、ライブドア株およびライブドアマーケティング株の上場廃止について最終調整に入っている。上場が廃止されれば、ライブドアによる証券事業の継続は困難となる。この点について平松氏、清水氏ともに、「詳しいことは話せないが、さまざまな可能性を検討している」とし、何らかの形でファイナンス事業の継続を図る意向を示した。

 「ビジネス・ソリューション」の分野は、平松氏が代表取締役を務める業務ソフトベンダ「弥生」の製品やサービスを中核に、ポータルサイトとの連携効果を狙いながら事業規模を拡大していく計画。現在、「弥生」のユーザーは全国に54万社(中小規模企業が中心)あるという。Livedoorのショッピングサイト「Livedoorデパート」にはおよそ8000社が出店しているといい、平松氏は「弥生ユーザーとLivedoorデパートの出店者を結び付けた新たな事業展開が可能」と話す。とはいえ、この事業プランは平松氏が弥生の事業プランとして以前から発表していたものである。

[外部調査委員会の設置]

 コンプライアンス強化委員会による内部調査とは別に、「会計」「法務」両領域において一連の事件調査および社内体制の調査を実施する「外部調査委員会」を設置する。会計調査チームは会計監査法人が担当、法務調査チームは法律事務所が担当。調査結果は取締役会に報告され、旧経営陣に対するあらゆる措置を取る準備を整えているとする。平松氏は「現時点で膿(うみ)がすべて出たと思っているし、思いたい」というが、外部調査の結果如何(いかん)では、旧経営陣に対する断固とした責任追求を行うことを強調した。

[株券発行数とそのコスト、新取締役など]

 そのほか、未発行分の株券発行のコスト算出の方法や現在の発行済み株式の総数について記者から質問が出たが、「概算が把握できていないため」(清水氏)コメントはなかった。社名変更は「選択肢の1つだが、現時点ではないといっていい」(平松氏)。フジテレビとの提携は「ぜひとも継続したい」(平松氏)。前代表取締役の熊谷史人氏に代わる取締役には、裁判所が国選弁護人を仮の取締役として氏名することで進行中ということである。

 なお、平松氏は、6月に開催予定の臨時株主総会において「(代表取締役として)指名され、承認されれば、受けるつもり」と明言した。

(@IT 谷古宇浩司)

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