RFID、国家レベルで普及施策が進行中

2006/3/16

東京大学 名誉教授(工学博士)の齋藤忠夫氏

 社団法人 電子情報技術産業協会は3月15日、都内で「RFID最新動向シンポジウム」を開催した。電子タグ(RFID)にかかわる国家プロジェクトの紹介から海外における電子タグ技術の動向解説まで、電子タグの最前線情報を披露した。

 内閣府総合科学技術会議でユビキタスネットワーク連携施策群コーディネータを担当する東京大学 名誉教授(工学博士)の齋藤忠夫氏は、RFIDが高度化する情報技術と現実世界とのインターフェイス役を果たすと考えている。流通分野でのバーコードからRFIDへの移行は、この考えを端的に表している。確かに、サプライチェーン全体を可視化し、在庫の縮小、物流時間の短縮、店舗における品切れの減少、荷扱いの誤りの減少といった新たな付加価値の追加は、RFID技術の登場によって従来よりも容易に実現できるようになったといえる。

 しかし、RFIDの普及を促すうえで、齋藤氏が懸念する日本独自の課題がある。システム構築手法である。日本国内におけるコンピュータ普及の歴史を振り返ると、1960年代半ばを境に「ユーザーのコンピュータ能力の低下が起こり始めた」(齋藤氏)。日本では、各社独自規格のメインフレームを核にハードウェアベンダがユーザーを囲い込み、“ハード−ソフト”の一体供給を続けてきたという背景がある。このために、「アーキテクチャの不安定、ソフトウェア産業の不成立といった弊害を産んだ」と齋藤氏は指摘する。

 一方、米国ではハードウェアとソフトウェアは分離して供給され、結果的に、一般業務の社会的なデファクト手順や共通処理手順を利用したネットワーク化(EDI、CALS)の進展を後押しした。これらのことは、実はRFID導入に影響する重要な問題なのだと齋藤氏は話す。RFIDの本格的な導入は、業務手順の改革やコンピュータシステムによる処理手順の変更を迫る側面がある。RFIDの社会的な影響力が大きければ大きいほど、技術的な問題(タグの単価や薄さの追求など)と並行して、日本企業に内在するIT導入の歴史的背景を勘案する必要性が大きくなるとする。

 ユビキタスネットワーク技術の国家レベルの施策としては、現在、内閣府総合科学技術会議が中心となって、総務省、経済産業省、文部科学省、国土交通省がそれぞれの分野に応じた実証実験などを行っている。

(@IT 谷古宇浩司)

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社団法人 電子情報技術産業協会

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