ITIL新バージョンに移行しなくていい? ITIL立役者が指摘

2006/5/16

 情報システム運用管理のフレームワーク「ITIL」に関する業界団体「itSMF」創設者で、終身名誉副会長であるブライアン・ジョンソン(Brian Johnson)氏は5月15日会見し、2006年秋にも最初の書籍が出版されるITILのバージョン3(v3)について、「5つのコアガイダンスは、バージョン2の内容の6割以上が引き継がれている」と指摘し、「ITILバージョン2に準拠した企業がv3に移行することは納得できない」と述べた。

米コンピュータ・アソシエイツのITIL実践マネージャー ブライアン・ジョンソン氏

 ジョンソン氏は現在、米コンピュータ・アソシエイツ(CA)のITIL実践マネージャー。同氏の同僚2人がITIL策定のアドバイザリーボードのメンバーになっていて、レポートを受けているという。同氏自身は「バージョン3についてレビューをするのがいまの役割」。

 同氏はv3について「商業的な書籍としてどれだけ価値があるのか疑問に思う」と語った。特にISO 20000に準拠している企業に対しては、ISO 20000がITILをフレームワークとして採用していることを説明し、「v3に移行する必要はない」ときっぱり。ただ、v3で新たに追加される機能もあり、企業のビジネスに内容によってはv3が適している場合もあると指摘。「ITIL関連ビジネスを展開する企業は新しいITILの情報を出して準拠するよう騒ぎ立てるだろう。しかし、v3に準拠する必要があるのか企業は考えてほしい」と話した。

 ジョンソン氏はITILに国際的な視点が欠けていることにも批判的だ。ITIL v3策定のきっかけは英語圏以外にITILを広げ、人材を育成しようということ。しかし、現在のITIL執筆者はすべて英語を話す人で、ジョンソン氏は「ほかの言葉を話す人の機会を損失している」として、国際的コミュニティの促進を阻害すると指摘した。

 米CAはエンドユーザー企業が主体的にITILを理解し、自らのITサービスに生かしていくための「地下鉄マップ」を6月12日に無償で公開する。「問題解決の迅速化」など自社のITサービスの課題をマップ上に設定すると、地下鉄駅に見立てたポイントを経由することで、その課題を解決するために必要なITILの項目や技術が理解できる。ジョンソン氏は「高額なコンサルタントを導入しなくても、CAのナビゲーションによってエンドユーザー自身が考えることができる」と話した。地下鉄マップはローカライズして日本の顧客にも提供するという。

(@IT 垣内郁栄)

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