新生ITSSは、大企業ばかりを相手にしたものではありません
2006/3/30
情報処理推進機構(IPA)は3月29日、「ITスキル標準」の新バージョンとなる「ITスキル標準 V2(バージョン2)」を4月1日に公開すると発表した。2002年12月に発表されたITスキル標準は、発表から3年強が経過して初めてのバージョンアップとなる。V2では、「1部:概要編」「2部:キャリア編」「3部:スキル編」の3編に分けるなど、大幅な見直しが行われたという。
IPA ITスキル標準センター長 小川健司氏 |
IPAは、2002年〜2004年中ごろまでをマーケットで求められる人材の戦略的育成などを行った「普及の時代」、2004年〜2006年3月を個人のキャリア開発に重点を置いた「浸透の時代」、2006年4月以降を人材投資でビジネス戦略を実現する「活用の時代」と定義。小川氏は、「やはり、ITスキル標準はトップダウンでやっていく必要があると感じている。今後はビジネス戦略に基づいた人材の育成と活用に重点を置いていく」と説明した。
ITSS V2では、まず分かりやすさと使いやすさを追求して、ITスキル標準の基本構造を明確化させ、概要編を充実させた。基本構造の明確化では、キャリア編とスキル編の2つに分けたほか、スキル編では「スキルディクショナリ」を新設した。小川氏は「以前のV1では、スキルとキャリアが渾然としており分かりにくいとの指摘が多かった。また、評価基準も、『基準を達成したらどのレベルなのか?』が分かりづらかったため、今回はある指標の達成は、そのレベルのエントリレベルの基準であると明確化した」と語った。
また、「ページ数が多ければいいというわけではないが」(小川氏)と前置きしたうえで、V1で16ページだった概要編を128ページにまで拡張したことを明らかにした。そのほか、ITアーキテクトやプロジェクトマネジメント、オペレーション職種で専門分野を再定義した。そして、今後は改訂を定期化し、毎年10月ころに改訂を行うとした。
今回の改訂の中で最も変わったのは、基本構造がキャリア編とスキル編に分けられたことだろう。新バージョンでは、専門職種や当該職種の市場価値に焦点を当てた評価基準を「キャリア編」で定義。職種として備えておくべきスキルとその習熟度合いを「スキル編」としてまとめた。さらにキャリアを一覧化しているキャリアフレームワークと並ぶものとして、スキルを一覧化する「スキルディクショナリ」を新設した。
評価基準は、「各レベルのエントリ基準である」と明確化し、求める実績の具体的な回数も明記されている。例えば、システム開発のレベル6であれば、プロジェクトサイズを「管理する要員数がピーク時50人以上または年間契約金額5億円以上」または「管理する要員数がピーク時10人以上50人未満または年間契約金額1億円以上5億円未満で、複雑性の項目の条件を4項目以上満たすこと」といういずれかを満たし、“成功裡”に達成しなければならない。小川氏は、「今回は“責任性”と“成功裡”という点を重視した。いずれも欠けていては基準を満たしているとはいえない。また、要員数や金額だけでなく、複雑性との組み合わせも条件に含めたことで、中小企業でもキャリアパスが描きやすいようにした。従来の『ITスキル標準は大企業向け』というイメージを払しょくしたい」と語った。
専門分野の見直しでは、ITアーキテクトやプロジェクトマネジメント、オペレーション職種で専門分野を再定義し、旧バージョンの11職種38専門分野から、新バージョンでは11職種35専門分野に減っている。例えば、ITアーキテクトの場合、従来の専門分野はアプリケーションやネットワーク、セキュリティなどだったが、新バージョンではアーキテクチャ設計の視点で分類。設計要素の近接関係からグループ分けして定義するという観点で再定義し、「アプリケーションアーキテクチャ」「インテグレーションアーキテクチャ」「インフラストラクチャアーキテクチャ」の3分野となった。
小川氏は、ITスキル標準の今後の方向性について「今回の改訂では、ITIL(IT Information Library)を意識した。しかし、今後はさらにITILを意識した作りに変えていき、できる限りITILを取り込んでいきたい。また、ユーザー企業の調達や購買といった部門に理解を深めてもらうことや、学生などに訴求して『3K』といわれているこの分野でも営業職などさまざまなキャリアパスがあることを分かってもらいたい」と説明した。
(@IT 大津心)
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