英BT、大企業向けFMCサービスの着手計画を発表

2006/5/18

BTグループ 最高技術責任者(CTO) のマット・ブロス氏

 英国BTは、独自のNGN(Next Generation Network)「21CN」の構築にいち早く着手し、そのIP基盤上で新たなサービスを展開することで、固定電話会社という旧来の殻を脱ぎ捨てた。一昨年から欧州を中心に世界各国でNGNを巡る議論の熱が高まっているが、その最先端を走っているのがBTであるといえる。5月17日、来日したBTグループ 最高技術責任者(CTO) のマット・ブロス(Matt Bross)氏は「BTの事業における通話サービスの売上比率はすでに10%以下になっている」と語った。

 同社が昨年6月に開始したサービスは、NGNを基盤した次世代通信事業の1つの成功事例となっている。「BT Fusion」というそのサービスは、米モトローラのGSM(Global System for Mobile Communication)携帯電話「V560」を、自宅の中で固定電話として使用できるようにするものだ。BTのADSL回線にBluetoothのアクセスポイント機能を持つルータを接続することで可能になる。英国のほかの携帯電話サービスと比較して低額の通話料金を実現したことが特徴である。

 同社では、「BT Fusion」のノウハウを活用し、新たな大規模企業・多国籍企業向けFMCサービスを展開しようとしている。このサービスは、オフィスや家庭、BTが設置したホットスポットで、WiFiを固定ネットワークに接続するインターフェイスとして機能するだろう。顧客企業の既存の固定電話インフラと同社の21CN、デュアルモードのWiFi/GSM携帯電話を融合したサービスである。今後数カ月中にサービス開始のためのシステムを構築し、2007年初頭に企業顧客に向けた試験実装を行う計画である。プロジェクト名は「Enterprise FMC」だ。21CNとリンクすることで、電話のインテリジェントなルーティングも可能となる。カレンダーアプリケーションに会議の予定を入れておけば、会議中に電話の着信があった際、自動的にボイスメールへ転送し、会議終了後は自動的に通常のサービスへ戻すというような使い方ができる。

 日本国内でもNGNに関わる問題は、政府レベルで論じられる緊急課題となっている。2006年1月に総務省が発足した「通信・放送の在り方に関する懇談会」は、次世代の通信インフラ構築を視野に入れた現実的な問題点を話し合っている。同懇談会では、BTグループが加入者部門を社内事業部(オープンリーチ)として独立させ、競争相手がBTと同じ条件でアクセス回線を使用できる試みについても言及していた。当然、視野に入っているのは、NTTの改革議論である。BTジャパンの代表取締役会長兼CEO 北里光司郎氏は、日本の通信業界の状況についてコメントし、「(BTが行った)オールIP、コンバージェンス、アクセス網の独立化といったことは、日本の状況を議論するうえで参考になる事例だろう」とした。

(@IT 谷古宇浩司)

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BTジャパン

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