価値指標としてのページビューはWeb2.0時代に必要とされるか?
2006/5/27
ネットレイティングス 代表取締役社長 萩原雅之氏 |
インターネット視聴率調査のネットレイティングスは自社で行ったいくつかインターネット利用動向調査を通じて、「Web2.0的サービス」の台頭が目立ち始めたとコメントを発表している。同社は毎月末に独自調査に基づくニュースリリースを配布するのだが、3月はウィキペディアの訪問者数の大幅な増加、4月はVideo共有サイトYouTubeの人気の高さというように、Tim O'Reillyが定義したWeb2.0的性質を備えるWebサイトを取り上げることが続いた。ネットレイティングス 代表取締役社長 萩原雅之氏によると、5月はGoogle利用者数の増加傾向についてリリースを公開する予定である。
「Web2.0的サービス」の特徴を萩原氏は時間消費型サービスだと指摘する。2005年に大きな飛躍を遂げたソーシャルネットワーキングサイトのmixiや映像コンテンツ配信のGyaoにおける家庭からのアクセス調査を見ると、両Webサイトともに、訪問者数の増加よりも総利用時間の急激な増加の方が目立つ。mixiの場合、2005年6月から2006年3月の間の総利用時間の差は約5倍である。2006年3月の総利用時間は1万448時間に達する。
このような状況から1つの仮説が浮かび上がってくる。Webサイトの価値を図る指標として、これまでは1ページ当たりの閲覧数(ページビュー)が重視されてきたが、Web2.0的サービスの台頭により、利用時間という指標が大きな価値を有するようになってきているのではないか。テキストおよび静止画イメージで構成されたコンテンツを読者に閲覧してもらうという形態のWebサイトであればページビューという指標は有効だが、(ユーザーによって)自律的にコンテンツが生成され、ユーザー同士がコミュニケーションを図ること自体がサービスとして成立するようなソーシャルネットワーキングサイトや、動画を含む動的なコンテンツを配信するようなWebサイトでは、ユーザーの利用(視聴)時間に比重が置かれるようになっているようだ。Webシステム構築における技術的なトレンドも、表現力を豊かにする方向に傾いている(AJAXの利用、Flashへの注目)。
このような状況を背景に、ネットレイティングスでは従来型のインターネット視聴率調査に加えて、アクセス解析データを共有しながらコンテンツ個別のアクセス状況を分析するサービスを開始しようとしている。これは、例えば、新聞社のWebサイトにビーコンを埋め込み、ビーコンが収集したデータを計測専用サーバで一括管理し、新聞業界全体におけるコンテンツのアクセス傾向などを分析するというもの。Webサイトにビーコンを埋め込み、アクセスログの分析を行う手法や製品はいくつかのベンダが提供しているが、収集したデータを共有し、分析するサービスは国内ではまだない。しかし、「海外ではすでにいくつもの事例がある」(萩原氏)という。
(@IT 谷古宇浩司)
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