MSが業務アプリ参入を正式発表、CRMを9月発売――鍵はパートナー集め

2006/7/26

 マイクロソフトは7月25日、中堅・中小企業向けCRMパッケージ「Microsoft Dynamics CRM」を9月8日に提供開始し、業務アプリケーション市場に参入すると発表した。来春にはERPパッケージも出荷する計画で、手組みのシステムが多く残る中堅・中小企業を開拓する。パートナーとの協業を柱に「マイクロソフトにとってまったく新しい製品カテゴリ」(マイクロソフト ビジネスソリューションズ事業統括本部 プロダクトマーケティング本部 本部長 御代茂樹氏)の展開を目指す。

マイクロソフト ビジネスソリューションズ事業統括本部 プロダクトマーケティング本部 本部長 御代茂樹氏

 マイクロソフトの代表執行役社長 ダレン・ヒューストン(Darren Huston)氏は2005年7月の社長就任後、業務アプリケーション参入を目指す考えをたびたび示してきた(参考記事)。しかし、同社の業務アプリケーション参入は、マイクロソフトのプラットフォーム上でERPやCRMを展開してきたISVとの競合を意味する。パートナーと競合しない形で、業務アプリケーションを始めるにはどのようなモデルが最適か。2年前から参入を検討してきた同社が出した答えは、「ソリューションの開発エンジンになる」(御代氏)ということだ。

 御代氏は「Dynamicsは業務アプリケーションの開発プラットフォームだ。システム・インテグレータ(SIer)にとって顧客に必要な業務アプリケーションを提供するうえでの、使いやすく、作りやすく、タイム・ツー・マーケットの早い開発プラットフォームを提供する」と話した。マイクロソフトは製品を提供開始する9月までに30社以上のパートナーを獲得したいとしている。

 パートナーのソリューションは、Dynamicsに対して拡張機能やテンプレートを提供する「拡張ソリューション」と、パートナーの既存製品と連携させる「連携ソリューション」、パートナーがDynamicsを自社製品に組み込む「組み込みソリューション」の3点を想定。同本部 プロダクトマーケティング本部 製品戦略部長 新保将氏は、「連携、組み込みの両ソリューションを特に広げたい」と話した。

 9月に提供開始するのはMicrosoft Dynamics CRM 3.0の日本語版。製品開発は今年3月にすでに終了していて、パートナーのトレーニングなどを開始している。Dynamics CRMは20人〜1000人規模の中堅・中小企業、大企業の部門で利用可能。取引先企業や営業パイプラインを管理する「営業」と、マーケティングの計画、予算管理などを行う「マーケティング」、サービス契約の管理、レポートなどを行う「サービス」の3つの基本機能があり、「CRMの基本機能は網羅している」(同社)。

マイクロソフト ビジネスソリューションズ事業統括本部 プロダクトマーケティング本部 製品戦略部長 新保将氏

 Dynamics CRMの特徴は「Microsoft Office」との連携。Dynamics CRMはWebブラウザベースのアプリケーションだが、「Microsoft Outlook」「Microsoft Excel」などからもデータにアクセスして利用できる。Outlookで送信する電子メールを営業案件にひも付けることで、Dynamics CRMの案件情報とリアルタイムに同期させるなどの機能がある。「CRMを使っていると意識せず、OutlookやExcelで利用できる。これはユーザーが広がるきっかけになる」(新保氏)。

 Dynamics CRMはサーバとして「Windows Server 2003」または「Windows 2000 Server」と、「SQL Server 2005」または「SQL Server 2000」が必要。Outlookと連携させる場合は「Exchange Server 2003」または「Exchange Server 2000」が必須になる。マイクロソフトはDynamics CRMをカスタマイズしたり、Dynamics CRMを別のソフトウェアと連携させるための開発ツール、SDKを用意する。

 Dynamics CRMは、Small Business EditionとProfessional Editionの2製品を用意。価格は9月の提供開始時までに発表する予定。「大手CRMベンダの製品よりも中堅向けの価格になる」(御代氏)。

 マイクロソフトはERPパッケージ「Microsoft Dynamics AX」も2007年4月に国内で発売する計画。Dynamics AXは米マイクロソフトが買収したデンマークのNavisionが開発したERPパッケージ。マイクロソフトはERPパッケージとしてほかにNavision開発の「Dynamics NAV」と、同じく買収した米Great Plainsの「Dynamics GP」「Dynamics SL」がある。米マイクロソフトは4つのERPパッケージを整理して将来的にDynamics AXに統合する計画。国内ではその動きを先取りしてDynamics AXのみを提供する。ほかの3パッケージの「日本での展開は予定していない」(御代氏)。

(@IT 垣内郁栄)

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マイクロソフトの発表資料

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