マイクロソフトが企業向け新戦略、業務アプリ参入は今夏以降

2006/3/18

 マイクロソフトは3月17日、企業の内部統制構築支援を含むエンタープライズ事業の新戦略を発表した。今年前半に参入を予定していた業務アプリケーション製品については、出荷を今夏以降に延期し、パートナー連携を強化する計画だ。

 新戦略は同社の代表執行役 社長 ダレン・ヒューストン(Darren Huston)氏が2005年に発表した3カ年計画「PLAN-J」に沿った内容。「IT基盤の最適化」「コンプライアンス コーポレートガバナンス」「迅速な経営管理」など7分野の「カスタマーシナリオ」を開発・提供する。同社 執行役 常務 エンタープライズビジネス担当 平井康文氏は「7月の新会計年度からはソリューションシナリオを展開していく」と述べた。

マイクロソフトの執行役 常務 エンタープライズビジネス担当 平井康文氏

 平井氏は「まずはIT基盤の最適化に注力し、そのうえにカスタマーシナリオとして6つのソリューションを提供する」と述べた。それぞれのカスタマーシナリオは複数の製品を組み合わせて実現する。同社はエンタープライズ事業の人員も増強。新会計年度は、今年度を上回る70〜80人を採用する方針で人員は500人規模になる。

 内部統制構築については、国会に提出された「金融商品取引法案」の実務指針が金融庁から発表されるとみられる5月以降、「実務指針が起爆剤となって需要が盛り上がる」(同社 業務執行役員 第二インダストリー統括本部長 鈴木和洋氏)と期待している。

 新戦略ではIT統制の全般統制にフォーカスし、「インフラの最適化」「内部統制プロジェクト」など4分野のソリューションを用意する。内部統制プロジェクトの分野では、リスク管理コンサルティングのプロティビティジャパンと協力して、「Microsoft Office Visio 2003」で動作する業務プロセスの文書化支援テンプレートを発表した。マイクロソフトのWebサイトから無償ダウンロードできる。

 鈴木氏はマイクロソフトの内部統制支援について「まずは全般統制を下支えするIT基盤の重要性を訴えていく」と説明。平井氏も「内部統制で最も重要なのは経営から全社に対するメッセージ発信」と指摘し、「Microsoft Exchange Server」などのコミュニケーション製品をアピールする考えを示した。

 日本以外の地域で展開している業務アプリケーション「Microsoft Dynamics」については、CRMソフトウェアの「Microsoft Dynamics CRM」を今夏にも出荷する。平井氏は「Dynamicsは基本的にパートナーのISVに対するフレームワークとして提供する」と説明し、Dynamics上で動作するテンプレートの開発をISVに促す考えを示した。

 マイクロソフトの業務アプリケーションは主に中小規模の企業をターゲットにした製品で、日本での参入については、Windowsプラットフォーム向けに業務アプリケーションを開発しているISVから、競合を心配する声が出ていた。マイクロソフトは、テンプレート開発をいくつかのISVとすでに始めているといい、「特にCRMは(ISVとの)競合よりも、最初から協業を考えていく」(平井氏)という。

 マイクロソフトはERPソフトウェアの「Microsoft Axapta」などの参入も考えているが、パートナー連携がCRMに比べて難しいと見られ、平井氏は「出荷はCRMの後になる」としている。

(@IT 垣内郁栄)

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マイクロソフトの発表資料

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