オープンソースの業務アプリは広がるか? 先進のニユートーキヨーに聞く
2006/8/18
OSやミドルウェアだけでなく、業務アプリケーションにオープンソースソフトウェア(OSS)を採用するケースが増えてきた。レストラン大手のニユートーキヨーは自社で利用する食品卸向けの販売管理システムである「Olut」(オルット)を、GPLの下でオープンソースとして公開し、ほかの企業にも利用を呼びかけている。オープンソース化を推し進めたニユートーキヨーの財務部 情報システム室 室長 湯澤一比古氏は、「アプリケーションを専有するよりもオープンにした方が多くのメリットがある」と語る。
ニユートーキヨーの財務部 情報システム室 室長 湯澤一比古氏 |
Olutはニユートーキヨーの物流・調達子会社であるエヌティー・トレーディング・コーポレーション(NTC)の販売・在庫管理システムを、Webアプリケーション化したシステム。旧来の富士通製オフコンの環境を、LAPP(Linux、Apache、PostgreSQL、PHP)環境にマイグレーションした。開発はテクナレッジが担当し、ニユートーキヨーが2005年末にOSSとして「OSCARアライアンス」を通じて公開した。湯澤氏によるとOlutのダウンロード数は600を突破。7月末にはオープンソース・ジャパンがOlutの有償サポートサービスを始めた。
ソフトウェアベンダが自社製品をOSSとして公開するケースはあるが、自社開発のソフトウェアをユーザー企業が公開する例は少ない。湯澤氏は「システム開発に自信がなかった。開発会社が開発したソフトウェアを検収するのも怖いし、開発会社がなくなったり、担当者が移動するなどのリスクがあり、維持するのも怖い。検収しなくて済む方法がないかと考えて、OSSを選んだ」とオープンソースにした理由を語った。
ニユートーキヨーはすでに1999年に外食産業向け受発注システム「Cerveza」を、2002年には座席予約システム「GARAGARDOA」をそれぞれOSSとして公開している。Olutは開発段階からオープンソース開発支援サービスの「SourceForge」で公開し、コミュニティのサポートを受けてきた。湯澤氏は「裸の王様にはなりたくなかった。OSSによってOlutを多くの人が見ることになり、プログラマのモラルアップが期待できる」と語り、OSS化でアプリケーションの品質向上が期待できると説明した。
OSSの業務アプリケーションは今後広がるのか。湯澤氏は「使う側にとってはOSSは商用パッケージと同じ」と話す。「例えば、商用パッケージは500万円でライセンスを購入し、2000万円かけてカスタマイズする。OSSはライセンスの500万円はなくなるがカスタマイズやメンテナンスのコストは商用パッケージとそれほど変わらない」という。
ただ、OSSと商用パッケージソフトの一番の違いは「サポートベンダをエンドユーザーが選択できることだ」(湯澤氏)。OSSの業務アプリケーションを使うことで、ベンダのロックインを避けて、サポートやアップグレードを自社の都合に合わせることができると湯澤氏は考える。湯澤氏は「OSSはサポートサービスに不安があるとよく言われるが、OSSと商用ソフトウェアのどちらにリスクがあるのかを読み違えている」と語り、OSSの低リスク性を強調した。
(@IT 垣内郁栄)
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ニユートーキヨー
OSCARアライアンス
オープンソース・ジャパンの発表資料
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