「Linuxに対し圧倒的に有利」、MSがHPC・スパコン市場に参入

2006/8/25

 マイクロソフトは8月24日、科学技術計算などに利用するハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)用のOS「Windows Compute Cluster Server 2003」(Windows CCS)を10月2日に発売すると発表した。HPC、スーパーコンピュータ市場に参入するマイクロソフトの初の製品。Linuxの牙城となっているHPC市場に対して、Windows環境の親しみやすさやアプリケーション開発の容易性を訴える。

マイクロソフトの代表執行役 社長 ダレン・ヒューストン氏

 Windows CCSは「Windows Server 2003,Standard x64 Edition(SP1)」をベースにクラスタを構築する機能や通信ライブラリ、リソース管理、ジョブスケジューラなどの機能を搭載した。一般のWindows OSと同様にGUIを使って高度な科学技術計算などをさせることができる。並列アプリケーションの開発はマイクロソフトの開発環境「Visual Studio 2005」で可能。マイクロソフトは従来のHPCにない操作性の高さや既存のWindows環境との親和性をアピールし、「従来の分野だけでなく、もっと幅広いエリアでHPCを使ってもらえるようにする」(マイクロソフトの代表執行役 社長 ダレン・ヒューストン[Darren Huston]氏)という。

 ターゲットにするのはHPCやスパコンが従来使われてきた大企業、研究所のほか、中小企業などの「新しい市場」(マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 プロダクトグループ Windows Server製品部 部長 吉川顕太郎氏)。吉川氏は「中小企業ではシングルノードで計算しているケースもあり、HPCに対する潜在的なニーズを感じている」と話した。

 Windows CSSはすでに国内で同志社大学、川崎重工業、東京ガスグループ ティージー情報ネットワーク、東京工業大学が導入。東工大はWindows CSSで100ノード、290CPUのHPCを構築し、1.4テラフロップスの性能を出すことを目指している。NEC製サーバを導入し、すでに65ノード、130CPUのグリッド環境を構築済み。東工大の学術国際情報センター 教授の松岡聡氏は、「みんなのスパコンとしてWindows CSSを考えている。エリートのためのHPCではなく、大衆化することで新たなビジネスが生まれる」と期待を示した。

 東工大はNECやサン・マイクロシステムズ、日本AMDなどと協力して構築した、世界7位にランクインするLinuxベースのスパコン「TSUBAME」がある(関連記事)。松岡氏は「いまはLinuxだが将来的には一部にWindows CCSを乗せる可能性もある」と話した。

 吉川氏によるとWindows CCSのパフォーマンスは「Linuxに匹敵する」。ライセンス価格やシステム構築、ハードウェア、アプリケーション開発、運用管理などTCOを比較しても、Linuxに対して「圧倒的に有利」と吉川氏は強調した。米マイクロソフトのハイパフォーマンスコンピューティング担当 ディレクター キリル・ファエノフ(Kyril Faenov)氏も「Linuxでクラスタを構築しようとすると商用コンポーネントを寄せ集めないといけない」と語り、Windows CCSの優位を訴えた。

 Windows CCSの推定価格はOpen Business Licenseで9万200円。Open Business License & Software Assuranceで13万6000円など。日本語版は10月2日販売開始、英語版は8月1日に販売開始した。マイクロソフトは同時にWindows CCS対応のハードウェアやソフトウェア、構築サービスを提供する31社との協業を発表した。Windows CCSをプリインストールした製品も協業企業から10月以降に出荷される予定。

(@IT 垣内郁栄)

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マイクロソフトの発表資料

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