日本HP、IT運用管理をビジネスに近づける新戦略発表

2006/9/7

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は9月6日、同社のITサービス管理製品群に関する新たな戦略と新製品を発表した。米HPはPeregrine Systems、米マーキュリー・インタラクティブなど、最近相次いでIT管理ソフトウェアベンダを買収してきたが、これらの製品をOpenViewプロダクトファミリに統合し、ITILベースのITサービス管理ソリューションの総合力を高めるとともに、ビジネスの側面からのIT意思決定支援機能を強化していくという。

日本HP ソフトウェア統括本部 ソフトウェア・マーケティング部 松木仁氏

 HPでは、「インフラストラクチャの最適化」「ITプロセスの自動化」「ビジネスとITの整合」の3つの層でIT運用管理のコンセプトやソリューションを構成しているが、このうち「ITプロセスの自動化」を担うのが、ITILプロセス管理の「HP OpenView Service Desk」「HP OpenView ServiceCenter」やIT資産管理の「HP OpenView AssetCenter」、さらにジョブ管理の「HP OpenView JobCenter」、そして「HP OpenView Select Identity」などのアイデンティティ管理製品群だ。

 同社は今回、ITプロセスの自動化分野で「Active CMDB」という製品戦略を打ち出し、2008年にかけて順次具体化していくと発表した。

 ITサービス管理では、プロセス管理、構成管理、資産管理といった機能間で情報を共有する必要がある。ITILでは、これがCMDB(構成管理データベース)として定義されている。ActiveCMDBでは、CMDBを単一のデータベースで構築するのではなく、各製品の持つデータベースを活用し、これらをXML/SOAPで相互接続して仮想的に単一のデータベースを構成する。これにより、リアルタイム性の高い情報交換が可能になるほか、他社製品との連携も容易になるという。

 現状でもHPの製品間の接続は可能で、他社の特定製品との接続用にコネクタも用意されている。しかし、同社ソフトウェア統括本部 ソフトウェア・マーケティング部 ITSMスペシャリストの松木仁氏によると、1対1で単方向の接続に限定される、情報交換の処理能力が低いといった問題があるという。Active CMDBでは、Webサービス技術の利用により、n対nで即時的な情報のやりとりが可能になり、さらに2種類の資産管理製品が1つのITILプロセス管理製品と情報をやりとりするといった構成も簡単に実現できるようになるという。

 さらにActiveCMDBでは将来、この仮想データベース中に、各ユーザー拠点におけるITのあるべき姿を構成変更ポリシーとして埋め込み、これをもとに能動的にIT環境を制御していく機能を搭載するという。

 同戦略に向けた動きとして、日本HPはService DeskとAssetCenterの機能を強化するとともに、新製品「HP OpenView Enterprise Discovery」を発表した。

 Service Deskでは同製品の持つCMDBをグラフィカルに表示できるようになったほか、サービスを可視化して定義できるサービスエディタを搭載。AssetCenterではソフトウェア管理機能が強化されたほか、Webサービスによって同製品にアクセスできるようになった。

 新製品Enterprise Discoveryはネットワーク機器、ハードウェア、ソフトウェアの情報を自動収集し、インベントリ管理を行う製品。ソフトウェアについては利用者や利用頻度まで収集することができる。Active CMDBに対して、管理の基盤となる情報を提供する。

 日本HPはまた、ビジネスとITの整合の分野で、新製品「Decision Center」を投入した。これはAssetCenterやServiceCenterからの情報をビジネスの側面から分析し、ITに関する意思決定を支援するためのツール。

 AssetCenterでは、サーバやソフトウェアの購入価格やランニングコスト、管理に要した人件費など、例えば過去5年におけるITコンポーネントのライフサイクルコスト情報を提供できる。ServiceCenterでは、同じ期間のサービスレベル情報を入手できる。Decision Cenerにおいて両者を総合することで、例えば今後5年間に要求されるサービスレベルと、これを達成するために必要となるコストの関係を知ることができるという。

(@IT 三木泉)

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日本HPの発表資料

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