「スゴイSaaS」の3条件、米ネットスイートCEOが語る
2006/9/16
ネットワーク経由でソフトウェアを提供する「SaaS」（Software as a Service）が注目されている。米セールスフォース・ドット・コムと並び、SaaS企業の代表とされる米ネットスイートのCEO ザック・ネルソン（Zach Nelson）氏がインタビューに応じ、「SaaSがスゴイ理由は3つある」と語った。
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| 米ネットスイートのCEO ザック・ネルソン氏 |
ネットスイートはCRM、SFAをSaaSで提供している。1998年創業で、当時はASPの仕組みでソフトウェアを提供していた。ASP、SaaSとも、パッケージソフトウェアで必要なサーバやストレージなどのITインフラを用意することなく利用でき、ユーザー企業は初期投資コストを抑えることができる。
しかし、「ASPの仕組みはまったく単純で、企業の問題解決には至らないことが多かった」とネルソン氏は振り返る。対して、SaaSは「いままでネット経由で提供できなかった機能を提供できるようになった」という。ネットスイートなどのSaaSでは1つのインフラ、ソフトウェアを多くのユーザーが共有する仕組み。提供元企業が投資を抑えることができ、サービスを安価で提供できる。ネットスイートはこの仕組みを「マルチテナント」と呼ぶ。ネットスイートはアカウント単位の月額料金でサービスを提供している。価格は「NetSuite CRM」がアカウント当たり月1万1000円、「NetSuite CRM＋」が月1万5000円。これがSaaSが注目を集める1つ目の理由だ。
2つ目の理由はASPと比較して複雑なカスタマイズに対応すること。ネットスイートのNetSuite CRM、NetSuite CRM＋にはエンドユーザーやアプリケーション管理者、システム・インテグレータなど担当者別のカスタマイズ機能があり、必要に応じてアプリケーションを作り込むことができる。SOAPを使ったWebサービス連携も可能で、企業の既存ITシステムとデータ通信させることが可能。さらにNetSuiteのプラットフォーム上に独自のアプリケーションを開発できる「NetFlex AppBuilder」機能もあり、企業の個別要件に対応する。ネルソン氏は代表的なビジネス・アプリケーションであるSAPを挙げて、「米国ではNetSuiteがSAPに取って代わるといわれている」と胸を張る。
3つ目の理由はユーザー・インターフェイスの向上だ。NetSuiteはAjaxを全面的に採用し、表やグラフが複雑に表示されるビジネス・アプリケーションのインターフェイスを、Webブラウザ上で再現。レポート作成機能やグラフ作成機能、Excelと同様の機能を備えたリストエディタなどもある。インターフェイス上のコンポーネントはドラッグ＆ドロップによってエンドユーザー自身が移動させることが可能。ネルソン氏は「ネットスイートはビジネス・アプリケーションで最もAjaxを使っているユーザーだ」と強調し、「クライアント・アプリケーション以上のインターフェイスをWebブラウザで実現した」と語った。
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| 「NetSuite CRM」の利用画面（クリックで拡大します） |
SaaSがWeb 2.0的なのはユーザーの要望を反映させ、頻繁にバージョンアップできることだ。パッケージソフトウェアでは、バージョンアップごとに顧客のITインフラで正しく稼働するかのテストが必要で、作業に時間がかかる。しかし、ソフトウェアとインフラを提供元で管理するSaaSではユーザー側の環境を気にすることなく、バージョンアップが可能だ。NetSuiteはユーザーが行ったカスタマイズにかかわらず、バージョンアップできる仕組みを備えている。ネルソン氏によると2005年は「300回のアップグレードを行った」という。
ネルソン氏はソフトウェアの今後について「技術としてのパッケージ・ソフトウェアが消えてしまうことはないだろう。メインフレームのように残るのではないか。パッケージ・ソフトウェアのベンダとSaaSのベンダの成長率を比べるとSaaSベンダが圧倒的に上回る。ユーザーはSaaSを選んでいる」と語った。
（＠IT 垣内郁栄）
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