「NGNはインターネットにストップをかける」、IIJが不満表明
2006/10/4
「オープンな標準を使っているが垂直統合型のクローズドインテリジェントネットワークを作ろうとしているだけ」。インターネットイニシアティブの取締役副社長 ネットワークサービス本部長 浅羽登志也氏は10月3日に開いた同社説明会で、NTTなどが計画している次世代ネットワーク(NGN)に対して不満を漏らした。「オープンで柔軟に発展してきたインターネットの動きに対してNGNはストップをかける」と語り、インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)側から見た、NGNの問題点を指摘した。
インターネットイニシアティブの取締役副社長 ネットワークサービス本部長 浅羽登志也氏 |
NTTをはじめ各国の通信キャリアがNGNを計画している。特徴はネットワーク基盤とサービスプラットフォーム基盤を切り離し、ネットワーク基盤に依存しない形でサービスプラットフォーク上で柔軟にアプリケーションを開発、提供できるようにすること。サービスプロバイダはQoSを確保しながら、低コストで高品質のアプリケーションを提供できるようになると期待している。
しかし、浅羽氏が懸念しているのはネットワーク基盤とサービスプラットフォーム基盤の間のインターフェイスが公開されていないことだ。これではネットワーク基盤とサービスプラットフォームの依存関係が完全に解消されることはなく、アプリケーションの提供形態や品質がネットワーク基盤の動向に左右されることになってしまう。
浅羽氏は「個人的意見」と氏ながらも、「(ネットワーク基盤とサービスプラットフォーク基盤の)真ん中のインターフェイスを開放していない。水平分離型、オープンに見せかけた垂直統合型のクローズドインテリジェントネットワークを作ろうとしている」と指摘。さらに「インターネットの急成長の中で通信キャリアが失ったサービスやトラフィックに関するコントロール機能を奪い返したいという“土管屋からの復権”が本音だ」とNGNの狙いを分析した。
IIJのネットワークサービス本部 サービスオペレーション部長 島上純一氏もNTTのNGNについて、「UNI(ユーザー端末とNGN間のインターフェイス)とSNI(アプリケーションとNGN間のインターフェイス)の間で、SIPを用いたセッション管理と網内のQoS提供がNTT NGNの肝」と説明。そのうえで、NTTがネットワークの高位レイヤまで使用プロトコルを定めていることや、QoSの提供をNGN内に限定していることから「NTTのNGNはある意味で、コンテンツ・デリバリ・ネットワーク。コンテンツを届けるのを基本に考えられている」と指摘した。「NTT NGNはインターネットを代替するものでもなければ、いまのネットワークが抱えるすべての問題を解消するものでもない」
NGNについてはNTTの巨額投資を見込んで、通信機器ベンダなどのNTTへの売込みが積極化している。しかし、IIJの代表取締役社長 鈴木幸一氏は「携帯電話がよい例だが、世界標準を取れるような仕様を考えないと通信機器ベンダが世界で取り残されることになる。NGNを否定しないが慎重にやる必要がある」と語り、NTTの戦略に振り回されない対応が必要と強調した。
(@IT 垣内郁栄)
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