「CIOのジレンマ」にSAPはどう答えるか−SAP TechEd '06開催

2006/10/6

 「ITシステムのアップグレードの頻度は下げたいが、CEOからはITによるイノベーションを求められる。多くのCIOはこのジレンマに悩んでいる。SAPの『mySAP ERP 2005』はエンタープライズSOAによってこのジレンマを解消する」。独SAP AGのインダストリー・ソリューション ジェネラル・マネージャー ジム・スナーベ(Jim Snabe)氏は10月5日、都内で開催中の「SAP TechEd '06」で講演し、同社が進めるエンタープライズSOAの効果を強調した。

独SAP AGのインダストリー・ソリューション ジェネラル・マネージャー ジム・スナーベ氏

 SAPは現行のERPシステムであるmySAP ERP 2005を2010年までアップグレードしないことを宣言している。機能の追加は拡張パッケージのリリースで対応する。スナーベ氏はmySAP ERP 2005が、ビジネスにフォーカスしたエンタープライズSOAに対応し、既存システムとの連携も可能な柔軟性を持つとして、アップグレードしなくても企業が求める機能を実現できると説明した。「プラットフォームは安定化させて、拡張パッケージの提供でイノベーションを提供する。mySAP ERP 2005はプラットフォームを開放し、イノベーションへの門戸を開いている」

 スナーベ氏は「業界全体がこの流れに進むのではないか」とも話し、ERPベンダが企業に対してERPの頻繁なアップグレードを求めることは少なくなるとの認識を示した。ただ、アップグレードをせずに機能を追加するにはSOA基盤の確立が必須。スナーベ氏は「古いアーキテクチャでは対応できないだろう」と語り、SOA対応をERPの必須条件に挙げた。

 ERPを巡ってはもう1つのジレンマがある。それは導入に関して、企業が自社のビジネスプロセスをERPが定めるビジネスプロセスに合わせて変更するかどうかだ。ERPベンダはERPに組み込んだビジネスプロセスを「ノウハウを凝縮した世界のベストプラクティスだ」として、ビジネスプロセスの変更を企業に求めることが多かった。しかし、ビジネスプロセスの変更は企業にとって大きな負担。他社に対する競争優位を失う可能性もあった。

 スナーベ氏は「しばらく前まではERPに合わせてほしいと答えるしかなかった」と打ち明ける。ただ、SAPがSAP NetWeaverというSOA基盤を持ったことで、企業への回答は変わったという。「いまはビジネスプロセスが企業のどこに属するかで答えは異なる。企業のビジネスの大部分は他社と同じで、差別化にはならない。その分野にはベストプラクティスの適用が一番のお勧めだ」。そして企業の競争優位の源泉となる分野には「エンタープライズSOAによって柔軟性を確保したmySAP ERP 2005が、ビジネスごとに独自のソリューションを提供する」。スナーベ氏は「エンタープライズSOAは柔軟性と標準化の2つの世界のいいとこ取り」と語り、mySAP ERP 2005の優位性を強調した。

(@IT 垣内郁栄)

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