キーワードはゼロ・ダウンタイム
見えてきた「Oracle Database 11g」の姿
2006/10/27
米オラクルはデータベースの次期版「Oracle Database 11g」を来年夏にも出荷開始する。現行のOracle Database 10gから3年ぶりのメジャーバージョンアップ。10gの“g”と同様に11gの特徴の1つはグリッド・コンピューティングへの対応だが、同社 オラクル・サーバー技術担当 シニア・バイスプレジデント アンディ・メンデルソン(Andy Mendelsohn)氏は加えて「新しい環境への移行のコストを画期的に下げ、ダウンタイムをなくす」と説明する。
先進技術でダウンタイム最小化を狙う
米国サンフランシスコで開催した「Oracle OpenWorld 2006」では11g関連のセッションを連日開催。セッションから見えてきたキーワードは「ゼロ・ダウンタイム」だ。Oracle Databaseを基盤とするシステムのアップグレードやパッチ適用を効率化し、トータルコストの削減とダウンタイムの最小化を狙う。
アップグレードやパッチ適用の効率化では、11gは変更管理のライフサイクル全体をサポートする機能を提供する。特に目新しいのはデータベースを停止せずにパッチを適用できる「オンライン・ホット・パッチング」の実装。従来の「ローリング・パッチ・アップデート」は「Oracle Real Application Clusters」(RAC)でクラスタ構成を採っていることが前提だったが、オンライン・ホット・パッチングはRACを構成しない環境でも、本番環境のシステムに対して無停止でパッチを適用できる。
また、11gは「Oracle E-Business Suite」「PeopleSoft」「Siebel CRM」などの業務アプリケーションをオンラインのままで止めずにアップグレードする「Online Application Upgrade」を搭載する。ほかに新開発の「Snapshot Standby」技術を使ってテスト環境を作成する機能や、同時発生的な障害時のデータベースのワークロードを記録する機能、ワークロードを任意のタイミングで再生する機能などを搭載。テストなどに活用できる。
計画停止、計画外停止に対応技術をマッピング
ダウンタイムの最小化ではオラクルは計画停止と計画外停止に分けて、機能を強化する。計画外停止はコンピュータのエラーと、データのエラーの2つの要因があると指摘。コンピュータのエラーについてはOracle RACで対応する。データエラーについてはさらにストレージ・エラー、ヒューマン・エラー、改悪(corruption)、サイト自体の障害があるとしている。11gではそれぞれのエラー、障害に対して明確な技術を用意する。
ストレージ・エラーに対しては10g以降で搭載した「Automatic Storage Management」(ASM)のミラーリング機能を適用する。11gでは新たに破損したブロックをミラーコピーから自動修復する機能や、反応がないストレージへのI/Oを一時的に停止し、回復後に再度書き込む機能を搭載する。
ヒューマン・エラーに対しては、10gも実装する「Flashback」技術を使う。11gでは新たに「Flashback Data Archive」に対応。選択したテーブルの変更履歴を数年にわたりアーカイブできる技術で、オラクルは変更履歴のトラッキングや監査などに利用できるとしている。改悪はバックアップ/リカバリで対処。11gはRecovery Manager(RMAN)を強化し、ネットワークを越えたデータベースの複製を可能にした。また、「Windows Volume Shadow Service」のインターフェイスを統合した。11gにはリカバリ時のデータ修復をガイドする新機能を追加し、リカバリのための時間を大幅に減らすことができるという。サイト自体の障害には「Data Guard」による本番データベースのスタンドバイ・コピーの作成や、「Oracle Streams」を利用する。
計画停止は上記のようにシステムにかかわる停止では「オンライン・ホット・パッチング」で対応し、アプリケーションでは「Online Application Upgrade」で対応する。システム変更による停止と、データ変更による停止の2種に分けて対応し、ダウンタイムの最小化を図る。
フルスタックそろえる“MISO”の競争激化か
Oracle OpenWorld 2006で示された11gの姿は、現場の問題を解決しようとする最新技術の集合体だ。オラクルはデータベース、ミドルウェア、アプリケーションのフルスタックを1社で持つことの強みをOracle OpenWorld 2006を通して訴えた。今後は11gに関してビジネス面でのメリットや、ほかのミドルウェア、アプリケーションとの連携を強調し、フルスタックを持つほかのベンダであるマイクロソフト、IBM、SAP(オラクルを合わせて頭文字から“MISO”とも呼ばれる)との差別化を図ると見られる。
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