[Analysis]

やっぱり高い!? Windows Vista

2006/10/30

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 企業向けWindows Vista(以下、Vista)の出荷開始まで残り数週間となり、マイクロソフトはいよいよWindows XPからVistaへの移行推進に向けて、各種取り組みを強化してきた。その取り組みの裏には、「企業のビジネスPCにVistaは必要ないのではないか」というユーザーの声を懸念する、同社の意図が見え隠れする。

 10月に入ってマイクロソフトは、Vistaに関するさまざまな取り組みを開始した。その中心となるのが、「一度使ってみればVistaの良さが分かるはず」(マイクロソフト 佐分利ユージン氏)というコンセプトの下、各所で実施しているタッチ&トライコーナーだ。10月下旬に開催された「WPC TOKYO 2006」では200台以上のVistaとOffice 2007を用意し、それぞれの良さをアピールした。その後も、全国各地で同様のイベントを実施し、ユーザーにアピールしている。

 こういった取り組みの背景には、Vistaの長所がきちんとユーザーに伝わっていない状況へのマイクロソフトの焦りのようなものが感じられる。多くのユーザーはVistaのウリに、デスクトップのウィンドーを半透明にしたり、3D表示できる新しいインターフェイス「Windows Aero」や、デスクトップ検索などを連想するだろう。しかし、Windows Aeroをストレスなく動かすためには、Windows XP以上にハイスペックなPCを要求されるため、投資対効果を気にする企業や、デスクトップ検索の導入効果を懸念する企業などが、移行へ二の足を踏む可能性は高い。

 マイクロソフトはこの点に関し、「Windows Aeroを使わなくても、検索やセキュリティの高さなどそのほかのメリットを十分享受できる」(佐分利氏)と反論している。高スペックが要求されるWindows Aeroをオフにしても、デスクトップ検索やセキュリティの堅牢性、複数ユーザーが共同作業ができる「Windows Collaboration Meeting Space」といったVista独自の機能は十分にWindows XPよりも魅力的だという。同社ではこのようなWindows Aero以外の機能をアピールするために、タッチ&トライコーナーを各地で開催しているのだ。

 また、マイクロソフトは10月26日にVista日本語版の価格を発表した。個人向けの通常版が2万5800円〜2万9800円(税抜き、参考価格)、アップグレード版が1万3800円〜1万9800円。企業向けの通常版が3万7800円〜4万8800円、アップグレード版が2万5800円〜3万1800円。Windows XPの発表当時の価格と比較すると、個人向けは同程度で、企業版が数千円の値上げがされた。

 同社では、Vista出荷までの買い控え防止や、XPからの移行促進を狙って、10月26日よりWindows Vistaへアップグレードできるクーポン(優待アップグレード申込書)が付属したDSP版を出荷している。秋葉原で確認したところ、DSP版のWindows XPのHome Editionが1万3000円程度、Professionalが1万9000円程度で売られており、移行手続きが煩雑ながらVistaのアップグレード版を購入するよりお得感があった。今後企業は、この価格を参照にして、Vistaへの投資額と生産性向上を見比べ、投資対効果を見極めながら移行のタイミングを図る必要がある。

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