Oracle Database 12cは、既に多くの企業/組織でデータベース統合に利用されている。その1社として、米国の大手住宅建設会社であるプルート・ホームズ(Pulte Homes)が挙げられる。
同社はERPのアップグレードに合わせて「Oracle Database 11g」から12cに移行しており、本番環境に一つのCDBと三つのPDB、開発/テスト環境には二つのCDBと40のPDBを構築している。このマルチテナントアーキテクチャを活用したデータベース統合により、導入コストを大幅に削減した他、年間で3〜4人月程度の運用工数を削減できた。また、データベースを素早く複製できることからテストを繰り返し実施するのが容易となり、品質向上の面でも大きな効果があったという。
国内でも同様に、Oracle Database 12cの活用が進んでいる。北海道の札幌市は、システムの発注者である自治体が中身を把握できないようなブラックボックス化されたシステムを改め、オープンな技術を採用した “グラスボックス化”によりITコストの大幅削減に取り組んでいる。この目標を達成するために同市が選んだデータベースがOracle Databaseである。
札幌市が採用したコスト削減策の要は、発注者である自治体自身がプロジェクトに主体的に関わり、「複数のベンダーに分割発注」し、「調達の透明性を確保」することにある。そのために、同市はプロジェクトで利用するIT環境や開発技術を標準化した上で、それに準じた開発/テスト環境をベンダー各社に速やかに提供できる環境を整えた。その実現にOracle Database 12cのマルチテナントアーキテクチャを活用したのである。
データベースを統合するだけでなく、併せて既存の開発/検証環境が抱える課題も解決したいと考える企業は多い。その課題とは、「開発/検証期間だけハードウエア環境を構築するのは投資の無駄となるので避けたい」「開発/検証環境の構築、テストの期間が長くなると費用の増大につながる」といったことだ。
これらの課題を解決策として、Oracle Databaseによるプライベートクラウドとパブリッククラウド(Oracle Cloud)を統合的に利用するハイブリッドクラウドを活用することができる。例えば、「オンプレミスの本番環境で稼働する顧客管理データベースをパブリッククラウド上に開発用にデプロイする」「パブリッククラウド上に構築した開発用データベースから、マルチテナントアーキテクチャを使いテスト用として簡単に複数のデータベースをクローニング(複製)する」といったことが可能だ。
また、テストを網羅的に行いたいが、複雑なテストパターンを作成してテストを実施するのが難しく、それが大きな課題となっているケースも多い。この課題を解決するのが、データベーステストツール「Oracle Real Application Testing」だ。同ツールを活用することで、オンプレミスの本番環境のワークロードをキャプチャーし、パブリッククラウド上で再生することにより、網羅的なテストを短期間で実施することができる。データベースのキャプチャーやワークロード再生は何度も繰り返し行えるため、アプリケーションの改修やパッチ適用など、さまざまな場面のテストで活用することで、データベースシステムの品質を高めていけるだろう。
Oracle Real Application Testingには、「SQL Performance Analyzer」と呼ばれるSQLのテストツールも備わる。これは、特にデータベースアプリケーションの改修やデータベースアップグレード時に効果を発揮するツールだ。SQL Performance Analyzerを活用することにより、アプリケーションで使われている数千、数万のSQLを効率的かつ容易にテストすることができる。それにより、チューニングの必要なSQLを絞り込むことで、移行テストの期間と工数が削減される。また、移行後のアプリケーションで性能問題が発生するリクスを抑えられるというメリットもある。
このように、企業は、Oracle Database 12cのマルチテナントアーキテクチャと周辺ツールを活用することで、開発/検証を効率化するためにオンプレミスやプライベートクラウド、パブリッククラウドを有効に利用できるのだ。
以上、今回はCAPEXだけでなくOPEXも削減しながらプライベートクラウドを構築する上で重要な観点/アプローチと、Oracle Database 12cのマルチテナントアーキテクチャの有効性を説明した。次回は「プライベートクラウド構築への道のり」として、既存のデータベース環境をスムーズにOracle Database 12cへ移行するためのアップグレードのポイントを紹介する。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年10月28日
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