“データ”を医療サービスの向上、病院経営の武器に――ときわ会 常磐病院のDWH/BI活用最新のIT技術で変わる医療の現場(1/3 ページ)

「病院内で利用しているさまざまなシステムのデータを集約/分析するDWH/BI基盤を整備し、医療サービス向上や経営効率化の推進力とする」──福島県いわき市の常磐病院で進められているこの取り組みが、大きな成果を生みつつある。そのDWH/BI基盤を担うのが“Oracle Database 12c on ODA”だ。[プライベートクラウド/データベース統合][パブリッククラウド][高可用性/災害対策][Engineered System][Oracle Cloud][Oracle Enterprise Manager]

» 2016年01月14日 07時00分 公開
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約1万人に内部被ばく検査を無償実施。正確なデータが人々に力を与える

 かつて“炭鉱の町”として栄え、現在は東北地方でも有数の“観光の町”として福島県の経済をリードするいわき市。大きな傷跡を残した東日本大震災からの復興活動が進む同市では現在、東京23区の約2倍の広大な市域に、32万人余りの市民と福島第一原子力発電所の事故に伴う双葉郡からの避難者約2万4000人が暮らしている。

 そのいわき市において、震災による人材流出で大きなダメージを受けた医療提供体制の復旧の一翼を担っているのが、常磐病院を核とする医療介護グループ「ときわ会」だ。いわき市の人工透析患者の約8割を診療する同会は、炭鉱町時代の良きアイデンティティーを「一山一家」のスローガンに込め、地域住民と取引業者、従業員、そして経営者の全てが一つの家族を成し、皆がともに幸せになることを目指して活動している。

ときわ会 常磐病院 院長の新村浩明氏

 創始者である常盤峻士氏を会長に頂くときわ会は、医療介護事業を通して地域の復興/発展に貢献すべく、さまざまな活動を行っている。その一例として、福島第一原発の事故による放射能の影響が、食べ物などを通して県域の子供たちに与える影響を調べる「内部被ばく検査」の実施が挙げられる。同会では、希少かつ高価な被ばく検査機器を自前で購入し、幼児/児童を中心に無償で検査を実施してきた。その成果は、常磐病院 院長の新村浩明氏により学術論文として発表され、海外でも話題を呼んだ。

 「内部被ばく検査は、福島県の食べ物と子供たちが、被ばく被害とは無縁であることを正確なデータによって証明したいという思いで始めました。世界に3台しか存在しない乳児用の検査機器と、児童/成人用の検査機器を購入し、これまでに約1万人を検査しています。その結果、セシウムが検出された例はごくわずか(全体の約0.4%)であり、深刻な被害はないというデータが得られました。最新テクノロジーを凝縮した検査機器で分かったこの事実は、私たち福島県民を強く勇気付けるものであり、復興と発展に向け安心して歩を踏み出すよりどころともなるものです」(新村氏)

 ときわ会の歩みは、1982年にいわき市内で泌尿器科と人工透析科を持つ小規模なクリニックを開業したことに始まる。以来、両科を中心とするクリニックを順次展開してきた他、介護施設の経営にも乗り出して事業規模を拡大。2007年には、経営難にあった財団法人竹林病院を合併して常磐病院をグループに迎え、総合病院の経営にも乗り出した。現在は同病院と各種クリニックの他、それらの医療機関で働く職員のための託児施設や保育園、幼稚園、さらには介護施設、保健施設、老健施設を運営。2016年には高齢者を対象にした在宅診療も開始し、急性期から地域包括ケアまでをカバーする医療介護体制を構築しようとしている。

医療サービスの向上と経営効率化に向け、データ活用基盤の整備を決断

 そんなときわ会において、各種の医療関連システムを横断したデータ活用基盤導入の機運が高まる契機となったのは、医療サービスの質的向上を目的に常磐病院の医師らが行う学術研究におけるデータ活用ニーズの高まりであった。

 「当院では、電子カルテの他、透析管理や健康診断など、さまざまな医療支援システムを導入しており、それらのデータは医師が学術研究でも利用しています。ただし、各システムは専用の目的で使うことが前提であり、そこからデータを取り出して二次利用するための仕組みは用意されていません。そのため、医師が手作業でデータを取り出し、表計算ソフトなどを使って集計/分析してきましたが、データ件数が数百、数千になると、それだけで膨大な手間と時間がかかります。研究活動を活発化し、医療の質を高めていくためには、この負担を大きく軽減する仕組みが必要だと感じていました」(新村氏)

 新村氏の悩みを聞いた常磐病院 情報システム課 課長の木村智紀氏は、思案の末、院内システムの各種データを二次利用するためのデータ活用基盤の構築を着想する。各システムからデータを取得/集約したデータウェアハウス(DWH)基盤を構築し、それらのデータを分析するためのBI(Business Intelligence)ツールを導入するというものだ。

 このようなデータ活用基盤を整えれば、学術研究のみならず、常磐病院/ときわ会グループの経営効率化や医療サービスの向上にもデータを有効活用することができる。木村氏の提案に、ときわ会の経営を主導するグループ統括本部長 事務局長の佐藤隆治氏も賛意を示した。

ときわ会 グループ統括本部長 事務局長の佐藤隆治氏

 「当会は人口透析科や泌尿器科を柱にしていますが、今後もいわき市の医療提供体制の復旧/拡充に貢献していくためには、これらを軸にして経営効率化を図りながら、無駄なく的確な投資を行って事業を拡大していかなくてはなりません。各システムに蓄積されたデータを取り出して集約/分析し、状況を正確に把握することで、そうした判断が的確に行えるようになると考えました。

 また、集約した臨床検査データや医療事務関連データを分析することで、医療サービスの質的な向上を図ることもできます。例えば、個々の患者さんの治療/投薬の状況を適宜把握し、担当医が適切な処置を速やかに検討できるようになったり、病院の運営を効率化し、職員の負担を軽減しながら、より多くの患者さんを診られるようになったりといった具合です」(佐藤氏)

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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年2月13日

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