検索
連載

MIBの監視対象オブジェクトを分類する監視を自動化するSNMP(3)

Share
Tweet
LINE
Hatena

 SNMPの動作自体は名前の示すように非常にシンプルですが、アクセス対象であるMIBはお世辞にもシンプルとは言えません(第2回「どのようにしてネットワークを管理するのか?」参照)。そこで、今回はこのMIBがどのような構造をしているか、また標準MIBの中でも基本であるMIB-2にどのような情報が定義されているかを具体的に解説したいと思います。

3種類の機能を5つのコマンドで実行

 SNMPによるネットワークシステムの管理とは「機器の管理情報ベース(MIB:Management Information Base)の情報を取得(または更新)する」ことであるといえます。どのような情報がMIBで管理されているかは機器によって異なりますが、SNMPで管理される機器は必ずMIBを保持しています。

 MIBの目的はネットワーク管理における標準的な情報管理構造の確立です。そのため多くのベンダが作成することが予想されるMIBは、定義ルールや値の取得(または更新)方法を規定(*1)する必要があります。

*1

MIBの定義ルールや値の参照方法として「SMI(Structure of Management Information)」が「RFC1155」に定義されています。また、MIBの書式は「ASN.1(Abstract Syntax Notation.1)」という言語が利用され、実際のエンコーディングには、BER(Basic Encoding Rules)を利用しています。


 しかしすべての機器が固有のMIBを持っているというわけではありません。SNMPマネージャは監視対象の機器が実装しているMIBのオブジェクトID(OID)を指定して情報を取得しますが、もし対象機器がすべて異なるMIBを実装してしまうとすべての対象機器のMIBファイルを参照しなければなりません(なぜなら取得するオブジェクトのOIDが分からないからです)。

 この問題を解決するため、TCP/IPによるネットワークシステムに接続される機器が実装するべきMIBが標準MIBとしてRFCで定義されています。この標準MIBに対し、ベンダなどが独自に用意したMIBをプライベートMIBや拡張MIBなどと呼んで区別します。

機器の基本的な情報を管理する標準MIBの「MIB-2」

 機器の管理する情報は多岐にわたりますが、その中でも最も標準的なMIBとして位置付けられているのが「MIB-2」です。MIB-2は図1の示すように、MIBのオブジェクトツリーの中ではインターネットサブツリーの下(1.3.6.1.2.1)にあります(オブジェクトツリーに関しては、第2回「どのようにしてネットワークを管理するのか?」参照)。

図1 オブジェクトのツリー(画面をクリックすると拡大表示します)
図1 オブジェクトのツリー(画面をクリックすると拡大表示します)

 MIB-2の解説をする前に、少しだけ歴史的経緯を説明します。最初の標準MIBとしてRFC1156で定義されたのは「MIB-1」でした。MIB-1では114種類の管理対象オブジェクトを定義していますが、OIDの割り当てを単純で分かりやすいものにするためにこれらを8個のグループ(System、Interface、Address Translation、IP、ICMP、TCP、UDP、EGP)に分類しています。

 その後RFC1213において、新たに57種類の管理対象オブジェクトを追加した171種類の管理対象オブジェクトを11個のグループに分類したMIB-2が定義され、MIB-1を置き換えました。その後もMIB-2をはじめとする標準MIBは拡張されていますが、RFC1213に定義されているMIB-2が最も標準的なMIBと呼んで差し支えないでしょう。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

Systemグループ

 Systemグループには、機器のシステムに関係する設定が管理されています。このグループのオブジェクトは次のとおりです。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

Interfaceグループ

 Interfaceグループには、機器の保有するハードウェアインターフェイスに関係する設定が管理されています。最初のオブジェクトである「ifNumber」にこの機器が保有するインターフェイス数が格納されており、その数に応じて設定を格納するテーブル行が追加されます。このグループのオブジェクトは次のとおりです。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

Address Translationグループ

 Address Translationグループは、MIB-1との互換性のために残されていますが、MIB-2では使用していません。このグループのオブジェクトIDは(1.3.6.1.2.1.3)です。

IPグループ

 IP(Internet Protocol)グループには、プロトコルの使用に関する設定が格納されています。このグループのオブジェクトは次のとおりです。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

ICMPグループ

 ICMP(Internet Control Message Protocol)グループには、ICMPの動作に関する設定が格納されています。このグループのオブジェクトは次のとおりです。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

TCPグループ

 TCP(Transmission Control Protocol)グループには、TCPの動作に関する設定が格納されています。このグループのオブジェクトは次のとおりです。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

UDPグループ

 UDP(User Datagram Protocol)グループには、UDPの動作に関する設定が格納されています。このグループのオブジェクトは次のとおりです。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

EGPグループ

 EGP(Exterior Gateway Protocol)グループには、EGPの動作に関する設定が格納されています。EGPはautonomousシステムの通信に使用されるプロトコルで、RFC904で定義されています。EGPを実装していないシステムでは、このグループのオブジェクトの実装は必須ではありません。このグループのオブジェクトIDは(1.3.6.1.2.1.8)です。

OIMグループ

 OIMグループはCMOT(Common Management Information Protocol over TCP/IP)に関する設定が格納されるグループですが、現在のMIB-2では使用されていません。このグループのOIDは(1.3.6.1.2.1.9)です。

Transmissionグループ

 Transmissionグループには、データ転送に関する設定が格納されています。MIB-2を最初に定義したRFC1213ではTransmissionグループのオブジェクトが明確に定義されていません。その後RFC1700でデータ転送に関するオブジェクトのリストが定義されていましたので、興味のある方は参照してください。このグループのOIDは(1.3.6.1.2.1.10)です。

SNMPグループ

 SNMPグループには、SNMPの動作に関する設定が格納されています。このグループのオブジェクトは次のとおりです。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

「private」サブツリー中の機器固有のオブジェクト

 通常ベンダが機器固有の機能を管理するために補完しているMIBは、privateサブツリーのenterprisesグループ以下(図1参照)にあります。ほかの機器との差別化を図るため、積極的に新しい機能を搭載した機器がリリースされていますが、その多くはプライベートMIBによって独自の管理情報が取得できるようになっています。

 これらの追加されたMIBの情報は、各ベンダの提供するMIBファイルを参照することで確認することができるでしょう。

まとめ

 この連載ではSNMPによってネットワークシステムを管理する仕組みと、それらの情報の管理構造である管理情報ベース(MIB)について解説しました。ここまでに解説した内容はあくまでもSNMPというプロトコルの概要であり、より本格的にSNMPを理解したいのであれば、やはりRFCなどの多くの資料に目を通す必要があります。


いかがでしたか?

今後もSNMPの需要はさらに高まることが予想されます。この連載が読者の皆さまのSNMPへの理解に少しでも役に立てば幸いです。


ご愛読どうもありがとうございました


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る