Googleが開発? mixiも賛同!?
最近、「OpenSocial」「SocialGraph API」「OpenID」など、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)に関する言葉を多く耳にするようになりました。
編集部注:SNSそのものについて詳しく知りたい読者は、記事「2006年のネット界を席巻したSNS」をご参照ください。
筆者は、オープンソースのSNSエンジンを開発する「OpenPNE」プロジェクトを運営するうえで、これらの話題に当事者としてかかわっています。
本稿では、Googleが大々的に発表し、mixiも賛同を表明と鳴り物入りで登場した「OpenSocial」について取り上げます。「OpenSocial」の成り立ちや現状、アプリケーションの作り方などを前編・後編に分けてご紹介していきます。
OpenSocialとはいったい何なのか?
最初に、「OpenSocial」とは何かを解説しましょう。
「OpenSocial」とは、Googleが2007年11月に発表したSNSに関する共通のAPI、つまり、SNS上で動作するアプリケーションを開発する際に利用できる共通の機能セットのことです(参考「GoogleがSNS向けAPI「OpenSocial」公開」)。
Googleが発表した「OpenSocial」の定義は、「複数のWebサイト上にソーシャルアプリケーションを提供するための共通なAPI関数群(A common open set of APIs for building social applications across multiple sites)」となっています。
ちなみに、OpenSocialのAPIはおなじみのHTMLとJavaScriptといった既存のWeb標準で構成されており、多くのWebサイトや開発者にとって、導入が容易なように配慮されています。
OpenSocialのイメージは図2のような感じです。
従来は、それぞれのSNSが日記やフォトアルバムなどの機能を独自に開発し、サービスを利用者に提供していました。一方、OpenSocialは図2のように、SNSは利用者とアプリケーションが動作できる場所を提供する入れ物(コンテナ)として振る舞います。
アプリケーション側に対しては、外部の開発者がフレンドリストやプロフィールなどSNS内の情報を手軽に扱えるように整備されています。外部の開発者はこれらの機能を利用し、SNSに特化したアプリケーション(ソーシャルアプリケーション)を開発し、SNS上に埋め込んで、利用者に提供できるようになります。
OpenSocialが登場した背景 〜Facebook対Google〜
「OpenSocial」について掘り下げていく前に、まず「OpenSocial」が生まれた背景について解説します。
日本において規格競争といえば、古くはVHSとベータの戦い、最近だとHD DVDとBlu-Ray Discがよく知られていますが、似たような争いがいままさに、SNSの世界にも展開されているのです。
Facebookの成功、その理由とは?
実は、「SNSが場所を提供し、開発者がそのうえにアプリケーションを作って提供する」という分業の思想は、なにもGoogleが初めてではありません。
最初にこの「分業」を始めたのは、海外で提供されているSNSの1つである「Facebook」です。Facebookは、「サーバとSNSのメンバー情報を提供するから、アプリケーションは外部の利用者が作ってちょうだいね」とユーザーが交流する場として、アプリケーションを作るためのAPIを提供しました。
そして、その試みは大ブレイクしました。このブレイクの秘訣はなんだったのでしょうか??
それは、「SNS利用者」「SNSオーナー」「アプリケーション開発者」の三者のメリットが合致したから成功したのです。
現実の人間社会と同じように、SNSも利用者数が増えてくるといろんな趣味嗜好(しこう)を持った人に分かれてきます。それぞれのSNS利用者はサービス開始当初はSNSオーナーが提供した機能で満足していても、趣味嗜好の多様化とともに万人が納得するサービスしか提供されないと、次第につまらなく感じてしまうようになります。ファミレスだけだと飽きてしまうのと同じですね。
- SNSサービスのファミレス化に飽きてしまう「SNS利用者」
- 利用者のニーズが多様化し過ぎて、対応に困る「SNSオーナー」
ここで、二者がデメリットを感じてしまいますが、第3の当事者である「アプリケーション開発者」にとってはどうでしょうか?
アプリケーション開発者はSNSという数千万人の利用者がいるサイトは非常に魅力的です。このサイトにアプリケーションを作れば容易にもうけられそうです。しかし、SNS上のサービスは基本的には「SNSオーナー」が作るものだったので、中に入ることはできませんでした。
- 多くの利用者がいるのに、サービスを提供できない「アプリケーション開発者」
こうして、三者のデメリットがそろってしまいました。この三者のデメリットを鮮やかに解決したのがFacebook APIによる、「SNSという場の運営」と「アプリケーション開発」の「分業」だったのです。この分業が実現したことで以下のようになりました。
- 「SNS利用者」は、多くのアプリケーションを選択し、自分に合ったサービスを利用できるようになった
- 「SNSオーナー」は、外部アプリケーションを受け入れることで、リスクを取らずに多様なサービスをSNS利用者に提供できるようになった
- 「アプリケーション開発者」は、自分たちが得意なアプリケーションを作り(もしくは、あらかじめ作ってあるサービスと連携させ)、多くの「SNS利用者」に対してサービスを提供して収益を上げることができるようになった
この成功により、Facebookは猛烈な勢いで、会員数とサイトのアクセスを伸ばしていき、この成長ペースは北米で首位の「MySpace」を脅かすようになりました。
次ページでは、引き続きOpenSocialが登場した背景やOpenSocialの今後の動きを解説します。
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