LTEのネットワーク動作:次世代の無線技術、LTEの仕組みが分かる(6)(1/2 ページ)
次世代無線技術のLTEの仕組みを紹介する。NTTドコモ、イー・モバイル、ソフトバンクモバイル、KDDIの来年の無線技術はどうなる?
日本でもスタート、LTEの商用サービス
日本でもいよいよLTEの商用サービスが始まります。
LTEサービス「Xi(クロッシィ)」を提供するNTTドコモの報道発表資料によれば、サービス開始当初は、受信時(下り)に最大37.5Mbps、送信時(上り)最大12.5Mbpsの高速データ通信サービスを提供(一部の屋内施設では受信時最大75Mbps、送信時最大25Mbps)。音声サービスは2011年度中に提供する予定としています。
「Xi」のサービスエリアは当初、東名阪の一部地域から開始。2011年度に全国県庁所在地級都市へ、2012年度には全国主要都市へ拡大する予定のようです。サービスエリア外でのデータ通信は、既存のFOMAネットワークを利用することになります。
ちなみに、上記の通信速度は技術規格上の最大値で、実際の通信速度を示す数値ではありません。実際の通信速度は通信環境やネットワークの混雑状況などによって低下することもあります。とはいえ、受信時最大75Mbpsの通信速度は、現行のHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)の約5倍であり、モバイルユーザーのブロードバンドアクセス需要に応えるサービスであると期待されます。
NTTドコモのほか、国内のモバイル通信事業者は2011年度〜2012年度にLTE商用サービスの提供を表明しています。「Xi」の利用動向を含め、今後、日本のLTEサービスの展開が注目されます。
LTEは、上りと下りでそれぞれ異なる周波数を利用して送受信するFDD(Frequency Division Duplex)方式のFDD-LTEと、上りと下りで同じ周波数を時分割して送受信するTDD(Time Division Duplex)方式のTD-LTEが規定されています。
日本のLTEサービスはFDD方式が利用されていますが、中国など海外ではTD-LTEへの移行を計画する事業者もあります。日本ではPHSやモバイルWiMAXでTDD方式が利用されており、TD-LTEの動向も注目されるところです。海外のLTEサービスの動向は、次回紹介します。
遅延が小さくシンプルな構成のコアネットワーク
今回はコアネットワークを含めたLTEのネットワーク動作について説明します。
第2回でも述べましたが、LTEネットワークの主な構成要素には、無線ネットワークのE-UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)とコアネットワークのEPC(Evolved Packet Core)があります。
E-UTRANは基地局装置(eNode B)で構成。そしてEPCは、ネットワーク制御を扱うコントロールプレーン(Control-Plane)のアクセスゲートウェイとして機能するMME(Mobility Management Entity)、ユーザーデータのユーザープレーン(User-plane)を扱うゲートウェイとして機能するS-GW(Serving Gateway)、外部のインターネットや企業イントラネットなどに接続するためのゲートウェイとして機能するP-GW(Packet data network Gateway)で構成されます。
LTEの特徴の1つは、3Gと異なり、無線ネットワークに基地局制御を行うRNC(Radio Network Controller)のノードを持たないことです。E-UTRANには基地局装置のみが設置され、直接コアネットワークに接続されます。このため、接続遅延、伝送遅延の短縮やシンプルなネットワーク構成が行えるという利点があります。
また、3Gではコアネットワークにおいて、パケット交換を行うSGSN(Serving GPRS Support Node)とGGSN(Gateway GPRS Support Node)で制御系とユーザーデータ系の両方の信号を扱っていました。LTEでは制御系はMME、ユーザーデータはS-GW、P-GWが扱うというように2つが独立することにより、それぞれのトラフィックに応じたシステムの拡張が可能です。
参考までに、LTEのコアネットワーク向けの装置が各通信機器ベンダから市場に投入されており、ノキア シーメンス ネットワークスでも、MME対応の「Flexi NS(Network Server)」、S-GW/P-GW対応の「Flexi NG(Network Gateway)」を提供しています。
3Gに比べてシンプルな端末状態遷移
LTEでは、端末の状態遷移も3Gに比べてシンプルになっています。
端末(UE)と基地局(E-UTRAN)との間の接続状態は、無線ネットワークを制御するRRC(Radio Resource Control)のアイドル状態(RRC idle)とRRC接続状態(RRC Connected)の2つで示されます。
また、端末とコアネットワーク(MME)との間の接続状態を示すのは、ECM(EPS Connection Management)アイドル(ECM idle)とECM接続状態(ECM Connected)の2つです。これにより、端末の状態遷移を管理する仕組みです(図2)。
端末と基地局およびコアネットワークの接続シーケンスの概略は次のようになります。
2つのタイプがあるLTEのハンドオーバー
コアネットワークを構成するMMEの役割の1つにハンドオーバー機能があります。
ハンドオーバーは、端末が通信中にあるセルから別のセルに移動しても、基地局を自動的に切り替えて通信を継続する機能です。ハンドオーバーでは、どんな端末が基地局に接続されているか、データの授受がどこまで行われたかといった端末に関する情報を、基地局同士でやりとりする必要があります。
具体的には、LTEのハンドオーバーは、端末の周辺基地局の通信品質測定情報などを基にして行われ、移動先の基地局のインターフェイス条件などにより、2種類のネットワーク制御方法が定義されています。
1つは、基地局(eNode B)同士がX2インターフェイスを使用して直接、端末の情報をやりとりする「X2ハンドオーバー」です。もう1つは、基地局間は直接情報をやりとりせず、コアネットワークとS1インターフェイスを介してハンドオーバーを行う「S1ハンドオーバー」です。
X2ハンドオーバーは基地局同士が直接端末の情報を授受するため、S1ハンドオーバーに比べ、コアネットワークの負荷を減らし、ハンドオーバーの時間を短縮可能です。ただし、基地局同士が同一のMMEに接続されている必要があります。X2インターフェイスは、前回説明したSON(Self Organizing Network)の自動設定にも利用され、ネットワークの最適化などにも役立っています(図4)。
S1ハンドオーバーは、基地局同士を接続するX2ハンドオーバーが利用できない場合や、異なるMME間でのハンドオーバーで利用されます。
ちなみに、3GではRNCもしくはコアネットワークを介してハンドオーバーの制御を行っています。
LTEの特徴であるX2ハンドオーバーにより、移動中でもパケットロスが少なくなり、スムーズにハンドオーバーが行えると期待されています。
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