気になるWindows Phoneの今後の方向性は?:カイ士伝のアプリライフ(4)
国内で1機種しか存在ぜす、未知の部分も数多いWindows Phone。Windows Phoneのコンセプトや今後についてMSの高橋忍さんに聞いた
Windows Phoneの明日はどっちだ!
iPhone、Androidに続く第3のスマートフォンOSとして日本に上陸したWindows Phone。他のOSにはない独自のコンセプトや機能を持つものの、日本での製品はまだ1機種しか存在していないこともあり未知の部分も数多い。今回はWindows Phoneのコンセプトや今後について、日本マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部UX&クライアントプラットフォーム推進部 高橋忍氏(高橋 忍のブログ UX & モバイル、全ては心でエバンジェリズム♪)に聞いた。
日本マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部UX&クライアントプラットフォーム推進部 高橋忍氏「スマートフォンアプリ選手権でアプリのネタに困っている人はWindows Phoneのアプリ、こんなの作ろうかな - “匠の国”、日本で、組込み全開!! - Site Home - MSDN Blogsをチェック!」
――People Hubは、TwitterやFacebook、LinkedInなど決められたサービスのみに対応していますが、他のソーシャルサービスがPeople Hubに対応することは可能なのでしょうか。
高橋 People Hubの具体的なプランは現在検討中ですが、現段階の技術仕様としてはワールドワイドで共通のバイナリを使っていることもあり、少なくともワールドワイドで使われているサービス、というのがWindows Phoneで対応する基準になります。
ただし、個別のSNSに対応する可能性がないわけでもありません。技術的にはサービス側が「Windows Live Messenger Connect」というAPIに対応することでWindows Phone対応を実現しています。あくまで技術的に、ではありますが、各国のSNSがMessenger Connectに対応したインターフェイスを実装することでPeople Hubで対応が可能になるという期待はあります。
――People Hubで使えるTwitterやFacebookの機能も基本的なものに限られています。
高橋 People HubがこうしたSNSに対応しているのは、SNSサービスそのものに対応したわけではなく、これらSNSが他人とのコミュニケーションの媒介としてすでにスタンダードになっているからです。People Hubのコンセプトは自分の友達や家族とのコミュニケーションを統合する場であり、電話やメールと同等のコミュニケーション手段の1つとしてTwitterやFacebookにも対応しています。
そういう点でPeople HubではFacebookやTwitterというサービスの意識を持たず、「その人が発信した情報の1つ」という位置付けで見てもらうほうが分かりやすいと思います。その人の発信した情報に返事をしたいときに、どのサービスを使っているかという媒介を意識せず行えるのがPeople Hubであって、TwitterやFacebookの機能をフルに楽しみたい場合は、TwitterやFacebookの公式アプリやサードパーティのアプリをぜひ使ってもらいたいと思います。
――コミュニケーション手段としては、TwitterのダイレクトメッセージもPeople Hubには相性が良いように感じました。
高橋 今後ユーザー様の要望次第で対応する可能性がないとは言いませんが、選択肢があまり複雑になっても使いにくくなる可能性があります。Twitter上でのコミュニケーションとしてはリプライのほうが標準的に使われていますし、Twitterでコミュニケーションしたいときにリプライとダイレクトメッセージを選択するよりも、Twitterではリプライでコミュニケーションする、というほうが分かりやすいと思います。
――Twitterの公式アプリは現在日本からダウンロードできない状況ですが、今後配信されるのでしょうか。
高橋 現状日本ではダウンロードできないのですが、日本語にも対応したWindows Phone 7.5向けの新バージョンがまさに開発中と伺っています。また、そのほかの有力なソーシャル系クライアントも日本語に対応いただける予定ですので、どちらもそれほどお待たせすることなく、近日中には利用できるようになるかと思います。
――People HubのコミュニケーションはCメールも対応していますが、現状Cメールの送信は非対応です。送信への対応は予定しているのでしょうか。
高橋 OSとしては標準的なSMSの機能をサポートしています。現在キャリア様と共同で、対応の準備を進めています。キャリアメールについては、キャリアからアナウンスがあるかと思いますのでご期待ください。
――Windows Phoneのタイルメニューは非常にシンプルですが、ユーザーによるカスタマイズは可能なのでしょうか。
高橋 現状の仕様ではタイルメニューの色は10色のデフォルトに1色だけ端末ごと色を追加できます。また、背景色は黒と白の2色のみです。今後対応が広がる可能性はありますが、現状ではホーム画面はほとんどカスタマイズする選択肢を持たない、というのがWindows Phoneのコンセプトになっています。
というのも、メトロデザインを作る上で、タイルの色を自由に変えられると結果的に文字が読みにくくなってしまう可能性があるからです。ユーザーの自己責任という考え方もありますが、われわれとしては配色を含めてOSの全体をデザインしているので、カスタマイズし過ぎることで逆に使いづらくなる可能性がある部分については、選択肢はわれわれの側で決定することにしています。
――メーカーがホーム画面を独自にカスタマイズする余地はあるのでしょうか。
高橋 ぜひWindows Phoneのメトロデザインをご利用いただきたいというのが弊社のスタンスです。そのため、OSを出荷してからデバイスを完成させるまでの期間は非常に短期間で実現できます。
なぜそうしているかといえば、あまりにソフトウェアのカスタマイズ性が高いと、端末によってOSのバージョンアップに対応できないという差が出てしまうからです。それはユーザーにとって不幸なことですし、どのデバイスも快適に動作し、対応アプリが動くようにしていくことがOSメーカーの役割だと認識しています。
そもそも、プリインストールのアプリはサードパーティ用のアプリをインストールする仕組みではないんですね。OEMメーカーが端末設定用のアプリなどをインストールするための仕組みであって、HTCやサムスンなどは自社開発の統合Hubみたいな機能を搭載しています。日本のようにサードパーティのアプリをプリインストールしているのはワールドワイドで見ると独特です。
代わりという訳ではありませんが、Windows Phoneのマーケットプレースではキャリア推奨のアプリを追加できるようになっています。Windows PhoneではAndroidのようにキャリアが個別のマーケットを作ることはできませんが、マーケットプレースにはキャリアやOEMメーカー用の枠を用意しているので、サードパーティのアプリもキャリアを通じてマーケットプレースで配信できます。
こうした制限からハードウェアの差別化が難しいという面はあるかもしれませんが、IS12Tのように防水やカラーバリエーションといったハードウェアでの差別化を図ることは可能です。また、基準はあるものの、基準以上のスペックがダメということはありません。液晶解像度などは基準が決められていますが、例えばおサイフケータイのような機能もICチップを搭載し、ドライバやアプリもOEMメーカーが対応すれば対応端末を開発可能ですし、OSの根幹をつぶすようなことがなければ機能を追加していくことは問題ありません。
――WindowsのようにOSのバージョンが上がってもアップグレードできるということでしょうか。
高橋 そうですね。アップデートはできる限り対応していきたいと思います。少なくとも小数点第1位程度のバージョンアップ程度まではきちんと責任を持って対応することで、ユーザーにもできるだけ長い期間使ってもらいたいと思っています。
例えば、Windows Phone 7.5からはジャイロセンサを搭載しましたが、これまでのOSバージョンではセンサ系が必須だったのに対し、ジャイロセンサはオプション扱いとしました。というのはOSで必須とした場合、ジャイロセンサを持たない既存のデバイスは対応できなくなってしまうからです。その代わり開発者に対しては端末がジャイロセンサを搭載しているかどうかを判断できるAPIを提供することで開発をサポートしており、マイクロソフトとしてはアップデートに対してそこまで責任を持って進めています。
――アップデートはどのくらいの頻度で行われるのでしょうか。
高橋 Windows PhoneはSkyDriveやWindows Live、Bingといったマイクロソフトのさまざまなサービスとの連携が強いので、どうしてもほかのサービスとのスケジュールに左右されてしまいます。逆にいえば他のサービスが拡張されることでWindows Phoneの機能がバージョンアップすることもあり、OSのバージョンアップはもちろんそうしたアプリごとのバージョンアップも含め、四半期に1回くらいのアップデートは期待できると思います。
――先日は地図データのアップデートが行われました。
高橋 日本の地図はビットマップベースの低解像度で、ベクトルベースの高解像度な地図はまだ日本に対応できていませんでした。日本ではWindows Phone 7.5が世界に先駆けてリリースされたため、Bing Mapの対応が追い付いていなかったのです。本来ならあの地図のアップデートももっと後だったのですが、Bing Mapのチームがスケジュールを前倒して対応してくれました。アプリのアップデートではなくサーバーサイドで地図データを変更したので、電源を再投入することで新しい地図データを取得しにいき、高解像度の地図が使えるようになっています。
――全世界でのWindows Phone 7.5リリースと同時にIS12Tのバージョンアップも行われました。
高橋 先日のはOSというよりハードウェアの部分で、端末が再起動してしまう問題に加えて、タッチスクリーンの感度調整も行われており、フリック入力のミスが減っています。
――カーブフリックは独特の操作方法ですが、入力のコツなどはあるのでしょうか。
高橋 認識は意外にアバウトなので、カーブ操作ではなく直角に曲げても認識しますし、遠いところは真っすぐに指を動かすのは難しいので、多少曲がってもまっすぐとして認識する、といった調整も行っています。また、裏技的には小さい「っ」を入力する場合、普通は「た」を上にフリックしてから左斜め上に動かしますが、実は「た」から直接左上に動かしても「っ」が入力できます。
こうした裏技のような細かい機能がいくつもあるので、こうした機能をTips的に紹介するアプリは必要だなと感じています。実は個人的にも開発していて、時期が来たらあくまで個人開発のアプリとして公開したいなと思っています。
ちなみに、Windows Phone向けに「TextTextRevolution」という文字入力の練習アプリをマイクロソフトが提供しています。これはカーブフリックを練習できるのはもちろん、ユーザーのストロークの動きを覚えて収集するという役割も持っています。ユーザーの了解を得た上でこのデータを送信し、集まったデータを基にしてバージョンアップの際にフリックの感度調整を行っているので、Windows Phoneのユーザーにはぜひ試してほしいと思います。
――現在、Windows Phone 7.5ではOffice 2003形式のファイルが編集できません。これは今後改善されるのでしょうか。
高橋 Office 2003形式のファイルが今もビジネスで利用されていることは認識していますが、現状のではWindows PhoneでOffice2003のファイル編集には対応しておらず、今後も予定はしていません。Office2003等のユーザーには互換機能パックをご利用いただき、必要なファイルは2007形式で保存して共有していただくことになります。
── 後編のゲーム編に続く
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