Windows PhoneならではのアプリがOfficeだ。実際の触り心地を見ていこう。SkyDriveとの連携や、より使いやすくなるための課題とは?
マイクロソフトのスマートフォンならではともいえるのが、Windows PhoneにおけるOfficeアプリだ。AndroidやiPhoneにもOffice文書対応アプリは存在するが、閲覧のみで編集はできない、文書の再現性が完全でなく表示が崩れるなどの課題があり、補助的な利用はできるものの完全とはいえない。
これに対しWindows PhoneのOfficeアプリは、純正アプリだけに当然のことではあるものの、再現性という言葉が不要なほど当たり前のように、Office文書の閲覧、作成、編集が可能。Office文書の利用頻度が高いユーザーには見逃せない機能の1つだろう。
利用できる文書はWord、Excel、PowerPointのほか、メモアプリとしてOneNoteにも対応。ただし、新規に作成できるのはWordとExcel、OneNoteのみ。PowerPointは基本的に閲覧がメインで、編集は「pptx」「pptm」形式であれば簡易的な編集が可能になっている。
Wordでは、フォントの大きさやフォントの色に加えて、太字や斜字体、下線といった基本的な編集が可能。文書内のテキスト検索や、範囲選択したキーワードにコメントを付けられる。
とはいえ機能は総じて非常にシンプルで、Wordファイルを新規作成するというよりも他の人から受け取ったファイルの閲覧や、PCで作成中のファイルを編集するといった使い方が適しているだろう。コメント機能もついているため、他の人の文書に適宜校正を入れて返信する、という使い方も手軽にできる。動作自体も軽快で非常に快適な操作ができる。
Office対応の中でもっとも喜ばれるのはExcelかもしれない。Windows PhoneのWord機能はPCの簡易版という印象が強いが、ExcelはWindows Phone用に機能がカスタマイズされており、タッチ操作でも扱いやすくなっている。
編集したいセルをタップすると、画面上に表示される入力ウィンドウから数値などの入力が可能。複数範囲を指定したい場合は一度セルをタップし、選択したセルからドラッグすると複数範囲を指定できる。シートの切り替えは画面下の「アウトライン」から選択が可能だ。複数範囲を選択した並び替えやフィルターも画面下部のアイコンから簡単に設定可能。範囲を指定してグラフを作成できる。
関数も充実しており、画面上部の入力ウィンドウ左にある「fx」をクリックして関数を選択できる。関数の種類は非常に豊富で、単なる合計や平均値などに留まらず「VLOOKUP」のような関数まで利用が可能だ。こうした関数を選択した場合は入力ウィンドウにテンプレートが表示されるため、該当する部分を変更していけばいい。初めて関数を使う人には難しいかもしれないが、関数を理解しているユーザーであれば、ある程度操作に慣れれば簡単に使いこなせるだろう。
オートSUM機能もタッチ操作用にカスタマイズされており、合計したい数値をタッチしただけで合計値や平均値、最大値、最小値、入力された数値の数などを一覧で表示。あとはその中から使いたい数値を選ぶだけでいい。スマートフォンでのExcel編集はとても大変そうに思えるが、タッチ操作用にカスタマイズされたWindows Phoneであれば、気軽な編集操作が可能だ。
PowerPointについては基本的に閲覧が中心で、編集できるのは前述の通り「pptx」「pptm」ファイルのみ。また、編集や追加できるのはテキストやコメントだけで、画像やアニメーションなどを設定することはできない。
とはいえ閲覧時の再現力は非常に高く、PCで設定したアニメーションもすべてWindows Phone上で再現される。基本的にはPCで作成したPowerPointの誤字脱字やレイアウト確認などがメインの利用になるが、これだけ表現力あればプロジェクターへの画面出力も欲しくなる。
ここまでWindows PhoneのOfficeアプリ性能を見てきたが、Office機能は快適な操作が可能になっている。
しかしWindows PhoneでのOffice機能の魅力は単なるアプリの性能だけではない。マイクロソフトの提供するオンラインストレージ「SkyDrive」と組み合わせることでさらに利便性がアップする。
SkyDriveは、総容量25GBまで無料で利用できるオンラインストレージ。1ファイルの容量は最大100MBに制限されるため動画などの大容量ファイルには向かないが、ExcelやWordのようなファイルであれば大量のファイルをアップロードして管理できる。
Windows PhoneのOfficeアプリはファイルの保存先として本体のほかに「SkyDrive」を選ぶことが可能になっており、Officeファイルの管理をオンラインストレージと連携できる。Officeアプリではこのほか「SharePoint」「Office 365」などのオンラインサービスとも連携が可能だ。
SkyDriveに保存したファイルは自動的にオンラインストレージへアップロード。また、PCからSkyDriveに保存したファイルもWindows Phoneへ自動的に表示され、タッチで簡単にダウンロードできる。イメージとしてはPCとの同期が強力なオンラインストレージ「Dropbox」に近い機能をWindows Phone本体で備えているという印象だ。
SkyDriveでファイルを管理しておけば、Windows Phoneでは常に最新のファイルを利用できる。また、ファイルは自動ダウンロードではなく好きなファイルを選択してダウンロードするため、本体の容量は圧迫されることはない。不要になれば本体側で「電話から削除」を選べば本体メモリから削除でき、また必要になればあらためてダウンロードすればいい。PCのアップロードもブラウザでのドラッグ&ドロップ操作に対応しているため、好きなファイルを複数選んでドラッグ&ドロップするだけと非常に簡単だ。
Windows Phoneでの動作も軽快であり、SkyDriveとの連携も便利なOffice機能であるが、最大の課題といってもよい問題がOffice2003の文書を編集できないということだ。ファイル形式が「97-2003 ブック」、つまり拡張子末尾に「x」がつかない形式のデータは閲覧できても編集が一切できない。また、パスワードを設定したファイルも現状では開くことができない。
Office文書はビジネスの場で多く利用されているファイル形式だけに、昔の環境のままのユーザーも少なからず存在する。Windows XPを使っているユーザーなら「97-2003 ブック」形式がほとんどであり、そうした環境のためにOffice 2007や2010のユーザーでも「97-2003 ブック」形式で保存しているユーザーは多いだろう。Officeが使えるスマートフォンとしての魅力もあるだけに、2003形式やパスワードへの対応はぜひとも期待したいところだ。
現状では2003形式のファイルが使えないという課題こそあれ、Windows PhoneのOffice機能は非常に強力。以前ならスマートフォン環境でのOffice利用は限られた閲覧程度であきらめざるを得なかったが、Windows Phoneであれば閲覧や編集についてもかなりの部分をスマートフォンでまかなえる。Office文書の利用頻度が高いユーザーであれば魅力的な機能であることは間違いない。Skydriveとのシームレスな連携も含め、一度体感して欲しいアプリだ。
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