ハードウェアスペック的に、初代のXBOXより優れているゲーム機としてのWindows Phone。これからのプランを高橋忍さんに聞いた
(前編:気になるWindows Phoneの今後の方向性は?)から続きます。
――Windowsのゲーム機能もさまざまなコミュニケーション機能が用意されていますが、People Hubとはコミュニケーションが独立しています。
高橋 ゲームの場合、コミュニケーションはXboxの中で独立した世界で確立されていて、People Hubのメッセージとは異なりあくまでゲームの世界の情報交換に使われています。そのためゲームに関してはすべてGames Hubの中で完結しています。
アプリも同様で、同じマーケットプレースからインストールしても、ゲームアプリはGames Hubの中にゲームとして表示されます。これもゲームはGames Hubという1つの独立した世界、というコンセプトに基づいています。
――ゲームの場合、Xbox LIVEのフレンドメッセージがリアルタイムに表示されず、新着のメッセージも読み込まなければ分かりません。
高橋 現状はそういう仕様ですね。ユーザーにとってどうしても使い勝手が悪いとなればリクエストでバージョンアップするでしょう。必ずしもPeople Hubで表示するのではなく、メッセージがあったらアラートで表示するという手段はあると思います。
ただ、現状ではまだリアルタイムでメッセージができても、リアルタイムを活用したゲームアプリがまだ提供されていません。今後ゲームアプリの数が増え、オンラインに対応したゲームが登場することでGames Hubもアップデートされ、リアルタイムなコミュニケーション機能をGames Hubとして包括的にサポートする可能性はあるでしょう。
――ゲーム機として考えた場合、Windows Phoneに求められているハードウェアスペックはどのくらいなのでしょうか。
高橋 他社ハードとは比較が難しいですが、初代のXboxよりは上といえるでしょう。初代Xboxは解像度がVGA、CPUもPentium IIIベースでしたが、例えばIS12TはディスプレイがワイドVGAでCPUのクロック数も1GHzと、初代Xboxのスペックを超えています。
――Xbox相当ということは、Xbox LIVEに対応したオンラインゲームもWindows Phoneで可能でしょうか。
高橋 どういう実装するかという問題はありますが技術的に可能です。Windows Phne同士はもちろん、Xbox本体で遊んでいるところにWindows Phoneで参加する、というゲームも期待できます。
――Windows Phone同士で、アドホック通信は可能なのでしょうか。
高橋 デバイス同士でのP2PというAPIは残念ながら実装されておらず、端末同士ではなくクラウドサービスを経由することになるため、リアルタイムというレベルでは難しいかもしれませんが、ある程度のタイムラグが許容されるようなら可能でしょう。
テレビとは画面サイズの違いなどもありますから同じ体験ができるかは分かりませんが、それもゲームのアイディア次第です。例えば戦略ゲームにWindows Phoneからは参謀として参加したり、XboxでプレイしているゲームのミニゲームをWindows Phoneでプレイし、手に入れたアイテムがXbox Liveを通じてXboxで使えるようになる、なんて連携もあったら面白いでしょう。
――任天堂のWii Uが液晶ディスプレイが付いたコントローラで同様のコンセプトを打ち出していますが、同じことはXbox 360とWindows Phoneでも実現できそうですね。
高橋 具体的にプランがあるわけではないですが、そういうアプリが出てくると楽しそうだなという期待はありますね。ゲーム関連についてはXbox LIVEのチームが日本のメジャーな会社も含めて密なコミュニケーションを取りながら進めているので、長期的に新しいアプリもどんどん登場する予定です。今月また新しいアプリも出ますので、ぜひチェックしてください。
――ゲームや有料のアプリは「試用」ができますが、試用について制限やルールはあるのでしょうか。
高橋 試用については時間制限や機能制限含めてまったくの自由です。試用を実装するかどうかもアプリ次第なのですが、Windows Phoneでは返品できないというルール上、購入した有料アプリが思ったものと違っていた、というユーザーとのトラブルもあり得るので、できるだけ機能制限を付けることを推奨しています。Windows Phoneのアプリはワールドワイドで3万近いですが、そのうちシェアウェアが8割で、そのほとんどがトライアルを設定しています。
なお、Windows Phoneではアプリの開発コードに「トライアル」というAPIコードがあり、1つの開発コードで試用版と購入版の機能を変えることができます。試用版と購入版でアプリを2つ用意して管理する必要がないため、試用版を運用するコストも軽減できます。
――返品は今後も非対応なのでしょうか。
高橋 Windows Phoneで返品の機能を実装する予定はありません。例えば電子書籍の場合、マンガのように1時間もあれば読み終えてしまう作品だと、読んですぐに返品されてしまう可能性もあります。そうした使い方を恐れて有料でも数ページしか提供していない電子書籍もあるほどです。返品がないことは、アプリやコンテンツ提供者にとってはとても安心していただける環境でもあるのです。
――アプリ開発はゲームとアプリで違いはあるのでしょうか。
高橋 基本的にはほぼ同じで、アプリを申請する際のカテゴライズとしてゲームを選ぶかどうかの違いです。ゲームカテゴリはレーティングなどの審査基準が発生しますが、開発についてはアプリとゲームに違いはありません。開発環境としてもSilverlightの他にゲーム開発ツールのXNAも使えますが、ゲームを作るからXNAと決められている訳ではありません。ゲームだけれどSilverlightで開発してもいいし、逆にグラフィック性能が高いXNAで凝ったグラフィックのアプリを作る、ということも可能です。自分のやりたいことに近いアプリを開発できるプラットフォームを選べるという点では、開発者にとって非常に柔軟な環境ですし、これまでXNAでゲームを作っていた開発者も簡単にWindows Phoneのアプリを開発できます。
――有料アプリの収益配分は。
高橋 70%が開発者で、残りの30%がマイクロソフトです。審査料というのもありますが、シェアウェアだと審査料は発生せず、フリーウェアでも100本までは掛かりません。100本を超えると1本当たり19.99ドルの審査料が発生します。このほかに開発者登録料として年間9800円が必要ですが、この金額はApp Storeと一緒ですね。
――他のスマートフォンOSと比べて、Windows Phoneはマルチタスクに対応していませんが、マルチタスクに対応しなかった理由とは。
高橋 Windows Phoneのコンセプトとして最も重要視しているのは「ユーザーの体験」です。マルチタスクのように複数のアプリを使うとバッテリーの消費も大きくなり、電池が1日持たないこともよくあります。同時にアプリを使うことで本体が不安定にもなりますし、Windows Phoneを使うユーザーの体験を第一に考えてマルチタスクには対応していません。
ただ、戻るキーを使うことで今まで開いていたアプリに戻ることは可能です。戻るを長押しした場合は直近6個のアプリが一覧で表示されますが、長押しではなく戻るを何度も押していくことで今までのアプリをたどることができるので、マルチタスクに近い使い方もできると思います。
また、マルチタスクとは異なりますが、バックグラウンドでアプリを動かすためのエージェントという機能もあります。エージェントはユーザーインターフェイスを持てない、一部のセンサが使えないなどの制約がありますが、10分に1度の頻度でバックグラウンドで動作する機能をアプリに実装することもできます。
――他のスマートフォンOSは電話機能のないモデルやタブレット端末なども存在しますが、Windows Phoneにそうした可能性はあるのでしょうか。
Windows Phoneは電話機能を使っていることを前提に標準機能を作っているため、電話がないWindows Phoneはあり得ません。通信は無線LANでいいという声もありますが、どこでも他の人とメッセージングしたい、というニーズは電話の通信がなければ実現できません。OSとしては電話の通信も含めた機能やコミュニケーションを提供するためにあって、電話機能を省いたらせっかくある機能が使えないということになってしまいますので、電話機能のないWindows Phoneというのは想定していません。
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