IPテレフォニーと音声VLAN:CCNP対策講座 SWITCH編(9)(2/2 ページ)
本連載では、シスコシステムズ(以下シスコ)が提供するシスコ技術者認定(Cisco Career Certification)から、ネットワーク技術者を認定する資格、CCNP(Cisco Certified Network Professional)のうち、2010年12月に日本語版が改訂された新試験【642-813 SWITCH】を解説します。
IP Phoneを使えるようにスイッチを設定
では、IP Phoneを接続できるようにスイッチを設定します。まずは、ポートをアクセスポートに設定しましょう。
(config-if)#switchport mode access
データ用VLANと音声用VLANの2種類のVLANを定義することになりますが、アクセスポートとして設定します。次は音声VLANの設定です。これで、IP Phoneはタグ付きのフレームを送信するようになります。また、音声VLANの設定をすると、IP Phoneはフレームにタグを付けて送信するようになります。
(config-if)#switchport voice vlan [vlan-id]
次は、データ用VLANの設定です。データ用VLANの設定をすると、PCはフレームにタグを付けずに送信するようになります。
(config-if)#switchport access vlan [vlan-id]
最後に、音声パケットを最優先させるように設定します。
(config-if)#mls qos trust cos
フレームがスイッチのポートに着信したとき、CoS(Class of Service)値を信頼するという設定です。CoS値とはQoSに関連するフィールドで、フレームの優先度を表す3ビットの値です。VLANのタグ内にあります。3ビットですので、取り得る値は0から7までになりますが、6、7は予約済みです。CoS値が大きいフレームが最優先して送信されます。優先度を識別する値を設定することをマーキングといいます。IP Phoneは自動的に音声パケットには5、制御用パケットには3をマーキングして送信します。
IP Phoneのポートで受信したデータトラフィックのCoS値を設定するには、以下のようにします。
(config-if)#switchport priority extend cos 0
スイッチからIP Phoneに対して命令を出す設定です。PCからCoS値の付いたフレームをIP Phoneで受信したらCoS値を0に設定するとCDPによって伝えています。PCが送信するフレームはネイティブVLANに流れるのでタグは付きません。タグが付いてないフレームをIP Phoneが受信すると、デフォルトで最も優先度が低いCoS値0のフレームとしてスイッチに送信します。
しかし、攻撃者がVLANタグに対応したNICで優先度の最も高いCos値5を付けてデータを送信するケースがあります。大量のデータを最優先に設定して送信し、システムダウンを引き起こさせる攻撃があるのです。このため、通常PCが送信するデータは信頼させないようにすることが一般的です。もし、CoS値の付いたフレームをIP Phoneが受信したらCoS値を0に再設定してスイッチに送信します。
音声用VLAN、データ用VLANの番号は、以下のコマンドで分かります。
show interface [interface-id] switchport
実行例は以下のようになります。
DSW1#show interfaces fa0/1 switchport Name: Fa0/1 Switchport: Enabled Administrative Mode: static access Operational Mode: static access Administrative Trunking Encapsulation: negotiate Operational Trunking Encapsulation: native Negotiation of Trunking: Off Access Mode VLAN: 100 (VLAN100) Trunking Native Mode VLAN: 1 (default) Voice VLAN: 200(VLAN200) 以下省略
フレームの優先度を示す値を設定することをマーキングといいましたが、このマーキングは通常ネットワークのエッジ(入口)で済ませます。一度マーキングした値はネットワーク全体で一貫して使用されるため、ネットワークのエッジで適切な値にマーキング設定することが推奨されています。
マーキングするポイントを信頼境界といいます。信頼境界でマーキングした値を、コア部分でそのまま信頼して使用できるようにポートを設定しておく必要があります。図3ではIP PhoneがマーキングをするのでIP Phoneが信頼境界となります。ここでマーキングした値を隣のSwitch1が受信すると、マーキング情報をそのまま信頼し、フレームを隣接するSwitch2に転送します。Switch2がフレームを受信するとマーキング情報をそのまま利用してフレームを処理します。
確認問題1
- 問題
信頼境界を作成する場所として不適切な場所を、次の中から1つ選びなさい。
a. コアスイッチ
b. クライアントのIP電話
c. アクセススイッチ
d. クライアントPC
- 正解
a
- 解説
正解はaです。信頼境界は、できるだけトラフィックの発信元に近い場所、つまりネットワークのエッジで済ませます。コアスイッチは、高速転送に専念させなければならないため、あまり多くの機能を実装しないのが普通です。
筆者紹介
グローバル ナレッジ ネットワーク ソリューション本部
齋藤理恵(さいとうりえ)
Cisco認定トレーナー。トレーナー歴は11年。マイクロソフト、サン・マイクロシステムズ、シスコシステムズなどIT業界でトレーナーとして活動。現在は、グローバル ナレッジ ネットワークで、Cisco認定トレーニングコース(CCNA、CCNP)、ネットワーク系オリジナルコースを中心に講師を担当している。グローバル ナレッジ ネットワーク講師寄稿記事一覧はこちら。
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