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Android 4.0。顔認証でロックを外してみたカイ士伝のアプリライフ(9)

スマホ/タブレット向けに2系統に分かれていたOSが統合されたAndroid 4.0。顔認証での画面ロック解除やNFCを試す

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OSが統合された「Android 4.0」

 iPhone/iPadの最新OS「iOS 5」に続き、Androidも最新OSとなる「Android 4.0」を搭載した最初のAndroidスマートフォン「GALAXY NEXUS」が登場した。Android 4.0の「お手本」となるリードデバイスであるこの端末の特徴を、スマートフォンOSの最新バージョンである2.3と比較しながらチェックしていく。

 Android 4.0最大の特徴は、なんといっても2系統に分かれていたOSの統合だろう。これまでAndroidは、スマートフォン向けのバージョン2に加え、タブレット向けに機能やUIを一新したバージョン3の2系統が存在していたが、4.0ではこの2つの系統を1つに統合、スマートフォンにもタブレットにも同じOSで対応できるようになった。

Android 4.0の標準フォーム画面
Android 4.0の標準フォーム画面

 2つの異なるバージョンのOSを統合しつつも、インターフェイスはタブレット系のバージョン3に近い。スマートフォン用のインターフェイスはメーカーによって数や配置は異なるものの、「MENU」「ホーム」「戻る」などの機能が割り当てられていたバージョン2に対し、4.0では「MENU」の代わりに「マルチタスク」が配されたほか、すべてのボタンがタッチパネルで操作するよう変更されている。

 これまでホームボタン周辺の本体下部に設けられていた「MENU」ボタンの扱いはアプリによってまちまち。Android 4.0に標準搭載されているブラウザやギャラリー、Google Talk、Androidマーケットといった機能では画面上部にMENUボタンが配されているが、Googleマップ、Gmail、メッセージといった機能は本体下部にMENUボタンがあるなど、標準搭載のアプリでもまだバラバラの状態。このあたりは今後アプリのアップデートによって変更されるだろうが、現状はOSとしての統合が完了した段階で、個々のアプリのインターフェイスまでは統一されていない状態だ。

ブラウザの右上に表示されている3つの点がMENUボタン
ブラウザの右上に表示されている3つの点がMENUボタン
GmailではMENUボタンが右下に
GmailではMENUボタンが右下に

 また、MENUキーが本体下部に存在するバージョン2対応のアプリは、Android 4.0でもインストールは可能なほか、アプリ利用時には画面の下にMENUキーが追加される。現状唯一のAndroid 4.0搭載端末であるGALAXY NEXUSは本体サイズが非常に大きいこともあり、MENUボタンが画面上部に配された4.0用アプリでは片手での操作が難しい。スマートフォンとタブレットの統合によってインターフェイスがタブレット寄りになったことで、スマートフォンとしてはやや操作しにくくなっている感を受けた。

4.0に公式対応していないTweetDeckは右下にMENUボタンが小さく表示される
4.0に公式対応していないTweetDeckは右下にMENUボタンが小さく表示される

 Android 4.0の顔認証ロック解除

 Android 4.0ではロック画面もリニューアルが図られた。Androidの代表的なロック解除方法であるパターンやPINコード、パスワードによる解除のほか、新たにスライドと顔認証ロック解除が追加された。

 顔認証ロック解除はあらかじめ自分の顔を登録しておき、インカメラを使って自分の顔を映すことでロックを解除できる仕組み。本体の電源ボタンを押してスリープ解除した後は一切キーボードを触らずにロック解除できるという点では手軽であり、何より顔だけでロックを解除できるという仕組みそのものが面白い。

顔認証ロック解除の登録画面
顔認証ロック解除の登録画面
顔認証ロック解除の場合はインカメラに自分の顔を映す
顔認証ロック解除の場合はインカメラに自分の顔を映す
顔認証ロック解除に失敗した場合はパターンやパスワードで解除
顔認証ロック解除に失敗した場合はパターンやパスワードで解除

 ただし、面白さはあるものの本体のインカメラが起動し、さらに顔認証が完了するまでは多少時間がかかるため、起動速度だけを考えればパターンやパスワードの方が圧倒的に速い。また、周囲の明るさで顔の認識度も変わってしまうため、屋内と屋外ではロック解除に成功する確率が大きく変わってくる。

 セキュリティ面で考えた場合、端末の所有者が特定されているケースであれば、その人の顔写真を使って他人が解除する、ということも可能だろう。面白い機能ではあるものの、実用度という点では今一つというのが正直なところだ。例えば、一見してパターン解除の画面ながらも実は顔認識でも解除できる、というような機能や、パターン解除に顔認識を組み合わせてセキュリティを高めるなど、もう少し掘り下げた使い方に期待したい。

 スライド解除は、これまでAndroidのロック解除を「なし」に設定した場合の機能と同等。4.0では、このスライド解除に加え、電源ボタンでスリープを解除すると、すぐにAndroidの画面が表示される「なし」を追加したことで、バージョン2の「なし」が「スライド」という名称に改められている。

 このスライド解除では、本体のロック解除と同時にカメラを起動する機能が搭載され、画面中央から右にスライドするとロック解除、左にスライドするとカメラを起動できる。ただし、このカメラ起動はスライド解除のみの対応で、パターンや顔認証では利用できない。画面をタッチ操作するだけでロック解除できてしまうスライドはセキュリティ的に実用度が低く、せっかくの機能もパスワードやパターンを設定した途端に使えなくなるのが惜しい。

スライドロック解除時にカメラを起動することもできる
スライドロック解除時にカメラを起動することもできる

 ブログやTwitter、Facebookといったサービスを活用するユーザーにとって待望の機能ともいえるのがスクリーンショット機能。本体のボタン操作だけで手軽にスクリーンショットを保存できるiPhoneに対し、AndroidはSDKをインストールしたPCとUSBで接続しなければスクリーンショットが保存できなかった。4.0ではカメラボタンとボリュームボタンの下を同時に押すことでスクリーンショットが本体のみで保存できる。

 スクリーンショットは本体ロック中やカメラの撮影中なども自由に保存が可能で、スクリーンショットの保存はステータスバーの通知からも確認できる。後述するカメラの編集機能を組み合わせるとより便利に使えそうだ。

 Android 4.0では、カメラ機能も大幅に強化された。撮影面では「スポーツ」「夜景」といった撮影モードが追加されたほか、静止画のパノラマ撮影機能も搭載。一度シャッターを押し、カメラを横に移動していくことで手軽にパノラマ画像を撮影できる。

標準カメラに搭載された撮影モード
標準カメラに搭載された撮影モード
複数の画像をつなぎ合わせて作成するパノラマ撮影
複数の画像をつなぎ合わせて作成するパノラマ撮影

 手を離したタイミングでシャッターを切るカメラ撮影

 カメラの撮影方法も変更され、シャッターボタンをタッチすると自動でフォーカスを合わせるバージョン2のカメラと異なり、長押しすることでピントを合わせ、手を離したタイミングでシャッターを切る仕組みに変更された。

 操作方法としてはデジタルカメラに近いものの、ソフトボタンではデジタルカメラの物理ボタンのようにピントを合わせてからさらに押し込む、という操作ができず、タッチした画面を離すタイミングでむしろピントが狂ってしまうことが多い。カメラの操作は各メーカー独自の実装を行うため今後すべてのAndroidがこの操作になるとは限らないものの、標準搭載されたカメラの操作感が落ちているというのは気になるところだ。

 カメラ機能の強化は撮影だけではなく、撮影後の画像編集機能も加わった。画像の回転やトリミングに加え、明るさの調整やフィルタ、赤目処理や肌色調整、シャープなど、画像編集ソフト並みの機能を搭載。最近はinstagramのように画像に手を入れて投稿するサービスも人気なだけに、こうした機能を標準搭載して画像で遊べるのは面白い。

画像はMENUから回転やトリミングが可能
画像はMENUから回転やトリミングが可能
フィルタ機能
フィルタ機能

 アプリの管理方法、ブラウザ、マルチアカウント対応

 ホーム画面ではアプリの管理方法も改良が加えられた。Androidではこれまでもアプリをフォルダで管理することが可能だったが、これまでは先にフォルダを作成してからアプリをドラッグして保存する必要があった。これに対して4.0ではアプリとアプリを重ね合わせることでフォルダが作成されるという、iPhoneに近い操作に変更された。

アプリを重ね合わせることでフォルダを作成
アプリを重ね合わせることでフォルダを作成

 もともとフォルダ機能を持っていなかったiPhoneがOSのバージョンアップによってAndroid同様にフォルダ管理が可能になり、今度はAndroidがOSバージョンアップの際にiPhoneと同様の操作方法を採用するという流れは、スマートフォンOSの市場動向を見るうえでも非常に面白い。

 なお、これはAndroid 4.0の標準機能というわけではなく、あくまでAndroid 4.0が標準搭載しているランチャーの機能だ。そのためホーム画面アプリなどをインストールしてホーム画面そのものを入れ替えた場合、同様のフォルダ管理機能は利用できない。

 Webブラウザも画面を一新。これまでも複数のサイトを同時に開くタブブラウザ機能は搭載していたが、Android 4.0ではタブブラウザの専用ボタンが搭載され、現在開いているサイトをサムネイルで確認できるなどよりタブブラウザとしての機能が強化された。ブックマーク機能もバージョン3で搭載しているアカウントとの同期機能を採用し、本体に保存したブックマークとは別に、Googleアカウントにひも付いたブックマークを端末間で共有できるようになった。

同時に開いているWebサイトをサムネイルで表示するタブブラウザ機能
同時に開いているWebサイトをサムネイルで表示するタブブラウザ機能

 一方、操作面では前述の通り、「MENUとタブが画面上部にあるため、片手デ操作しにくい」ことに加え、ブックマークを表示するには、いったんタブブラウザを選択してからブックマークを選ぶという必要があり、これまでブックマークを選べばよいだけだったインターフェイスからすると、操作の手数が増えている。本体下部のボタンもMENUからマルチタスクに変更されたように、ブラウザも「現在マルチに開いているブラウザを確認する」タブブラウザの機能が前面に押し出されるなど、4.0ではマルチタスクをメインとするインターフェイスのようだ。

 Android 4.0ではGoogleアカウントのマルチアカウント対応も特徴の1つ。これまでもバージョン2ではGmailやカレンダー、マップなどで複数のGoogleアカウントを使い分けることができ、バージョン3ではGoogle Talkもマルチアカウントに対応。これらを統合したAndroid 4.0でもグーグルの標準サービスはほぼすべて、アカウント切り替えに対応している。

Google Talkもマルチアカウントをサポート。登録アカウントを切り替えられる
Google Talkもマルチアカウントをサポート。登録アカウントを切り替えられる

 なお、SNSサービスの「Google+」は、アプリ利用開始時にアカウントを選択できるものの、一度選択したアカウント以外を利用するには一度ログアウトするしかない。とはいえGoogle+はリリースされて間もないこともあり、全体的にマルチアカウント対応が進んでいることを考えると今後はGoogle+もマルチアカウントに対応していくのだろう。

 アカウント関連の機能では電話帳に相当する「ユーザー」機能もソーシャル対応を強化。これまでもAndroidではTwitterやSkype、Facebookのコンタクトリストを電話帳に登録できたが、4.0ではこれら複数のデータを1つのデータとして統合することができるようになった。この機能はWindows PhoneのPeople Hub機能に近いが、People Hubのようにソーシャルサービスの更新情報をまとめて閲覧するような機能はなく、それぞれのサービスで投稿された最新の情報が表示される程度にとどまっている。

コンタクト情報を統合できる
コンタクト情報を統合できる

 NFCを使って端末同士をかざすだけでデータを送受信

 Android端末同士でデータをやりとりする方法として、NFCを使って端末同士をかざすだけでデータを送受信できる「Androidビーム」、無線LAN経由でデータを共有する「Wi-Fiダイレクト」といった機能が追加された。日本では端末同士のデータ共有として赤外線通信が一般的だが、Android 4.0が普及すれば連絡先のやりとりなども方法が変わりそうだ。

NFCや無線LANを利用して端末間でのデータ共有が可能に
NFCや無線LANを利用して端末間でのデータ共有が可能に

 NFC搭載ということで「おサイフケータイ」の機能を期待する向きもあるが、「おサイフケータイ」として利用するにはハードウェア側の対応だけでなく、サービス提供事業者がNFC対応のアプリやサービスを提供する必要がある。いまだに国内はFeliCaを採用した「おサイフケータイ」が主流であり、「AndroidのNFC」を搭載した端末自体が少ないことを考えると、当面のところ「AndroidのNFC」の出番は「おサイフケータイ」よりも、こうしたデータのやりとりが中心になりそうだ。

 NFCでは、端末同士でのデータ送受信だけでなく、NFCタグに記述された情報を読み取るリーダーとしても利用することができる。NFCタグにURLを記入しておき、Androidで読み取って、そのサイトへアクセスするというQRコード的な使い方も可能になっており、NFCが普及することで日本特有の赤外線通信とQRコードが、このNFCに集約される可能性もあるだろう。

 バージョンと対応端末が異なる2つのOSを統合することを目的として開発され、世に登場したAndroid 4.0。意欲的な機能も搭載されている一方で、インターフェイスとしてはタブレット中心であり、操作ボタンが画面上部に配されるなど両手操作が前提となっている。

 現状のシェアで考えると、端末の種別ではタブレットよりもスマートフォンが圧倒的に多い。また、日本では電車通勤で利用する人も多く、操作ボタンが画面上部に配された現状のインターフェイスは以前のバージョン2よりも使いにくさを感じてしまう。統合による一時的な影響もあるだろうが、今後のバージョンアップでは、もう少しスマートフォンでの操作性向上を期待したいと感じた。

 また、搭載された機能もNFCやカメラの編集機能など面白いものもあるのだが、内容としてはアプリの機能拡充に近く、OSそのものとしての機能向上は、これまでのバージョンアップに比べると少なさを感じる。

 すでにタブレットとスマートフォンのOSを共通化しているiOSは、最新バージョンのiOS 5ではAndroidに似た機能も多いものの、通知センタやiMessage、Twitterの標準サポート、位置情報と連携したリマインダーなど新たな機能を多く搭載してきた。これに比べるとAndroid 4.0は、タブレット用のバージョン3をベースにして2つのOSを統合した段階であり、統合による細かな調整や大幅な機能拡張は今後の課題として残りそうだ。

著者プロフィール

甲斐 祐樹

甲斐 祐樹:電機メーカー営業でシステム営業に従事したのち、Webニュースメディアに記者として配属。ネットワーク関連やガジェット、Webサービスなどの記事を主に担当する。2009年にAMNに入社、ブログマーケティング関連の仕事を担当する。個人ではブログ「カイ士伝」を運営、自分視点でのWebサービスやガジェットに関する話題を取り扱う。「これは世界が変わる!」という感動を与えるガジェットやサービスが大好き



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