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充実した教育の代わりに権限を―ベンチャーキャリア論「ベンチャーキャリアサミット」レポート(1/2 ページ)

ベンチャー企業に興味のあるエンジニア、クリエイター向けのイベント「ベンチャーキャリアサミット」が開催された。CEO&CTOパネルディスカッション模様をリポートする。

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ベンチャー企業のCEO&CTOが集結

 Webサービスやスマートフォン開発に携わるエンジニアのニーズは、いまなお衰えを見せていない。これらのサービスを運営するベンチャー企業で働く場合、企業は開発環境をどのように整えているのか。また、そこで働くエンジニアはどのようなキャリアを築けるのか――。

 インテリジェンスは4月22日、ベンチャー企業におけるエンジニア、クリエイターのキャリアを考えるイベント「ベンチャーキャリアサミット」を主催した。

 クラリティ・エンターテインメント、コミュニティファクトリー、MONSTER DIVE、エニグモ、エムワープ、ハイベロシティ、今成長中のベンチャー企業6社のCEO、CTOが集まり、「CEO side」「CTO side」それぞれの立場から、ベンチャー企業で働く魅力を語った。

 登壇者は、以下の6人。開発者コミュニティ java-jaなどで活躍する野口おおすけ氏がモデレータを務めた。

CEO side

  • クラリティ・エンターテインメント 代表取締役 吉岡美保氏
  • コミュニティファクトリー 代表取締役 松本龍祐氏
  • MONSTER DIVE代表取締役 岡島将人氏

CTO side

  • エニグモ サービスエンジニアリング本部 川嶋一矢氏
  • エムワープ CTO 野村亮之氏
  • ハイベロシティ取締役CTO 和泉裕臣氏

CEOパネル:ベンチャー企業でキャリアを築くということ

CEOパネルメンバー。左から、クラリティ・エンターテインメント 吉岡美保氏、コミュニティファクトリー 松本龍祐氏、MONSTER DIVE 岡島将人氏
CEOパネルメンバー。左から、クラリティ・エンターテインメント 吉岡美保氏、コミュニティファクトリー 松本龍祐氏、MONSTER DIVE 岡島将人氏

 パネルディスカッション「CEO side:ベンチャー企業のキャリア構築論」では3人のCEOが、「エンジニア・クリエイターがベンチャー企業でキャリアを積む意義」というテーマで話し合った。

――まずはメインサービスと、設立してからどれぐらいかを教えてください。

クラリティ・エンターテインメント 吉岡氏 「mixiアプリ『たのしい☆みん顔! 生活』とmobage対応『おいでよ☆トモダチ王国』の開発・運営を手掛けています。今年で3期目と、できたてのベンチャー企業です」

コミュニティファクトリー 松本氏 「2011年秋にAndroidアプリ『DECOPIC』をリリースしました。プリクラのような写真が撮れる女性ユーザー向けのカメラアプリで、世界中で550万ダウンロードを記録しました。事業の中心は、スマートフォンと海外です。今年で7年目に入りました。設立当初は受託開発を事業の中心としていましたが、今は事業の転換期。昨年から事業の中心がスマートフォンに移っています」

MONSTER DIVE 岡島氏 「職人とオタクを集めようと会社を始めました。職人とオタクを併せるとモンスターになる。モンスターが日本を救います。事業の中心はWeb上のプロモーション。企画から開発までを一貫して手掛けます。設立から4年目で、チームを作りつつ事業をがんばっている段階」

「現場で手を動かし続けたかった」から起業した

――皆さんは今、ベンチャー企業のCEOという立場にいるわけですが、ご自身のキャリアは大手とベンチャー、どちらからスタートしましたか? また、なぜベンチャーを起業する道を選んだのでしょうか。

クラリティ・エンターテインメント 吉岡氏 「もともと私は音大でピアノを専攻していました。卒業後は、大手レコード会社に就職しました。配属されたのは新事業を立ち上げる部署。そこで“Webメディアを作りたい”と思うようになりました。数回の転職を経て、会社内で開発した携帯電話向けコンテンツサービスを譲り受け、仲間と共に4名で起業。起業したのは『生きている間になにか成し遂げたい』という気持ちからです」

コミュニティファクトリー 松本氏 「人に必要とされる人になりたかった、という悩みがありました。自分の付加価値は、『知識×経験×実績の掛け算』と考えました。自分自身でやった方が知識がたまり、小さなプロジェクトでもリーダーとして取り組めば経験がつく。自分で会社を立ち上げれば、会社の実績=自分の実績となる。スピードを上げて自分の付加価値を上げるには、会社を作った方がいいという結論に至りました。私は就職活動をしなかったので、路頭に迷っちゃうという恐怖心がありました。なので、“僕は仕事ができる”という実績を作らないと、という一心で起業したようなものです」

MONSTER DIVE 岡島氏 「学生時代から大手建築会社のCG開発をフリーランスとして受注していました。大学卒業後は半年間、ITベンチャーに勤務。目立ちたがりでしたね。ベンチャーは20代でも目立てますから。以前に勤務していたITベンチャーでは、取締役として事業統括をしていたのですが、私はすごく現場が好きで、手を動かしたかったので、起業しました。今はCEOですが、プロジェクトの頭とお尻はやります。最後のタイミングで、最初に打ち出したコンセプトが実現されているかチェックしたいからです。最後の5%のこだわりで、すべて決まる。現場は迷惑かもしれないが、そこだけは特権とさせてもらっています」

ベンチャー勤務で得られるもの──権限、成長スピード、成果配分

――ベンチャー企業への就職や起業で、得られるものと失うものは何でしょうか。

クラリティ・エンターテインメント 吉岡氏

  • 得るもの:「ベンチャー勤務のリターンは大きいです。少ない人数でもうかれば自分のボーナスの成果報酬分は大きくなります。お金は大事」
  • 失うもの:「大企業での昇進プロセスでは勤続年数が大事。そのコースに乗っている人にとっては、ベンチャーに転職するとキャリアパスを失う場合があります。女性の場合、仕事に没頭しているとうっかり婚期を逃すかもしれないですが(笑)」

コミュニティファクトリー 松本氏

  • 得るもの:「主体的に動ける自由度。成長するスピード。例えば、Androidアプリ『DECOPIC』は、入社半年のエンジニアが1本目の作品として開発したアプリです」
  • 失うもの:「充実した教育制度やじっくり学ぶ時間。リソースが少ないので、誰かが懇切丁寧に教えてくれるわけではありません。誰も待ってくれないです。ただし、最近は大企業でもそうだと思いますが」

MONSTER DIVE 岡島氏

  • 得るもの:「大企業に勤務するよりプロジェクトを回す権限。1人1人の影響がとにかく大きいです」
  • 失うもの:「経営危機に陥っても助けてくれないことでしょうか。大企業への転職はなかなか難しいですね。集中して働く時間の引き替えに、プライベートの時間は削られます」

ルールに縛られず、やりたいことができる環境づくりを目指す

――ベンチャー企業として、「これから目指す姿」、ビジョンを教えてください。

クラリティ・エンターテインメント 吉岡氏 「受託開発は、今もこれからもやりません。『あのゲーム面白かったよね』と話題になるような作品を作りたいですね。社員が、楽しみながら仕事ができる組織であり続けたい」

コミュニティファクトリー 松本氏 「1億人が使うサービス、アプリを作りたい。シリコンバレーへ引っ越したばかりのFacebookオフィスのような、常にパーティーみたいな雰囲気の会社にしたい」

MONSTER DIVE 岡島氏 「時価総額がいくら、という話はしません。会社のゴールは、何も決めていないです。スタッフが辞めずに楽しんでやっていける会社であり続けたい。それぞれのメンバーにやりたいことがあって、何かやるときはうちでやりたい、と言ってくれるような企業を目指しています」


 3人のベンチャー経営者は、経歴や興味はバラバラでも、1つの共通点があるように見受けられた。それは、多くのルールに縛られる大企業のやり方との「差異」を強調していたことだ。ベンチャー企業ならではの自由さ、裁量の大きさを生かせる人材を求めている様子が伝わってきた。

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