freee創業者インタビュー――走り出したら「何でもやる」、それまでは「目の前のことを頑張る」:普通の開発者のためのリーンスタートアップ手順書(3)(2/2 ページ)
目的は「起業」でも「会計ソフトを作ること」でもなかった。かなえたいことを最適な方法で実現させる、そのためにfreeeを立ち上げた。
freeeという組織
同じくfreeeの早初期からインターンとして働き、現在はPRを担当する前村菜緒氏もこの仕事にやりがいを感じているという。「自分がやったことが、社会に貢献していることが目に見える。それがやりがい」(前村氏)。前村氏は現在、プロダクトマネージャーも行っており「社内の誰よりもサービスを知っている」(横路氏)という。
freeeにも肩書きや役職は存在するが、ベンチャー企業らしく役割はどんどん変わっていく。「役職は単なるロールで、上下関係じゃないと考えている。人が増えると固定的な組織が必要になると思うが、今はいろいろと試しながらやろう、というカルチャーがある」(横路氏)。freeeには現在、エンジニアが25人ほど在籍しており、最近はUXディレクターやデータサイエンティストなど、徐々に専門職のメンバーが増えてきているという。
2014年にはオフィスも移転し、規模が大きくなってきたが、メンバーは「何でもやる」という気概を持つ人ばかりだという。「社長がよくいうのですが『空港で一晩、一緒に過ごせる』ようなメンバーが集まっている。ずっと一緒にいても建設的な議論ができ、フランクに話せる人の集まり」(横路氏)。創業当初は、全てのレイヤーを今いるメンバ―で分担する必要がある。必要な技術を持つ人がいなければ、誰かができるようにならなければいけない。「あなたが成長できなければ、会社がダメになる。そこにコミットできる人たち」が集まっている、と横路氏は語る。
freeeでは、エンジニアがユーザーからの問い合わせを直接受ける「カスタマーサポートの日」を設けている。横路氏もそのローテーションに組み込まれており、取材日はちょうどその「当番」の日だったという。
取締役でも他のエンジニアと同じように役割を分担するのは、freeeにとって当たり前のことであるし、何よりユーザーの声はエンジニアにとってありがたいものだともいう。「お客さまの反応がダイレクトに伝わってくるのは魅力的」(横路氏)。
チャンスを生かす準備はできているか?
「freee」の利用者は、以前は若い起業家たちや20代が中心だったが、今では40代以上の中小企業の経営者たちも増えている。今後は、中小企業のバックオフィスの自動化を目指しつつ「5年間で100万ユーザーを獲得、その後は海外進出も視野に入れたい」と横路氏は述べる。
規模が拡大すれば、社員も増やす必要がある。エンジニアの採用はどのように行っているのだろうか。
今までは、社員の紹介だったり、さまざまな手段で知り合った人々の中から、じっくり話し合って会社のビジョンに共感してもらえた人を仲間に加えてきたという。ベンチャーで働くことに不安を感じているエンジニアが多いという認識はある。そこで、2週間ほど一緒に働いてみるお試し期間を設けることもある。「今ではハッカソンがいろいろなところで開催されているので、スタートアップの理解や認知も進んでいると思う」と、前村氏も付け加える。
スタートアップがスモールスタートする方法がたくさん出てきて、エンジニアが一歩踏み出しやすくなった。環境は整いつつある。ではエンジニア自身は何をすれば良いのか。横路氏は「目の前のことを頑張る」ことだという。
「大きな組織にいても、目の前のことを頑張る。僕が佐々木と出会ったのも、ソニーで勉強会やツール作りをして自分をアピールしていたところに、同期入社の同僚が紹介してくれたから。今いる環境で最善を尽くすと、誰かが見てくれていたりする。ひたむきにやれば、機会がやってくる。チャンスがふとやってきたとき、すぐに乗れるように」(横路氏)。
横路氏は学生時代から、自分の価値を最大化し、何らかの形で社会に貢献したい、という気持ちを持っていた。その思いと行動の「一貫性」が大事だと述べる。「ITで世の中を良くしたいと思いつつ、大企業にいるからできないなんていうのはダメ。現状がおかしいと思ったとしても、そこに対して自分に何ができるのか、積み重ねて考えるのがあるべき姿。freeeには、そういうメンバーが集まっています」(横路氏)
特集の次回は、いかにコストを掛けずにリーンスタートアップを実践していけばいいか?
@ITで展開中の特集「普通の開発者のためのリーンスタートアップ手順書」では、次回からは、「自分でプログラムを書ける人が、いかにコストを掛けずにリーンスタートアップを実践していけばいいか?」という疑問に答えるシリーズを、とあるスタートアップの開発者に紹介していただく。
起業スタンスや資金調達などにはフォーカスせず、コストを掛けずにプロダクトを作っていく上で、導入すべきツールをどのように使うかということを重点的に、紹介する。この紹介によって、まだ起業前のプログラマーが、ちょっと「スタートアップしてみようかな」という気持ちになることを目指すので、ご期待いただきたい。
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