リーンスタートアップを実践するための参考記事116選まとめ:普通の開発者のためのリーンスタートアップ手順書(1)
これからリーンスタートアップを始めたい開発者・技術者向けの@IT記事一覧をリリースしました。今後インタビューやコラムなどを順次追加します。
2008年に米国の起業家エリック・リース氏が提唱した「リーンスタートアップ」。「スタートアップ」という名前からベンチャーや起業家のものと思われがちですが、技術者出身のリース氏が、ビジネス面の考え方を取り入れた開発手法/マネジメント手法として提唱した概念であり、その適用範囲はWebサービスを提供するベンチャーや起業家にとどまらず、エンタープライズ分野の中堅・大企業における新規社内プロジェクトにまで及びます。
特に、ビジネスパーソンやプランナーとは異なり、自身の手によって新しいプロダクトを生み出すことができる開発者・技術者が実践するには打ってつけの手法といえます。アップルやグーグル、フェイスブックをはじめ、技術者が起業をして成功を収めた有名な事例が数多くあるのは周知の通りです。
日本でもビジネスのスピードが加速する中で、クラウドコンピューティングやアジャイルの浸透が進んでいる他、クラウドファンディングやクラウドソーシング、コワーキングスペースなど、リーンスタートアップを実践するための環境が整いつつあります。しかし一方で、普通の開発者・技術者がリーンスタートアップを実践する上では、具体的に「何をどうすればいいのか」を示す指針があまり存在しないのではないでしょうか。
そこで@IT特集「普通の開発者のためのリーンスタートアップ手順書」では、これからリーンスタートアップを始めたい開発者・技術者に向けて、起業や事業拡大に向けたステップが分かる情報を、識者による書き下ろし記事、プレーヤーへのインタビュー記事などを通じて、具体的に紹介。公開した記事は順次、以下のバナーのリンク先にある特集トップページに蓄積していきます。
ただ@IT編集部では、これまでもリーンスタートアップ関連の記事を多数公開してきました。そこで特集トップページには、既存のリーンスタートアップ関連記事、全116本を起業・運営・拡大といったフェーズに整理してインデクシングしました。
とはいえ、このまとめ方はあくまでも一つのパターンであり、全ての人がこの順番通りにできるものでもないでしょうし、すでに達成できている項目もあるかもしれません。そこで特集第1回となる今回は、特集トップページに整理した116本の記事の読みどころを紹介。ぜひ気になるところ、知りたいところから読んでみてはいかがでしょうか(なお、以下の各小見出しをクリックすると、特集トップページの該当箇所に遷移します)。
基礎知識/会計知識/社内ベンチャー
まずは、基礎知識を身に付けるということで、連載「プログラマのためのリーンスタートアップ入門」をご参考に。リーンスタートアップとは何か、プログラマーがリーンスタートアップを行うにはどうすればいいのかについて、ソニックガーデンの倉貫義人氏に執筆していただいています。
この連載の第1回で倉貫氏が述べている通り、「スタートアップとは会社を作ることではありません」。「新しい製品やサービスを作る組織」としており、実際、倉貫氏はTISという大手SIerの中で、まず社内ベンチャーを立ち上げ、その後に独立しています。その経緯は記事「『人月・受託の限界を超えよ』SIerでSaaSを立ち上げる」で語られています。
また、連載「プログラマのためのリーンスタートアップ入門」では、リーンスタートアップを実践するための方法論として「アジャイル開発とリーンスタートアップの違い」について触れ、昨今話題の「アジャイル開発」に近い「DevOps」という考え方に「マーケティング」というビジネス面の考え方を加えたものが「リーンスタートアップ」とされています。
記事「DeNAに見る、社内ベンチャー型の開発チームとは」でも紹介している通り、DeNAでも少人数チームによるアジャイルな開発に加えて、ビジネス面も考慮した社内ベンチャー型の開発チームが「自分たちのプロジェクト」という独立精神を持って開発を行っているようです。
とはいえ、社内で自分がやりたいことを実現できない場合は、会社から独立して開業しなければならないでしょう。それには、会計知識が必須ということで、人気連載「お茶でも飲みながら会計入門」の中から「エンジニアのスタートアップで、会計知識はどれだけ必要か?」「アプリ開発ビジネスで独立するなら、知っておきたい『所得税計算』」「アプリ開発ビジネスで独立したら、『消費税』をどう納めるのか?」の3記事をピックアップしています。
独立・開業
独立して開業しなければならなくなったとしたら、何をどうすればいいのでしょうか。ここでは、退職の仕方も含めて4つの連載「退職手続き【パーフェクト】マニュアル」「開業【パーフェクト】マニュアル(連載中)」「ITエンジニア独立入門」「ITエンジニア、その独立の軌跡」をピックアップしましたので、ご参考に。
ビジネスアイデア/プレゼン
そもそも、社内ベンチャーを立ち上げたり、独立・開業したり、といったことは方法論にすぎません。自分がやりたいこと、ビジネスとして実現したいアイデア、検証したい仮説、開発して世に広めたいサービス/アプリがあってこそのリーンスタートアップです。
ここでは、アイデアを創出するためのヒントになる記事や「特許」についての記事、そして創出したアイデアを人や企業、社内に伝えるための手法などを紹介する記事として、連載「アナウンサー×2年目社員 目指せ! ライトニングトークの星(連載中)」の第1回「エンジニアにも必要なプレゼンテーションスキル」や、「1分30秒の動画で“魅せる”テクニック」などを紹介しています。
資金調達/クラウドファンディング・ピッチイベント
ビジネスアイデアを広めるための手法を使って行うことの1つに資金調達があります。まだマネタイズができていないスタートアップでは、資金を調達できないと事業を存続できません。
スタートアップを支援する企業や団体、投資家に呼び掛けるとともに、最近では、「クラウドファンディング」という複数の個人から資金を得る方法があります。
また、複数のスタートアップが参加して、そのアイデアをプレゼンテーションして支援者を募る「ピッチイベント」というオフラインのイベントが、まだ少数ながら日本でも開催されています。
ワークスタイル/オフィス環境・コワーキングスペース
資金を調達したら、次にするべきこととして、何があるでしょうか。リーンスタートアップはチームで行うものです。一人で気ままに仕事をするフリーランスと違い、共に働くチームスタッフをマネジメントするためには、オフィス環境を整え働き方/ワークスタイルを定める必要があるでしょう。事業が成功した際にチームに何を還元するのかを含めて、ここを整えることが事業拡大の基盤となります。
最近では、少人数のスタートアップが複数で間借りする「コワーキングスペース」が増えてきています。資金が少ないスタートアップには助かる制度ではないでしょうか。
人材調達/クラウドソーシング
調達した資金で行うべきこととしてもう1つ「人材調達」もあります。すでに懇意の仲間複数人で起業した場合も、事業を拡大する上で必要になってくることです。
最近では、不特定多数の人に業務を委託する「クラウドソーシング」という雇用形態があり、Webサービスを通じて遠方にいる人材とチームを組むことも可能です。
リーン開発・アジャイル/クラウド
環境・人材が整ってきたら、いよいよ開発業務です。ここでは、リーン開発・アジャイル・DevOpsなどリーンスタートアップを実践するための手法やツールを学びましょう。また昨今は、クラウドの普及により、資金が少なくてもいきなり大規模なWebサービスを開発・リリース・運用できるようになりました。
グロースハック/マーケティング/UX/プロモーション/SEO
冒頭でも紹介しましたが、リーンスタートアップではただプロダクトやサービスを開発するだけではなく、ビジネス上のゴールを達成し事業を存続させるために、「マーケティング」についても詳しくなければなりません。プロダクトやサービスを広めるためにプロモーションを行い、ユーザーの反応をデータとして蓄え解析し、その結果を次の事業戦略や、より良いプロダクト/サービスにするUX構築・開発に生かすためです。
最近では、マーケティングのためのさまざまな手法にITエンジニアとしての技術力を生かす「グロースハッカー」という職種も注目を集めています。「マーケティングとエンジニアリングを分けないで考える」グロースハックはリーンスタートアップと共通する考え方といえるのではないでしょうか。
マネタイズ/成長戦略・ピボット
スタートアップでリリースしたプロダクト/サービスは、ユーザーが無料で使えるものが多くなることでしょう。現在インターネットで公開されているサービスは無料のものが多く、ユーザーも「無料が当たり前」と思っている方が大半なのではないでしょうか。そもそも無料でないと、ユーザーが使ってくれないということあるでしょう。
そうなると、外部から得た資金だけではいつまでも事業を存続できず、いかに収益化(マネタイズ)していくかを考えなければなりません。最近のスタートアップでは、Webサービスやアプリに広告を出したり、EC事業や人材事業、受託開発に事業を広げたりといった戦略が多く見られます。他の企業に買収されるという道もあります。スタートアップを始めた当初思い描いていたビジネスモデルではうまくいかず、事業存続のために路線を変更せざる得ないこともあることでしょう。
リーンスタートアップの世界では、最初のアイデアがうまく行かなかったときに、路線を変更することを「ピボット」と呼び、むしろ「どれだけ素早く、数多くピボットが行えるかが、スタートアップ成功の秘訣の一つ」とまでいわれています。リーンスタートアップはあくまでも「仮説の検証を素早く行う」ためのプロセスです。一つのアイデアで失敗しても、それで全てが終わるわけではありません。失敗したときに得るデータやノウハウを基に、継続的改善に生かせればいいのです。
コラム/事例
その他、リーンスタートアップに役立つ記事として、連載「プログラマ社長のコラム『エンジニア、起業のススメ』(連載中)」や、有識者のコラム、学生時代に起業した起業家や、起業した事例などを紹介していますので、ご参考に。
リーンスタートアップに役立つ記事を順次追加
今後、特集「普通の開発者のためのリーンスタートアップ手順書」では、リーンスタートアップに役立つ記事として、インタビューやコラムなどを順次追加していきますので、ぜひご期待ください。本特集が日本の普通の開発者がリーンスタートアップを始めるための指針になれば幸いです。
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