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SAPを射程に入れたセールスフォース、5年後の姿は?事業分野はまだ広がるのか

セールスフォースは5年後にどうなっているのか。同社会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏は、Dreamforce 2014で、2020年に向けた事業計画の概要を紹介した。一方、社長兼副会長のキース・ブロック氏は、「SAPを追い越すことが目標」と語った。

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 「セールスフォースは5年後にどうなっているのか」。Dreamforce 2014の最後のセッションでこう聞かれた同社会長兼CEOのマーク・ベニオフ(Mark Benioff)氏は、「実は2020年に向けた事業計画を立てている」と答え、内容の一部を紹介した。

 「今回のカンファレンスでは、セールス、マーケティング、サービス、コミュニティ、アナリティクス、アプリを柱とし、これらを『Customer Success Platform』として統合的に推進していくというテーマを打ち出している。これこそが当社の5年後に向けたビジョンだ」(ベニオフ氏)。


ベニオフ氏は、今年のDreamforceのテーマが、そのまま同社の5カ年計画だという

 やはりセールスフォースは当面、今年のDreamforceで発表したビジネスアナリティクスを最後とし、これ以上の新たな分野への進出は考えていないようだ。整理していえば、同社の基本サービスはセールス、マーケティング、サービス、コミュニティであり、アナリティクスおよびアプリは、これら4つのサービスと絡み合いながら、ビッグデータ/BI、モバイル、Internet of Things(IoT)といった新たな動きに対し、一般企業が現実的、迅速に取り組むためのツールとして機能する側面を持つ。一方、「Customer Success Platform」というフレーズは新鮮な言葉使いとはいえないが、ユーザー企業における、事業活動の広い意味での基盤として、自社の製品群を提供していきたいという意思表明だ。究極的には、ユーザー企業におけるビジネスモデル変革も含まれる。

 ベニオフ氏は、「(上記の)製品カテゴリはそれぞれ、産業のあり方の変化や、技術のシフトと関連付けられる」といい、注目するテーマの例として、データサイエンス、マーケティング・オートメーション、モビリティを挙げた。

 「データサイエンスは非常に重要で、いま急速な変化が起こっている。5年後には、例えば健康診断で使われる超音波測定器にデータサイエンス機能が組み込まれ、スキャナで取得したばかりのデータを、その場で他のデータと比較分析し、診断を支援するようになるかもしれない。このように、あらゆる産業はデータサイエンスによって変化する。Relate IQという企業を買収したのはこのためだ。来年のDreamforceでは、今年よりもはるかに大きなトピックになるだろう。買収の理由は、2人の創業者が考えていることが、私たちが考えたいと思っていることだからだ。当社は、データサイエンスに積極的に力を入れていく」(ベニオフ氏)。

 マーケティング・オートメーションでは、ExactTargetの買収によって手にした「Journey Builder」の役割が大きくなるという。Journey Builderとは、マーケティング活動を「旅」に見立て、電子メール送信など複数のキャンペーンを、対象の反応に基づいて段階的に自動適用できるツールだ。Journey Builderはマーケティングだけでなく、全ての製品に適用できなければならない、とベニオフ氏はいう。セールスやサービスのプロセスをさらに自動化できる余地があるというのだ。

 モビリティに関しては、Dreamforce 2014でSalesforce1 Lightningを発表、モバイル端末用のアプリケーションを比較的簡単につくれるようにした。だが、まだまだだという。「ウェアラブルなどの機器がつながっていく世界を想定すると、やるべきことはたくさんある」(ベニオフ氏)。

 セールスフォース・ドットコムは、産業別の取り組みも、今後5年間でさらに強化していく。ベニオフ氏によると、同社は11月に開催する「Cloudforce Tour – New York」で、業界別のソリューションを発表するという。業界別の取り組みは、それぞれの業界における、データサイエンスやInternet of Things(IoT)をはじめとするIT技術の今後の活用を、支援していく役割も担う。

どのようにSAPを追い越すのか

 一方、米セールスフォース・ドットコムの社長兼副会長、キース・ブロック(Keith Block)氏はDreamforce 2014で、「最大のソフトウェア専業ベンダーであるSAPを追い越すことが、現在の当社の目標だ。SAPの年間売上は200億ドル、当社は50億ドルだが、十分実現できると考えている」と話した。


2013年までオラクルの北米事業を率いていたキース・ブロック氏

 ブロック氏は、これを実現する成長促進要因として、製品におけるイノベーション、業界別の取り組み、パートナーとのエコシステム、新たなタイプのリセラーの獲得を含めた国際展開、の4点を挙げた。

 産業別の取り組みは、ベニオフ氏も強調しているが、コンサルティング事業の責任者を務めた経験を持つブロック氏自身が、特に力を入れている活動だ。「どんな顧客も、何らかの産業に属している。(セールスフォースは)各産業の言葉で働き掛けていかなければならない」。

 しかし、SAPにしろ、ブロック氏が2013年までの26年間在籍していたオラクルにしろ、産業別の取り組みを進めてきた。結局SAPと同じことをしようというのか。ブロック氏は、SAPのような社内導入型のレガシーな「Systems of Record」(バックオフィスシステム)を使う顧客は、セールスフォースのようなクラウド型の「Systems of Engagement」(フロントシステム)企業に期待を向け始めている、と主張する。

 ブロック氏が従来型のITベンダーの違いとして強調するのは、特にパートナーとの関係における、透明性、一貫性、予見可能性だ。従来型のベンダーは、ある分野がビジネスになると判断するやいなや、その分野に参入するなどして、エコシステムを破壊する傾向があるとする。セールスフォースは、まずパートナーが安心して投資できるような環境を提供。さらに、大手ITコンサルティング企業に加え、規模の大小を問わず独立系ソフトウェアベンダー(ISV)との協業を積極的に進める。こうしたISVに、特定産業に特化したアプリケーションをセールスフォースのプラットフォーム上で提供してもらい、これを生かして主要業界を深耕していくのだという。

 各産業には特有の事業形態があり、将来に向けては特有のビジネスモデル変革への道筋が考えられる。セールスフォースは、この道筋を支援していける稀有な存在になることを目指しているという。

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