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業務部門がAWSを使いこなすにはクラウド活用セミナーリポート(2/3 ページ)

Amazon Web Services(AWS)などのクラウドサービスを、部署・部門レベルで本格的に活用するにはどうしたらいいか。2014年10月9日に開催された「AWSをビジネスの武器に――業務部門のための、クラウドサービス徹底活用セミナー」から、活用のヒントを探る。

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 田中氏は「小さく始めて、成果を出して、そこで予算を確保して、実行していく。それがあっという間にできる。AWSを導入して3年。AWS導入前は、スケジュール管理もクラウドではなく、紙の手帳だった。そうした状況からでも、3年あればごっそりと変わることができる。それがクラウドの力だ」と強調した。

機械学習で、すしの売れ行きをリアルタイムに把握

 システム構成としては、AWS上にDWH、データマート、ETLなどを移行させ、各店舗をDirect ConnectでAWSにつないで、データを集約するかたちだ。BIツールは、部門や用途ごとに使い分けている。店舗向けには「MotionBoard」、経営企画やマーケティング向けには「QlikView」や「Tableau」といった具合だ。

 「MotionBoardはサーバーごとのライセンスなのでユーザー数が多い場合に使いやすい。QlikViewはデータの絞り込み分析が得意。Tableauは表現力が豊かで、データの遷移を見るのに適している」とのこと。このほか、溜めたデータをRedShiftを使って処理することや、Treasure Dataを使ってデータを使いやすく加工することも行っている。

 分析結果の業務への生かし方については、新商品開発の例を挙げて説明した。スシローでは、2週間に1回程度の頻度で、新商品の試験販売などの販促を実施しているが、かつては、売れた個数だけから商品を投入するかどうかを判断するケースがあった。だが、クラウドを使って素早いデータ分析ができるようになってからは、店別、日別、売上構成比など、単に売れたというだけでなく、どういう売れ方をしたかを調べることができるようになった。例えば、試験販売品がレーンから売れたのか、注文によって売れたのか、誰に売れたのかといったことが把握した上で、新商品として販売するかどうかを決めるわけだ。

 ポイントは、こうした売れ方の分析が1日でできてしまうことだという。「午前中にユーザー部門にヒアリングして、要件を決める。午後にベンダーと一緒にデータを取得して、分析する。それをレポートにまとめ、その日のうちに、ユーザー部門を交えてみんなで確認しあうことができる」と田中氏。

 センサーデータのリアルタイム処理にも力を入れている。Amazon Kinesisをいち早く導入し、レーンへの流し方によって商品の売れ行きがどう変えるのかまで把握しようとしている。「今は、需要予測については統計データから構築したモデルを使っているが、今後は、機械学習をとり入れ、予測モデリングのような取り組みも進めたい」とのこと。また、モバイルアプリのログ分析も非常にやりやすいといい、現在、「どういうロケーションの人がどのくらいの待ち時間だったら、どの店舗を選ぶかといったことを分析しようとしている」とした。

 最後に、田中氏は「これだけのことができる環境がツールとして用意されているのは大きい。まずはやってみる。それが、うまくいきそうなら、実力あるベンダーと組んで大きく育てていくのがポイントだ」と締めくくった。

業務部門と情シス部門の溝をどう乗り越えるか

 続いて登壇したのは、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の江口智氏。江口氏は「業務部門とシステム部門、それぞれのクラウドへの期待と現実」と題し、クラウドへの取り組み方と注意点を解説した。

 江口氏はまず、クラウドサービスの登場で、従来のSIによるサービスとは利用形態が変わってきたと指摘し、クラウドに取り組むうえでの課題を次のように説明した。


CTCの江口智氏

 「これまでのSIサービスは、情報システム部門に提供されたシステムを業務部門が利用するという体制だった。だが、クラウドの登場で、業務部門が開発ベンダーと直接取引できるようになった。そのせいで、業務部門のクラウドへの期待と、それを行うシステム部門の間にギャップが生じてきた」(江口氏)

 例えば、業務部門は「スモールスタートでまずやってみたい」と意気込むが、システム部門は「安全・安心に提供できなければ責任を持てない」と導入をためらうといったことだ。このギャップを埋めるためには「最終的な議論のテーマとして、どのようにクラウドとつき合っていくかを話し合うこと。ベストな解決策は、情報システム部門がクラウドを正式なインフラ基盤として採用することだ」と江口氏。

 もっとも、これらを企業全体で取り組むには、かなりの時間がかかる。クラウドを利用するかどうかは、新しい考え方を持つ覚悟が求められる。導入におけるガイドラインやコンプライアンスの更新も必要だ。さらに、クラウド特有の技術を習得したり、エンジニアを育成したりといった時間と手間もかかる。実際、CTCの顧客事例でもこれらが障害となってクラウド導入がうまく進まないケースが多いという。

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