感情を表す5つの「エ」〜声の表現力を鍛えよう:アナウンサー×2年目社員 目指せ! ライトニングトークの星(5)
表現力豊かに話すと説得力が加わります。ライトニングトークに必要な「聴衆を魅了する話し方」を身に付けましょう ※オリジナル動画付き
皆さま、こんにちは。キャリアヴォイスの山崎美和です。
本連載では、ヴォイストレーニングからライトニングトークデビューまでを、若手のビジネスパーソンと共に学んでいきます。文章だけでなく、ポイントとなる動画も掲載しますので、併せて見ていただくとより深く理解できるでしょう。
前回は「滑舌が悪い」と困っている方の役に立つ、問題点の把握方法と筋肉トレーニングを紹介しました。今回は「声の表現力」について一緒に考えてみましょう。
表現力とは何か?
連載第2回「声を変えると表現力が変わる」で、「声は正直で、感情や状況が無意識に相手に伝わってしまう」ことを話しました。
声の表現力は、プレゼンテーションはもちろん、他者とのコミュニケーションにおいても重要な要素です。「感情や状況が変われば声も変わる」ことを意識して、表現力アップのトレーニングをしましょう。
そもそも「表現力」とは何でしょうか? 辞書で調べると、下記のように書かれています。
表現力(ひょうげんりょく)
感情や思考などを伝達可能な形式に表す能力。特に、より効果的・印象的なものとしてそれを伝える能力(実用日本語表現辞典)
表現力とは感じていることや考えていることを他の人にも分かりやすく伝える力のこと、ということは、声の表現力とは「感情や思考を、声に乗せて他者に伝える能力」と言えます。では、効果的・印象的に声の表現力を磨くには、どうすれば良いのでしょうか?
「良い声」は5種類ある
まずは、声による感情の変化に気付くことから始めます。「3つの表現力トレーニング」にチャレンジしてみましょう。
トレーニング1:5つの「エ」
人と話しているとき、相手の話に反応して思わず「エ」と声が出てしまうことはないですか? その「エ」という言葉、感情によっていろいろな「エ」となるのではないでしょうか。それぞれの感情を「エ」の一声で表現してみましょう。
- 相手の話している内容が理解できないときの「エ?」(確認)
- 楽しみにしていた約束をドタキャンされたときの「エ↓」(落胆)
- 突然の出来事にびっくりしてしまったときの「エ!」(驚き)
- 自分とは異なる意見に反論したいときの「エ〜」(反論)
- 誕生日などのうれしいサプライズを受けたときの「エ↑」(喜び)
いかがですか? 自分の声の変化を確認できましたか?
トレーニング2:5つの「良い声」
5つの良い声とは、次のようなものです。
- 力強い声
- 通る声
- 明るい声
- 響く声
- 優しい声
動画でも見てみましょう。
私の声の変化に驚かれたかと思いますが、実は皆さんも、日常生活の中で無意識に声を使い分けているのです。
例えば、
- サッカーや野球などのスポーツ観戦時、どんな声で応援していますか?
- 楽しいときやうれしいとき、テンションが上がっていつもより高めの声になっていませんか?
- 小さな子どもや犬や猫などのペットに語りかけるとき、思わず笑顔になっていませんか?
具体的な例を挙げて考えてみましょう。お店での接客用語「いらっしゃいませ」です。お店の種類によって、いろいろな発声の仕方がありますね。
- 新鮮な鮮魚が売りの居酒屋の「いらっしゃいませ」(力強い声)
- 幅広い年齢層が集う百貨店の「いらっしゃいませ」(通る声)
- ファストフードや洋服販売員の「いらっしゃいませ」(明るい声)
- ホテルのラウンジなど高級店の「いらっしゃいませ」(響く声)
- エステ・リラクゼーションサロンの「いらっしゃいませ」(優しい声)
お店の種類や迎えるお客さまをイメージすると、雰囲気がガラッと変わりますよね。
5つの声で「ありがとう」も試してください。その際、2人組になって互いにどの声で「ありがとう」を表現したのか当てっこすると、表現力のスキルチェックになりますよ。
トレーニング3:5つの「話し方」
感情や状況だけでなく5つの話し方を心掛けると、さらに表現力がアップします。
- ボディランゲージ(身体言語) 身振り、手振り、顔の表情などで相手に意思を伝える
- イントネーション(抑揚) 音声や文章などで、調子を上げたり下げたりする
- プロミネンス(強調) 最も重要な言葉や際立てるポイントを強調する
- チェンジオブペース(緩急) 一本調子にならないよう、話すスピードやペースを変える
- ポーズ(間) 間を恐れずに、テンポとリズムの効果で間を楽しむ
5つの話し方を実践するトレーニングとして、一分間落語に挑戦してみましょう。
まんじゅうこわい
長屋の若い衆が集まって、自分が怖いものの話を始めた。それぞれに「ムカデが怖い」とか、「ヤモリが怖い」とか告白するが、辰だけは怖いものがないと突っぱねる。「蛇はどうだ」「鼠はどうだ」と聞くが、みんな好きだと言う。「それでも何かあるだろう」と問い詰めると、「実はまんじゅうが怖い」と告白した。
「まんじゅうの話をしたら気分が悪くなった」と寝込んでしまった。普段から生意気な奴だから懲らしめてやろうと、みんなで金を出し合ってまんじゅうをたくさん買ってきて枕元に置いた。「そばが届いたから食わねえか」と起こしてから、部屋の中の様子をうかがっていると「怖いよう怖いよう」という声が聞こえる。みんなほくそ笑んで次々に穴からのぞくと「そばまんじゅうだ怖いよ、葛まんじゅうも怖いよ」などと言いながらパクパクとまんじゅうを食べている。
「おめえ、本当は何が怖いんだい」「今は、濃いお茶が怖い」
いかがでしょうか? 5つの話し方を意識的に取り入れることで、落語家さんのような表現力豊かなものになったのではないでしょうか?
最後に、表現力アップの最大のコツをお教えしましょう。それは、恥ずかしいという気持ちから、自らを解放することです。「声のチカラ」を信じて、表現力トレーニングを楽しんでくださいね。
筆者プロフィール
執筆・プレゼントレーニング 山崎美和
キャリアヴォイス代表 フリーアナウンサー、キャリアカウンセラー
フリーアナウンサーとして18年間マスコミの仕事に携わった後、キャリアカウンセリングに関する資格を取得。大学や行政機関、社会人を対象としてキャリアカウンセリング(6000人以上)やキャリア講演、ヴォイストレーニング、プレゼンテーション、就職支援講座の講師を務める。2014年春、キャリアヴォイスを提唱。参加者のニーズにマッチしたヴォイストレーニングを開催している。
キャリアヴォイスFacebookページ
所有資格
2級キャリア・コンサルティング技能士(国家資格)/CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)/産業カウンセラー/メンタルヘルスマネジメント検定ラインケアーコース
監修 赤井 誠
MKTインターナショナル代表取締役 キャリアカウンセラー
日本ヒューレット・パッカードで当時最下位だったLinuxビジネスを担当し、国内トップの規模にまで成長させ、さらにはHPグローバルでも1位を達成し、伝説のプロジェクトマネージャーと呼ばれる。2011年にMKTインターナショナルを起業。マーケティング支援、事業開発、人材開発を事業の柱として活躍。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.