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「富士通、社内システムを全面的にOpenStackへ移行」の本当の衝撃責任者にインタビュー(2/3 ページ)

富士通が2015年2月に発表した、社内システムの包括的なOpenStackベース基盤への移行は、驚きをもって迎えられた。これについて、同社のIT戦略本部長と、統合商品戦略本部商品戦略企画室長にインタビュー取材したところ、これは発表の内容以上に「シリアスな」OpenStack導入事例だということが分かってきた。

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 機能のサービス化ができるなら、富士通社内のアプリケーション間だけでなく、富士通のアプリケーションと顧客のアプリケーションとの間でも、これらの機能を共通に利用できることになる。同社が社内システムのOpenStackへの移行とクラウドサービスの提供を並行して進めるのには、こうした背景がある。

 また、「これをきっかけに、社内における業務アプリケーションの構築・運用ノウハウや知見を、積極的に社外へ提供し、そのために人を育成するというサイクルを回していける」と、纐纈氏はいう。言い方を変えれば、立場や経緯こそ異なれ、米アマゾンが自社のために構築したアプリケーションやミドルウエアサービスを基に、それ自体をビジネスとして、他社に提供するようになったのと同様なことに挑戦できる。

 クラウドサービス化すれば、これまで導入のハードルが高かった機能についても、富士通の社内向けに提供しやすくなり、同時に顧客に活用してもらえる可能性が高まる。

 「認証に関して言えば、入退室管理やゲート入場など、業務システム以外のものも、クラウド化していきたい。帳票サーバーについても、基幹業務だけから出る帳票だけではなく、オフィスにおける複合機やスキャナーで取得したデータを自動的に保存するといった機能が考えられる。また、バッチ処理については、Hadoopによる並列処理で、処理時間を短くする仕組みをつくっていく」(纐纈氏)

 富士通は、社内の全システムを、クラウド的な仕組みに再編していくという。つまり、例えば3階層アプリケーションなら、Webサーバー、アプリケーションサーバー、データベースのそれぞれで、集約していくことになる。

 例えば、富士通の社内システムのデータベースは、これまでシステム単位で構築されてきた。しかし、それではコストが掛かり過ぎる。データベースエンジンごとにまとめ、これを社内外にサービスとして提供する。さらに、データベースエンジンにかかわらず、インフラプラットフォームの機能として、複数データセンターへ自動的にリアルタイムの複製がとられるようにしたい、という。

 データベースのリアルタイムでの複製などを、データベース側の機能に任せず、プラットフォーム側で提供するのはなぜか。

 「こうした機能をデータベースエンジンに頼ると、エンジンごとに対応をしていかなければならない。プラットフォームで吸収すればアプリケーションを作る方もそれを意識しないで済む」(纐纈氏)

OpenStackに移行しない業務システムはない

 すでに述べたように、富士通は社内の全業務システムを、5年以内にOpenStackへ移行する。基本的には3年以内を目指し、更改したばかりのシステム、およびアプリケーションのアーキテクチャ的にいって難しいものについても、5年以内の移行を図るという。

 あらためて確認したが、この移行計画に例外はない。物理サーバーは残らないという。同時にOSもLinuxとWindows Serverに集約化する。メインフレームおよびSolaris上の業務システムは、5年後には完全に消え去ることになる。

 「メインフレームベースのシステムは減少しており、現在では5つ程度になっている。20年くらい稼働しており、老朽化が激しいので、いずれにしてもリフレッシュの必要があった」(纐纈氏)

 パイロット的な移行は2015年2月に始まっており、IT予算管理システムと、IT機器の資産管理システム、規模でいえば300画面程度のものが対象になっているという。

 こうした包括的な取り組みにより、富士通は「社内システムの総所有コスト(TCO) を5年間で350億円削減する」と発表している。これは、今後5年間のIT運用を、現状のままで続けた場合と比較して、年間運用費を約30%削減でき、これが5年間で350億円の削減につながるという意味なのだという。

それにしても、なぜOpenStackなのか

 「これからはクラウド化が必須」という認識は理解できるが、それにしてもなぜ、OpenStackなのか。その理由を杜若氏は次のように説明する。

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