Windows 10、Drone、Bridge、Office 365 API、MSのいろんな「本気」をリアルに感じた2日間――学生リポーター隊が見た「de:code 2015」:ITエンジニアの未来ラボ(5)(2/2 ページ)
日本マイクロソフトが5月26、27日に開催したテクノロジカンファレンス「de:code 2015」に、「未来ラボ学生リポーター隊」の3人が参加した。彼らに基調講演の感想や「特に印象に残ったセッション」について聞いてみた。
「ドローン」の現状からスマートデバイスとビッグデータに思いを馳せる
鈴木さんが挙げたのは、今何かと話題の「ドローン」をテーマとして取り上げた「話題のDrone(ドローン)と新スマートデバイスが青空を臨む」と題したセッションだった。
「最初は、タイトルのイメージから、割と客寄せ的にドローンを扱い、内容は『マイクロソフトの技術とデバイスでドローンを操作』みたいな内容になるのではないかと思っていたんですが、受講してみたところ、現在のIT業界でバズワード的に使われているセンサーやクラウド、ビッグデータといったキーワードが、ドローンに関心が集まる理由になっているのではないかという分析も入った深いセッションでした。会場内で実際にドローンを飛ばして、かなり面白かったです」(鈴木さん)
このセッションでは、ドローンに装着されたカメラやセンサー類などで取得できるようになった新たな「データ」を、ビジネスマンやエンジニアはどのように活用していくかを考えるべきフェーズに入っているのではないかとの見解が述べられたという。
その中で一つのアイデアとして挙げられたのは、ドローンをあらゆる場所で飛ばして、そこから得られた地形や建造物のデータを基に、地図データの3次元化を試みてはどうだろうというものだ。セッションでは、3次元データ化された仮想空間上の「秋葉原」の中で、ドローンのシミュレーション飛行を行うデモも行われたという。こうした、バーチャル空間上でのシミュレーション飛行によって、不測の事態によるドローン自体の損壊や飛行時の騒音問題、落下による人への危害といったリスクを軽減しつつ、新たなビジネスの可能性を模索できるのではないかとした。
鈴木さんは、自らも複数のドローンを自律制御するシステムを作っていたという。その経験から「ドローンそのものの機能も急速に進化しているし、そこに搭載されたセンサーだからこそ取れるデータもあると思います。大規模災害などではドローンによる現地の情報収集が有効になるケースも出てきています。また、私はラグビーをやっているのですが、試合中のフィールドの様子を上空からドローンで撮影して、その映像をコーチトレーニングのために生かすといったことも行われ始めています。このセッションに参加して、私自身も、いろんな分野でドローンを活用するためのアイデアが浮かんできました」とした。
今回のde:codeでは、基調講演だけではなく、技術セッションの中にも「IoT」という言葉を含むものが複数見受けられた。IoTを考える際に重要なのは、デバイスが取得する「データ」を、クラウド上でどのように処理し、ユーザーにとってメリットがある形で提示できるかという点だ。高橋さんはこのセッションを通じて、「ドローン」というデバイスもIoTの一環として捉えることで、新たな活用法を見いだせるという手応えを感じたようだ。
「がんばればできることをやりきるMSの凄み」を感じる「Bridge」
高橋さんが興味深かったセッションとして挙げたのは、「Windows 10 for Phoneの全て」だ。セッションのタイトルでは「Windows 10 for Phone」となっているが、その後、スマートフォン向けのWindows 10は「Windows 10 Mobile」になることが発表されている。
このセッションでは、基調講演でも掲げられた「Windows 10を10億のデバイスに」インストールするという目標を達成するためのキーファクターの一つとなる「Windows Platform Bridge Toolkit」(以下、Bridge)についても紹介された。Bridgeは、AndroidやiOS向けのアプリを、できる限り少ない工数でユニバーサルWindowsアプリへとポーティングするためのツールであり、Android向けが「Project Astoria」、iOS向けが「Project Islandwood」の名称で開発が進められている。
「Javaで書かれたAndroidアプリを、Bridgeを利用しユニバーサルWindowsアプリにビルドするデモがあったのですが、スゴイと思ったのは、Javaのソースコードそのものは一切触らずに、AndroidアプリのバイナリをWindows用に変換して、Windows Storeに配信するところまでできてしまえる点ですね。必要な部分は、全てOS側で吸収してしまっているようでした。技術的に、すごくがんばればできることだろうというのは分かるのですが、それを最後までやりきってしまっているのは、さすがマイクロソフトだと感じました」(高橋さん)
これまで、アプリのマルチデバイス対応を考えた場合、それぞれのデバイス、OSをターゲットに作り分ける作業が少なからず必要で、それが開発者にとっては大きなハードルになっていた。Bridgeが完成し、機能が向上していくことで、少なくともAndroidやiOSから、Windowsへアプリを展開するハードルは大きく下がることになる。これは、開発者にとっても、アプリビジネスを展開する企業にとっても、そしてもちろんマイクロソフトにとっても朗報となるはずだ。
「Bridgeリリース初期の段階では、各プラットフォームの全ての機能が変換されないという制限が出てくる可能性もありますが、AndroidやiOSを丸ごと飲み込む形で抽象化のレベルを上げていこうとしているマイクロソフトの本気は、十分に感じることができました。想像ですが、もしも今後、ユニバーサルWindowsアプリからiOS、Androidアプリへのポーティングまでできるようになれば、Windowsは最強のプラットフォームになり得るかもしれません。今のマイクロソフトであれば、そこまでのことをやってくれるのではないかと期待をしてしまいます」(高橋さん)
12億人のユーザーに向けてアプリを展開できる「Office 365 API」の可能性
山本さんも、高橋さんと同様「Windows 10 Mobile」のセッションが印象に残ったという。加えて興味深かったセッションは、「ここまでできる! Office 365 APIを活用したアプリ開発 〜Office 365内のデータ活用〜」だとした。山本さんは、de:code開催前にも、「普段私たちが何気なく使っているMicrosoft Office(以下、Office)を使って、開発者にどのようなことができるのか聞いてみたい」と話していた。
「セッションでは、Officeのユーザーが世界で12億人いて、モバイルアプリに関しても1億人がすでに利用を始めているという話に驚きました。つまり、Office 365のデータを利用した開発には大きなビジネスチャンスがあるということだそうです」(山本さん)
このセッションでは、Office 365 APIを通じて取得できるデータの内容や、それを利用してすでにサービスを行っている事例などが披露されたそうだ。
「ジョルダンが提供しているExcelに組み込んで使える『乗換案内』アプリや、Mashup Awardにも参加している『パノラマ新聞』などが紹介されていました。パノラマ新聞は、Exchange Online上のメールボックスに届いたデータを新聞記事のようにレイアウトしてiOSデバイスで見られるサービスです。Officeを利用してこんなことができるのかと感心しました」(山本さん)
現場で感じたマイクロソフトの「本気」
リポーター隊の3人に、de:code全体の印象を聞くと、特に「クロスプラットフォームに対して、ポーズだけでなく、本気で取り組んでいることを強く感じた」と話してくれた。
「以前のマイクロソフトは、クロスプラットフォームに取り組んでいるとは言っていましたが、実際にはやはりWindowsが中心で、それ以外のOSやプラットフォームに対しては消極的にしか関わってこなかったような印象がありました。CEO(サトヤ・ナデラ氏)がBuildで『I love Linux!』のTシャツを着たというのはネタ要素が強いとは思いますが(笑)、実際にde:codeに参加してみて、クロスプラットフォームへの意識が大きく変わっているというのは本当だと感じました」(高橋さん)
「de:codeは、日本マイクロソフト独自のイベントということですが、そこで示された今後のマイクロソフトの方向性は、日本のお客さん向けのポーズではなく、マイクロソフトという企業そのものが目指しているところと同じであり、それが全社でちゃんと共有できているのだろうなと思える内容でした」(鈴木さん)
大学の授業を縫うようにして、2日間の「de:code」を楽しんだ彼らは、その内容からそれぞれに刺激を受けたようだ。そこから芽吹いたアイデアや情熱が新たな実を結び、その実がさらに多くの人々へ刺激を与えることを期待したい。
関連特集:ITエンジニアの未来ラボ
IT投資が増加していくとされる2020年に向け、技術の革新は進みこれまでにない多様な技術が開発現場で当たり前のように使われることが予想される。過去を振り返ると、スマートフォンやクラウドの出現により、ここ5、6年の間で多様な技術習得を迫られた開発現場も少なくないはずだ。では次の時代に向けてITエンジニアはどうあるべきなのか。本特集では日本のITエンジニアが現在抱える課題や技術への思いを読者調査を通じて浮き彫りにし、ITエンジニアは未来に向けてどのような道を歩むべきか、キャッチアップするべき技術の未来とはどのようなものかを研究する。
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