プログラムの「盗用」は阻止できるか?:「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(19)(1/2 ページ)
東京高等裁判所 IT専門委員として数々のIT訴訟に携わってきた細川義洋氏が、IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。今回は、プログラムを「パクられた」ゲームソフトメーカーが起こした裁判を解説する。果たしてプログラムに著作権は認められたのか――?
IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。前回はソフトウエアの設計書が著作物として認められるための条件について解説した。
今回も引き続き著作権について説明する。テーマは「プログラムの著作権」だ。
前回より解説しているソフトウエアの著作権問題。前回は、ソフトウエア開発において作成される設計書が著作物として認められるためには、そこに「創作性」や「表現上の工夫」が必要であることを述べた。
今回は「プログラムの著作権」について考えてみたい。最初に取り上げるのは、昭和57年に出された古い判決だが、プログラムの著作権について、おそらく裁判所が初めて考え方を示したものであり、その意味で一つの原則と言ってもいい判例である。
プログラムにも著作権が認められる。ただし「原則」として
東京地方裁判所 昭和57年12月6日判決より抜粋して要約
ある大手ゲームソフトメーカー(以下 原告)が、作成したゲームソフト(コンパイル後の機械語)をテレビゲーム機内蔵のROMに格納して販売していたが、あるゲーム会社(以下 原告)が、このROMを取り出し、別のゲーム機に組み込んで販売した。
原告は、この行為がプログラムの著作権の侵害に当たると訴えを起こしたが、被告は、プログラムは著作物ではなく、著作権侵害には当たらないと反論した。
人の作ったソフトウエアを、勝手に自分のマシンに組み込んで販売するなど、著作権以前の問題ではないかと考える読者も多いだろう。しかし昭和50年代は、コンピューターの価値はハードウエアにしか認められず、ソフトウエアはその付け足し程度にしか思われていなかった時代だった。このように、ある意味ソフトウエアを軽視するような風潮が、当時はあったことも事実である。そうした時代にあって、ソフトウエアの価値と、その権利を争ったこの事件は、裁判になること自体が画期的であり、裁判所の判断が、コンピューター業界(今でいうIT業界)から、大変に注目されていたようだ。
そんな中、裁判所が示した判断は、以下のようなものだった。
関連記事
- 個性的ならOK?――著作権法で守られるソフトウエアの条件
東京高等裁判所 IT専門委員として数々のIT訴訟に携わってきた細川義洋氏が、IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。今回から数回にわたって、ソフトウエアの著作権について解説する - 5分で分かる著作権〜まずは基本を押さえよう
著作権法は、コンテンツやプログラムの作成者のみならず、利用者にとっても知らないでは済まされない法律です。本稿で基本的な知識を身に付けましょう - APIへの著作権適用に反対する意見書、科学者が連名で提出
米OracleがJava APIに関する著作権をGoogleに侵害されたと訴えている裁判の控訴審で、32人の科学者が連名で5月30日、一審判決を支持してAPIに対する著作権適用の主張を退けるよう求める意見書を米連邦高裁に提出した - 訴訟が増えている!? OSSライセンス違反
この連載では、企業がオープンソースソフトウェアとうまく付き合い、豊かにしていくために最低限必要なライセンス上の知識を説明します - グリーvs.DeNAの釣りゲー訴訟の争点をまとめてみた――「似ている/いない」の判断基準
元ITコンサルタントの弁護士が、「法律」という観点から、IT業界で起こるさまざまな事件について解説します - ソフトウエア特許の保護期間20年は長過ぎ?
OSDN(Open Source Development Network)ジャパンは10月6日、プライベートカンファレンス「Open Source Way 2005」を開催した - 米司法省とFBI、MEGAUPLOADを著作権侵害容疑で遮断 関係者を逮捕
米司法省(DOJ)と米連邦捜査局(FBI)は1月19日(現地時間)、香港のオンラインストレージサービスMEGAUPLOADの関係者7人と企業2社を、世界での大規模なオンライン著作権侵害などの疑いで起訴したと発表した
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.