会社、辞めてもいいの?――「仕事がつらい」の本質の見極め方:仕事が「つまんない」ままでいいの?(9)(2/3 ページ)
あなたは「会社を辞めたい」と思ったことがありますか? 仕事の不満や悩みを解消するヒントをお届けする本連載。今回のテーマは「転職で問題解決できるか」です。勢いに任せて退職する前に「問題の本質」を見極めると、モヤモヤした頭の中が整理され、解決の糸口が見えてきます。
「問題の本質」に迫る
やりたいことがあいまいで、はっきりした転職動機がない場合、無理に転職しても失敗に終わってしまう危険があります。転職動機が「○○したい」ではなく、「○○が嫌だ」である場合は、ネガティブな気持ちのまま転職して、前向きではない動機に心苦しさを感じることもあるでしょう。
そこで、「苦しい状況からどのように脱出するか」を考える前に、「問題の本質」に迫ってみましょう。先ほどの転職したいSEの悩みを、もう少しシンプルにして、客観的に眺めてみます。
一つ目の悩みは「クライアントに言いたいことが言えない」
二つ目の悩みは「提案を受け入れてもらえない」
三つ目の悩みは「プログラマーとの関係が良くない」
これらをひと言でまとめると、「SEの仕事の問題」というよりも、「コミュニケーションの問題」と言えます。実際、相談者は「システムの設計や提案内容を考えるなど、他の仕事は好きだ」と言っています。
このように、私たちが「問題だ」と思っているさまざまな「現象」の背景には、共通した「問題の本質」がある場合がよくあります。「ひと言で言えば、これはコミュニケーションの問題だ」と気が付けば、問題をシンプルに捉えて頭の中が整理できます。
一方、「問題の本質」に気付かぬまま、「現象面」だけに目を向けていると、「クライアントが悪い」「プログラマーが悪い」のように、それぞれが別々の問題であるかのように感じられ、身の回りが問題だらけと錯覚してしまいがちです。その結果、仕事全体を楽しくないと感じるのです。
また、「問題の本質」を見いださないまま次の職場に転職しても、同じような悩みを抱えることになるでしょう。なぜなら、クライアントやプログラマーとのコミュニケーションは、どんな職場でも必要だからです。
転職を現象面だけで考えるのではなく、「問題の本質」を見いだせば、「本当に解決すべきこと」が見えてきます。「問題の本質」を改善できれば、全てが解決できることにも気付くでしょう。
抽象的思考能力を使って「問題の本質」を見付けよう
このような「物事の本質を見いだし、シンプルに捉える思考能力」を、「抽象的思考能力」と言います。
もし、あなたが転職しようか悩んでいたら、次のステップで「問題の本質」を見いだしてください。
1 「問題リスト」を作る
まず、仕事で嫌だと思っていることを書き出し、「問題リスト」を作りましょう。顧客のこと、職場の人間関係(上司、同僚、部下など)のこと、職場環境のこと、業務システムのことなど、身の回りに起こっている問題を、遠慮なく、思うがままに書き出してみましょう。
2 問題を具体的にする
書き出した「問題リスト」を、さらに具体的にしましょう。具体的にするためには、4W1H(「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どのように」)の問いが便利です。
例えば、問題が「現在の仕事は受託の開発案件が中心。クライアントの意見が強く、不合理ではあるが、クライアントの意見に従わざるを得ないことが多い」なら、「それはいつからなのか?」「いつもなのか?」「どこで起こっているのか?」「誰が関わっているのか?」「全体がそうなのか、それとも、特定の誰かなのか?」「意見に従うことで何が起こっているのか?」「そのとき、何を感じるのか?」「それに対して、今までどのようなことをしてきたのか?」などの問いを、悩んでいるもう一人の自分に投げ掛け、問題を具体的にします。
具体的にすると、「いつもというわけではない」「特定の人が影響しているだけ」のような「全てが問題というわけではない」と気付く場合があります。また、試していない「他にできること」があると気付けば、問題の解決に意識が向いていきます。
5W1Hの「WHY(なぜ)」を入れない理由:連載第4回「我慢していればいいの?――仕事が「つまんない」本当の理由」〜価値観を見つける際のポイント
3 問題をひと言でまとめる
続いて、洗い出した問題をひと言でまとめてみます。「○○ということは、つまり……」「○○ということは、要するに……」のように考えてみるといいでしょう。
例えば……
1 「現在の仕事は受託の開発案件が中心。クライアントの意見が強く、不合理ではあるが、クライアントの意見に従わざるを得ないことが多い」ということは、つまり……「クライアントに言いたいことが言えない」ということ
2 「プロとして提案しているにもかかわらず、クライアントの素人判断で口出しされるのが嫌」ということは、つまり……「提案を受け入れてもらえない」ということ
3 「度重なる仕様変更に、プログラマーからは『クライアントの不合理さを調整するのがSEの仕事でしょう』と責められる。クライアントと現場の板ばさみになっているのがつらい」ということは、つまり……「プログラマーとの関係が良くない」ということ
といった具合です。このように、問題をひと言でまとめて共通点を考えてみると、「つまり、問題はコミュニケーションか……」のように、「問題の本質」に気付きやすくなります。
頭の中だけで考えているよりも、頭の外に一度出した方が、全体を客観的に捉えられます。思うがままに書き出して、「つまり、何が問題なのか」を見いだしてください。
なお、ここに上げた個々の例をひと言でまとめたときに、「それは、コミュニケーションではなく体制の問題だろう」のように、別の視点でまとめる人もいるでしょう。
それならそれで構いません。大切なのは、「身の回りに起こっていることを、自分なりの捉え方でシンプルに理解すること」です。あなたなりの言葉で「つまり、何が問題なのか」をまとめてください。
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