ハイスペックPCを買うべきか、我慢すべきか――今から考えておきたい老後の資産:経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」(19)(2/3 ページ)
エンジニアがエンジニアとして生き残るためには、ビジネス的な観点が必要だ。ビジネスのプロである経済評論家の山崎元さんがエンジニアに必要な考え方をアドバイスする本連載。今回は老後の資産について考える。キーワードは「360」だ。
ぜいたくしなくても生きてはいける
第一は、「現役時代と比べてお金がなくても、老後は何とか生きていけるはず」ということだ。
例えば、毎月の年金が10万円だとしよう。10万円では不足だと思うかもしれないが、ローコストな生活を送れば、10万円は十分な収入だ。これは、100円ショップや、スーパーマーケットの安売りを見に行くと十分実感できると思う。
ポイントは、自分と似た経済力の仲間がどれぐらいいるかだ。似たような経済力の人がたくさんいれば、その周辺には彼ら向けの商品やサービスを提供する市場ができるはずだ。お金に見合ったレベルで生活すればいいと割り切り、「最悪でも死にはしない」と考えられれば気楽だ。
インターネットが普及した今では、物質的な生活のレベルを落としたとしても、知的には何ら惨めではないし退屈もしない。プライドを保った生活を十分送れるはずだ。
公的年金はゼロにはならない
第二は、「公的年金は(将来減りはするが)破綻してなくなるようなことはないし、多くの人にとって無視できないぐらいの金額を支給できる」ことだ。
多くの人が漠然と感じているように、公的年金の財政状況は厳しい。しかし、昨年厚生労働省が行った財政検証の中の最悪のケースを見ると、現在130兆円以上ある積立金が将来ゼロになっても、公的年金は企業のように倒産するわけではないし、貨幣価値を調整した実質ベースで現在の年金の6割ぐらいの「使いで」がある金額を支給できる。
読者の親御さん世代が現在もらっている年金額が毎月20万円だったら、読者が年金をもらう30年後ぐらいには、一カ月当たりの年金は現在の貨幣価値で13万円前後ぐらいということだ。
公的年金の支給額は、今後、実質的に(物価を考慮して)毎年約1パーセント程度減額されていき、年金の財政状況によって、この調整がどこまで続くかが変化する。直近の厚生労働省の試算では、「良くて現在の2割減、悪くて4割減」となっている。
仮に、読者が今「毎月13万円で生活しなければならない」としよう。多くの方にとって大きな減額で「苦しい」と思われるだろう。しかし、これを学生であるご子息に対する仕送りだと思えば、そこそこの金額ではないか。
自問していただきたい、読者は、現在の生活と学生時代の生活、どちらが楽しかっただろうか。老後の生活とは「授業に出なくてもいい学生」」のようなものではないだろうか。
焦ってもうけ話に手を出さない
第三は、「老後の生活費の問題をお金の運用で一気に解決しようとしない」ことだ。もちろん、お金の運用がうまくできると老後の経済状況は改善するが、運用に頼って老後不安に対処しようと考えるのはあまりに危険だ。
近年、「老後難民」「下流老人」などといった言葉で、老後の生活に対する不安を煽る書籍や記事をよく見かける。そういうときは、それらの落としどころがどこにあるのか注目してほしい。不安を煽っておいて、その解決策であるかのように商品やサービスを提示するのは、マーケティングの常とう手段なのだ。老後の不安に駆られて、怪しい投資話や生命保険などに捕まらないように注意してほしい。
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「んんんー、見えるぞ見えるぞ、おぬしたちの老後の姿が。みな、みごとに腰が曲がっておるな」「……んなアホな。このヘボ占い師!」