クラウド時代の「Oracle Database」はどこへ向かうのか:Database Expertイベントリポート(1/2 ページ)
オラクル考える、クラウド時代を見据えた次世代データ管理アーキテクチャとは。「Oracle CloudDays Tokyo 2015」の基調講演でデータベース製品担当キーパーソンのアンディ・メンデルソン氏が登壇し、戦略を語った。
日本オラクルが2015年12月8〜9日、日本顧客向けイベント「Oracle CloudDays Tokyo 2015」を開催。クラウド事業として強化しているSaaS製品群の戦略と共に、同社の根幹製品であり、この事業を強力に推進する基礎としての「Oracle Database」の今後についての方針も語られた。
12月9日の基調講演では、米オラクルのデータベースサーバー技術担当エグゼクティブ・バイスプレジデントであるアンディ・メンデルソン氏が登壇。オラクルで30年以上、データベース技術開発を率いてきたメンデルソン氏が、クラウド時代に対応したリレーショナルデータベース「Oracle Database 12c」(以下、12c)とアップデートが予定される「Oracle Database 12c Release 2(12.2)」(以下、12c R2)の新機能、そしてこれらの周辺戦略を解説した。
企業が望む「ハイブリッドクラウド」に必要なこと──オンプレミスもクラウドも「まったく同じ」に
オラクルが持つデータベース製品の現行バージョン、12cの“c”はクラウドを意味する。メンデルソン氏も「クラウドのために設計した」と述べるように、クラウド対応を意識し、「コンテナー」や「プラガブルデータベース」といった概念(後述)をデータベース運用に取り入れたバージョンだ。ただし12cは、クラウド上“だけ”で使うことを想定しているのではない。オラクルが考えるPaaS(Platform as a Service)の戦略では、オンプレミスとクラウドを隔てなく運用できることを目指している。とはいえ、他社も用意する「ハイブリッドクラウド」と何が違うのか。
オラクルは、「何もかも同じように」を理想とすることが違うという。これは、同じアーキテクチャ、同じハードウエア、同じソフトウエア、そして同じスキルで使えることを示す。メンデルソン氏は、オンプレミスからクラウドへの移行を「旅」と例え、「その過程であるハイブリッド(併用)期間は以後10年(2025年頃までは)続く」と述べた。この旅の過程では、現在のオンプレミス形システムと自社に理想的なクラウドコンピューティングの姿を見据えながら、クラウドへ行けると判断できたところから移行していく。オンプレミスとクラウドを行き来しながら、つまり、仮に失敗したとしても元のオンプレ環境へ戻せる。この特徴をオラクルの独自性や優位性としたいという。
クラウドサービスでは、同社は何より「セキュリティ」を最重要項目とする。「クラウドへデータを預けるのが不安」、そう考える企業は多い。オラクルはこの課題に「データのフル暗号化」と「管理性の整備」で応える。
データの暗号化を「常にオン」とする。送受信データはもちろん、格納するデータも全て暗号化する。“常に”で生じるオーバーヘッドやパフォーマンス劣化への懸念も排除した上で、ということだ。後者は、暗号鍵を「Oracle Key Vault」で管理する仕組みで実現する。監査証跡に「Oracle Audit Vault」を使い、ユーザーのデータは、権限を持つユーザーだけが確実にデータを管理できるようにする。
技術的に、自社のオンプレミスシステムと、先端技術のシステムをプロフェッショナルが専任で管理するクラウド事業者の環境はどちらが安全かとする話はともかく、「顧客の不安もカバーする技術で支える」とメンデルソン氏は述べる。
クラウド環境と融合するOracle Databaseの実例として、メンデルソン氏は「Oracle Database Cloud Services」を紹介した。これはパブリッククラウド「Oracle Cloud」で提供されるサービスの一つで、クラウド上でOracle Databaseを利用できるものだ。メニューによって利用できる機能が分けられており、アプリケーション開発、本番環境としての利用、BIやデータ分析、災害対策などの用途で利用できる。業種や業態、必要な機能に応じてコストを最適化できるのがポイントだろう。
最上位メニューには、新たに「Oracle Database Exadata Cloud Service」が加わった。Oracle Databaseが高速に動くよう最適化したエンジニアドシステム(Oracle Databaseとハードウエアを一体化したアプライアンス、オラクルでは「エンジニアドシステム」と呼んでいる)である「Oracle Exadata」を、従量課金制のクラウドサービスとして使えるものだ。高額なExadataのリソースを、期間やボリュームを区切って借りられるものと想像してもよい。メンデルソン氏は「“Exadata as a Service”により、クラウド上でも、これまで高額で手が出せなかったユーザーにも、最高のデータベースパフォーマンスを提供できる」と話す。
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