情熱もチームワーク力も必要ない――米国人起業家が「一緒に働きたいエンジニア」とは:Go AbekawaのGo Global!〜Brent Reichow編(2/3 ページ)
グローバルを股に掛けたキャリアを築いてきたIT業界の先輩にお話を伺うシリーズ。今回は日本で起業したBLUESHIFTのBrent Reichow氏に、起業時の苦労譚や同社がエンジニアを採用するときに注目するポイントなどを伺った。※オリジナル動画付き
情熱もチームワーク力も重視しない。エンジニアに必要なのは「技術力」
阿部川 ブルーシフトの社員は10人とのことですが、皆さんエンジニアリングのバックグラウンドをお持ちなのですか? そして皆さん日本の方ですか?
ライコー氏 半々、かつ半々です。つまり、半分が日本人で半分が米国人、エンジニアと非エンジニアも、半分半分です。別にプランしてそうしたわけではないのですが。
阿部川 エンジニアを雇うときは、どのような点を評価しますか?
ライコー氏 ものすごく具体的に言うと(笑)、Linuxが分かるエンジニアでないと駄目ですね。わが社はLinuxのプラットフォーム上で開発をしていますから、ある意味当然です。それとハードウェアやLinux OS、その他のソフトウェアの開発が分かっていること。さらに、Pythonが分かること。バーチャルマシンやコンテナ化といった新しいテクノロジーや業界に精通していること。これらを兼ね備えたエンジニアが必要です。
阿部川 エンジニア採用の決め手は何でしょうか? 「技術力」なのか、「チームワーク力」なのか、「マネジメント力」なのか、「情熱」なのか、「グローバルへの対応力」なのか。
ライコー氏 営業マンでしたら「情熱」を持ってがんがんお客さんのところに行く人かもしれませんが(笑)、エンジニアであれば、特定の技術に関する知識や経験といった「技術力」です。必ずしも情熱的である必要はないと思いますし、チームワーク力も必ずしも大切だとは思いません。
それよりも、どれほど特定の技術に精通していて、それに的確に対応できる知識や技量といった「道具類」を自身の中に持っているか、そしてそれを使って私たちと一緒に仕事を進められるか、だと思います。
そして、エンジニアは技術が好きでないとダメだと思います。私たちが求めるエンジニアは、本当に技術が好きで、24時間ずっとコンピュータの前にいて、ゲームをしたり、世界中のビデオをダウンロードできるソフトウェアを開発したり、そんなことを好きでずっとやれるような人です。それこそが私たちの仕事だからです。
私たちはコンピュータを用いることをなりわいにしていますから、それが好きであれば、うまく一緒にやっていけると思うのです。
「起業にふさわしくない起業家」が起業した理由
阿部川 ライコーさんは日本に住んで23年になるのですね。
ライコー氏 そうなんですよ、びっくりですね(笑)。
阿部川 日本にいらしたきっかけは何だったのですか?
ライコー氏 大学を卒業後、最初は米国でITエンジニアの職に就きました。それは素晴らしい経験だったのですが、「これ以上のことが世界中にはあるのではないか」と思うようになりました。そこでアジアの各国を見て回ろうと考え、そのスタートとして日本に来たのです。そこから次の国へと行くはずだったのですが、ふっと気付いたら23年間も住み着いていた、というのが正直なところです。
日本では、システムインテグレータでのハードウェアやソフトウェアの販売を経て、NTTなどの大手企業で働き、PSI(国際調達情報)やISS(インターネット・セキュリティ・システムズ)などの、よりネットワークやセキュリティ寄りの分野へシフトしていきました。
そのころブルーシフトの共同設立者となる同僚に出会い、「自分たちの方がもっとうまくやれるのではないか」と意気投合し、なけなしの資金――確か百万円程度だった思いますが――を二人で捻出して、会社を設立しました。
阿部川 いわゆる大企業から独立して起業することに踏み切ったのはなぜでしょうか? 11年前の起業当時は、データの保守やセキュリティは始まったばかりの市場で、大きなリスクもあったのではないですか?
ライコー氏 実は私ほど、起業家という言葉にふさわしくない経営者もいないと思います。父は教師でしたし、母は30年間同じ企業で勤め上げた人でした。家族には起業に関係する人は皆無でしたし、私自身、自分が起業するとは思ってもいませんでした。
ところが、何社かでキャリアを積んで、マネジメントをつかさどる立場になると、会社全体の運営を学ぶようになります。かつて働いていた企業は、私がどんなに新しいことや、価値があると思うことを提案しても、受け入れてはくれませんでした。その会社は株式上場を果たしていたので、シニアマネジメント層の人たちは、これ以上冒険する必要がなかったからです。自分がいくらベストだと思い、情熱を持って提案しても、上層部がその価値を認めなければ、会社は動きません。それならば「自分でやろう」と思いました。
起業の理由は人さまざまです。例えば「自分でやる方が楽しいから」とか、市場の成熟度合いを見て「今がチャンスだから」とか、「素晴らしい新製品や新サービスを思いついたから」など。私たちは、私たちが自信を持って提案したアイデアを、私たちが成功させてやろうと思ったのが理由です。
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