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セルフサービスBIって、結局何に使える?セルフサービスBIのABC(3)(2/2 ページ)

ビジネスの最前線にいる読者のための、セルフサービスBI入門連載。第3回は、「セルフサービスBIとは誰が、どんな用途に使えるものなのか」を紹介する。

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フランチャイズチェーンのスーパーバイザーの例で考える

 もう一つのいい例は、フランチャイズチェーンです。飲食、小売りなどのフランチャイズチェーンでは、フランチャイズ本部から派遣され、加盟店のオーナーにアドバイスを行う「スーパーバイザー」と呼ばれる人たちがいます。セルフサービスBIツールは、こうした人たちのための重要な武器になれる可能性があります。

 スーパーバイザーは、加盟店の経営者に指示する立場ではなく、納得してもらわなければなりません。このため、このため、成功事例や失敗事例を効果的に共有し、あるいは他の加盟店と比較した場合の各種取り組みの達成度合いについて客観的に認識してもらうために、セルフサービスBIツールを生かせます。

 例えば売上不振に陥った店舗が、まず何を改善すべきかについて、スーパーバイザーと加盟店オーナーの間で意見が分かれたとき、スーパーバイザーが他店舗での効果をデータで示せれば、説得力が増します。

 加盟店オーナーに、セルフサービスBIツールで作ったダッシュボードを活用してもらうこともあり得ます。必ずしも、加盟店オーナーが自らの店舗の成功や不振の原因を積極的に探るということではありません。スーパーバイザーに経営ダッシュボードを作ってもらい、自店舗の経営状況や基本KPIの達成状況を日常的にチェックできればメリットがあると思われます。

 もちろん、加盟店オーナーを説得する以前に、スーパーバイザー自身がこの加盟店の問題点を探るために、セルフサービスBIツールを活用できます。この店舗に関する各種データを基に、本部における立地調査や販売促進などの専門家のアドバイスを受けて、これを加盟店に伝えることも考えられます。

 つまり、セルフサービスBIツールを活用することで、スーパーバイザーの業務の効率化、効果増大につなげられる可能性も生まれます。

マーケティングと営業の連携で効率的な売り上げ増を図った例

 ここで、米メジャーリーグのテキサス・レンジャーズにおける、セルフサービスBIツールの利用例を紹介します。

 MLBの野球チームにとって、試合のチケット販売は最大の収入源であり、毎年81のホームゲームのチケットを売らなければならないといいます。このために、レンジャーズのマーケティング担当部署では、花火ショーやコンサートなどの併催イベントや、野球帽などのプレゼントといったプロモーション、そしてテレビやラジオ、街頭などの宣伝を実施しています。マーケティングチームは、こうした活動の効果を可視化するため、各種プロモーションと各試合の入場者数を関連付けたダッシュボードを作りました。

 2012年シーズンの全試合につき、それぞれの入場者数を、プレゼント実施試合、その他のプロモーション実施試合、プロモーションなしの試合に分類して分析。その結果、これまで金、土、日のゲームに限定して提供していたプレゼントの一部を、平日に移行してみることにしました。火曜日にプレゼントの日を作ると、翌年の火曜のゲームの入場者数は、前年比で5%増えたといいます。

 その後、マーケティングチームは営業担当部署との連携を図りました。チケット販売システムからリアルタイムに販売情報を取得、これを使ってマーケティングとチケットセールスの2部署が、販売トレンドをリアルタイムで共有し(ダッシュボードは15分単位で更新)、必要に応じて、試合ごとの売上目標達成のためのアクションを迅速にとれるようにしました。


Tableauが公開しているテキサス・レンジャーズの事例動画より。大雨の日の当日チケット販売状況をダッシュボードで確認、人員配置を最適化することもあるという

 チケットの売上状況がマーケティングに逐一分かるようになったのは大きな進歩だったといいます。メジャーリーグでは、各チームの発行するチケットの50〜70%がシーズンチケットで、それ以外のチケット販売がシーズン中の目標となるそうです。各試合の開催日に至るまでの売り上げトレンドに注目すると、試合当日の売り上げが最大16%を占め、当日を含む直前10日間の売り上げが約50%を占めることが分かりました。すなわち、マーケティングチームとしては、試合までの10日間の活動が重要であることが分かったといいます。

 チケットセールス担当者も、売り上げをリアルタイムで追跡でき、細かな内訳をいつでも確認できるようになりました。チケットセールスは「今日のチケットセールス」というダッシュボードで、当日に販売中の全試合のチケット売上を把握。これを試合別、チケットの種類別に分類表示できます。すると、ある日の売上枚数は例外的に多かったが、大部分はグループチケットだった、といったことが分かりました。また、例えば「提携飲料会社のドリンクを持ってくれば、窓口でチケットを割り引く」といった、チケットプロモーションで購入されたチケットの枚数も把握でき、プロモーションの効果が明確に分かるようになったといいます。

 例えば、ある試合のチケット売上が予算を大幅に下回っている場合、開催日の4〜5日前に関係者の会議を招集。不利な条件がそろっているなら、年に2〜3回しかやらないと決めている大幅値下げを実施することもあるといいます。実施する場合は、リアルタイムで売り上げに対する効果をモニタリングし、さらにメディアでのコマーシャルやSNSでの告知を行うなどして、この超短期でのキャンペーンを成功に導ける確度を高められるようになったそうです。

セルフサービスBIは、カイゼンを目指す人たちのツール

 ビジネスのためのデータ分析というと、分析をしても正解など見いだせないと思いがちです。しかし、組織の中のさまざまな人々が、少なくとも自身の目標に応じたカイゼンのために、試行錯誤をすることはできます。セルフサービスBIは、こうした試行錯誤の方向性に関するヒントを見いだし、あるいはその効果を高めるために使えます。また、異なる立場や役割の人々を、データでつなぐことができるツールだといえます。

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