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賃貸vs.持ち家、どっちがお得?――住居選びも戦略だ経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」(22)(3/3 ページ)

エンジニアがエンジニアとして生き残るためには、ビジネス的な観点が必要だ。ビジネスのプロである経済評論家の山崎元さんがエンジニアに必要な考え方をアドバイスする本連載。今回は「エンジニアの住居戦略」を考える。

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「持ち家vs.賃貸」は投資として考える

 さて、お待ちかねの「持ち家vs.賃貸」問題だ。先に結論を言うと、「投資として評価して、不動産の価格が安ければ買えばいいし、高ければ賃貸の方がいい」が私の答えだ。

 例えば、販売価格が6000万円で、自宅として借りる、あるいは他人に貸す場合の家賃が月に25万円のマンションがあるとしよう。年間家賃総額は300万円だ。

 考えやすくするために、そのマンションを持っているAさんと、そのマンションに家賃を払って住んでいるBさんに登場してもらう。共に1億円相当の資産を持っており、その内訳は、「Aさん 預金1000万円+金融資産運用3000万円+不動産6000万円。ただし、家賃支払いなし」「Bさん 預金1000万円+金融資産運用9000万円。ただし、毎年300万円家賃支払い有り」だ。

 両者の優劣を分けるポイントは、金融資産運用の差額6000万円が年間300万円を稼ぎ出すか否かだ。

 年金基金などのプロの投資家が株式に期待する投資リターンは「年率5〜6%」だ。6000万円の5〜6%は「300〜360万円」なので、比較は微妙だ。

 リスクについて考えてみよう。金融資産運用には、株価変動のようなリスクがある。一方、不動産市況にも(毎日めまぐるしく価格が変動することはないが)長い目で見ると相応のリスクがある。その大きさは、平均株価より小さく、その半分よりは大きいぐらいだ。為替レートの変動と同じくらいと考えればよいだろう。

 不動産には、品質のバラツキや劣化、周囲の環境の変化、地域別の人気の変化など、予測しにくいリスクもある。株式のように分散投資できないこともリスクとなる。

 将来の補修コストは確実に掛かるが、それがどの程度の金額になるかは、購入時点で予測できない。さらに不動産は、金融資産のように分割して売れないし、数日で換金できる流動性もない。取り引きの手数料も大きい。

 物件の経年劣化も考えねばならない。マンションの場合、毎年1%くらいずつ家賃が下がる傾向があると言われている。

 上記を踏まえると、この例の場合、筆者は賃貸に軍配を上げたい。

※投資や不動産のリスクはケースごとに異なるので、あくまでも「考え方」の参考にとどめてください(編集部注)

「持ち家」のメリット

 リスク面を中心に「持ち家」に対して懐疑的な側面を書いたので、プラス面も補足しておこう。

 間取りの変更なども含めて、住み方の自由度が大きいのはメリットの一つだ。賃貸は「住む場所」の自由度が大きいのに対して、持ち家は「住み方」の自由度が大きいとの対比がおおむね成り立つ。

 また、ローンで購入した場合は、返済が継続的な「貯蓄の強制」となる効果がある。これは、持ち家の人の方が結果的に豊かになる場合があるように見える理由の一つだ。

 同じくらいお金持ちになろうとするなら、「賃貸派」は生活の節約に努め、資産形成に励まなければならないということになる。賃貸派である筆者も、心しておきたいポイントだ。

お知らせ

本連載は、2016年3月より「オルタナティブ・ブログ」に掲載いたします。これまでのご愛読、ありがとうございました。

筆者プロフィール

山崎 元

山崎 元

経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役、獨協大学経済学部特任教授。

2014年4月より、株式会社VSNのエンジニア採用Webサイトで『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を連載中。


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