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OCP準拠のサーバラックを開発。電源仕様やサイズを日本向けに「米国仕様だから使えない」の課題を解消

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)と村田製作所、NTTデータ先端技術の3社は、Open Compute Project(OCP)の仕様に準拠した専用ラックシステムを共同で開発する。

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 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)と村田製作所、NTTデータ先端技術の3社は2016年3月7日、Open Compute Project(OCP)の仕様に準拠した専用ラックシステムを共同で開発すると発表した。NTTデータ先端技術が持つ集中電源技術に基づき、村田製作所が電源装置の設計・製造を担当。CTCは、日本国内ユーザーの要望を取り入れた専用ラックシステムの仕様を策定する。ラックの製造はラックメーカー数社が担当する。

 OCPは、サーバなどデータセンター機器の仕様をオープン化するために活動するプロジェクト。サーバの他、ストレージやスイッチ、ラックなどの仕様が策定されている。CTCでは、2014年からOCP準拠のサーバ製品を取り扱っており、2016年2月には、ヤフーの米国法人であるYJ America向けにOCP準拠のデータセンター構築を支援してきた。

国内データセンターでの採用を阻んでいた電源問題


OCPが公開しているラックの仕様

 OCPが公開しているハードウェア仕様のうち、サーバラックについては、主に米国での利用を前提として設計されており、例えば電源装置に供給する電力の仕様は三相3線240Vの交流が標準とされている。一方、日本では単層100/200V、三相3線200Vなどが一般的だ。ラックそのものについても、OCPの仕様は外形寸法が大きく、価格も一般的なものよりも高額になっている。そのため日本国内のデータセンターにOCP仕様の機器を導入するには、これらの課題を解決した上で、日本固有の問題として、耐震性能も考慮する必要があった。

 OCPはもともと、データセンターのハードウェア設計をオープンにすることでハードウェアベンダーに依存せずに低価格で調達できる点で注目を集めていたが、日本固有の事情から、日本国内で利用するには、電源とサイズの問題を自力で解決しなければならず、コスト面での利点が見いだしにくくなっていた。

日本の給電事情を考慮、HVDCも選択可能な設計に

 今回3社が共同開発するOCP専用ラックシステムは、集中電源方式を採用、NTTデータ先端技術が持つ特許技術も応用することで電力効率を向上させる。さらに、給電方法も三相4線や三相3線、単相といった日本で一般的な交流給電に対応する。加えて、より効率のよい給電方式として注目されているHVDC(高電圧直流給電)を選択できるように設計する。

 NTTデータ先端技術の特許技術は、ラックに収納する個々の機器には電源装置を内蔵せず、ラックが備える電源装置が交流―直流変換を一括して担い、この電源装置から各機器に直流電力を供給。集中電源の台数を最適制御し、バッテリーを利用してピーク対応を行うというもの。NTTデータ先端技術によると、この集中電源方式によって、サーバラック全体で5〜10%の電力効率改善が期待でき、従来の無停電電源システムに対して、省エネで信頼性、安全性に優れたシステムを構築できるとしている。

 実際に電源装置の設計・製造を担当する村田製作所は、これまでデータセンター向けの集中電源装置を開発・製造してきた他、大電力のリチウムイオン2次電池の開発も進めている。これらの技術にNTTデータ先端技術の集中電源技術を融合させ、集中電源方式の電源装置を高効率化し、リチウムイオン2次電池を多目的バッテリーモジュールとして組み合わせる。

 外形寸法は日本国内で標準的に使用されている大きさに変更する予定で、価格についても米国で販売されているOCP専用ラックの7割程度の価格帯にするよう検討中だとしている。

 電源装置については、2016年8月にサンプルの提供を始め、2017年3月に製品販売を計画する。多目的バッテリーモジュールについては、2017年3月の製品販売を目指して開発を進めるとしている。

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