ライオンがSAP ERPや基幹系のDB基盤をOracle Exadata X5 & Oracle Database 12cに更改 性能が4〜20倍向上:SAPのさらなる高速化にIn-Memoryの活用も検討(1/2 ページ)
ライオンは先頃、Oracle Exadata V2で運用してきたSAP ERPや基幹系のデータベース基盤をX5に移行。併せてRDBMSもマルチテナントを活用したOracle Database 12cにアップグレードし、処理性能が4〜20倍向上した。同社は今後、Oracle Database In-Memoryの活用も検討しているという。[プライベートクラウド/データベース統合][Engineered System]
ハミガキやハブラシ、せっけん、洗剤といった日用品から、医薬品までを幅広く提供するライオン。同社は2011年より「くらしとこころの価値創造企業」「環境対応先進企業」、そして「挑戦・創造・学習企業」を目指した経営ビジョン「Vision 2020」を掲げ、創業から125年目を迎えた現在も、さらなる成長に向けて挑戦を続けている。
そんな同社は先頃、2010年よりSAP ERP(統合基幹業務システム)のデータベース基盤として運用してきたOracle Exadata V2を同X5に刷新した。日本オラクルが2015年12月に開催した「Oracle Cloud Days Tokyo」におけるライオン 統合システム部部長の宇都宮真利氏による講演の内容を基に、リプレースプロジェクトの概要とライオンが得たメリットを紹介する。
2010年、DB2/Teradataで運用してきた基幹データベースを「Oracle Exadata V2」に集約
積極的なIT活用で知られるライオンは2010年、30年以上もの間メインフレームで運用してきた基幹システムをオープン化し、併せてデータベース基盤にOracle Exadata V2を導入した。Oracle Exadata採用の理由としては、次の4つが挙げられる。
- メインフレームで利用してきたデータベースの移行先の確保
- Oracle Databaseのライセンス費用および保守費用の削減
- Business Intelligence(BI)ツールの刷新
- さまざまなシステムで利用しているOracle Databaseの統合
宇都宮氏によれば、Oracle Exadata V2の導入により、同社はさまざまなメリットを得ることができたという。
「最大のポイントは、それまで利用してきたDB2、Oracle Database、そしてTeradataによる3つの大規模データベース基盤をOracle Exadata上に統合できたことです。また、開発、検証、本番機を1台のOracle Exadataに集約した他、オンライン処理も大幅に高速化されました。Teradataの更新費用が不要になったことで、コスト削減にも大きく寄与しています。さらに、Oracle Exadataを導入したことにより、データベースソフトウェアが1種類に集約され、運用管理の負担を軽減できたことも大きなメリットですね」(宇都宮氏)
2015年、Oracle Exadata X5へ更改 同時にOracle Database 12cへ移行
ライオンに多くの恩恵をもたらしたOracle Exadata V2だが、導入から5年が経過した2015年、ハードウェアの更新時期を迎える。移行先として選ばれたのは、最新の「Oracle Exadata X5」であった。
この選定に際して、宇都宮氏らは「数年に一度しかない更新の機会。コスト的に許される範囲の最大スペック構成で導入しよう」と決断。オールフラッシュのストレージサーバである「Oracle Exadata Extreme Flash」を搭載したモデルを選び、メモリも768GBまで増設するなど、ハイスペックな構成で導入している。なお、データベースソフトウェア(RDBMS)には「Oracle Database 12c」を採用し、マルチテナント機能である「Oracle Multitenant」やインメモリデータベース機能である「Oracle Database In-Memory」も追加した。
実はこのとき、ライオンはデータセンターの移設も検討していた。首都圏直下型地震に備え、それまで関東圏の2カ所にあったデータセンターを関東圏外のエリアに移すというものだ。このデータセンターの移設に伴い、基本的に全てのインフラ機器を刷新する計画であった。
「既存のハードウェアを移設した場合、輸送のためにシステムを止める必要がある他、移送中に壊れるリスクもあります。そのため、新旧両方のデータセンターにハードウェアを設置し、ネットワーク経由でデータをコピーすることにしました。Oracle Exadataについても、新環境にX5を設置し、以前のデータセンターにあるV2からデータをコピーすることを考えましたが、SAPによるサポート認証が間に合わなかったために断念したのです」(宇都宮氏)
ライオンの基幹システムはSAP ERPで構築されており、そのデータベースとしてOracle Exadata V2を使用していた。このデータベース環境のX5への移行に際し、新データセンターにOracle Exadata X5を置いてデータをコピーしようとしたが、その時点でOracle Database 12cはまだSAPアプリケーションの対応データベースとして認定されていなかったため、データコピーによる移行を断念し、Oracle Exadata V2を物理的に運ばざるをえなかったわけだ。
このように紆余曲折はあったが、2015年3月にOracle Database 12cはSAPの認定を受ける。それを受けてライオンは即座にRFP(Request for Proposal)を作成して担当ベンダーを確定。同年5月末には新たなデータセンターにOracle Exadata X5が納入されてV2からの移行作業を開始し、同年9月下旬に切り替えを行っている。
このデータベース移行では、コストを抑える目的で標準的な手法が採用された。具体的には、データベース移行はデータのインポート/エクスポートで行われ、SAP ERPでも標準のデータ移行ツールが使われた。この中でいくつかの小さなトラブルに見舞われたと宇都宮氏は振り返る。
「既知の不具合により、データベースリンクを使用しながらリンク先のスキーマ指定がなく、なおかつエクスポート時に全体を示す『full=y』オプションを指定した場合、シノニム(スキーマオブジェクトへのエイリアス)の一部をエクスポートできないことがありました。また、主キー用の無名インデックスをインポートできないという問題にも遭遇しています。これについては、テーブルとインデックスを2回に分けてインポートすることで回避できると分かり、今回はこの方法で対応しました。パッケージ製品によっては無名インデックスを使っているものがあるので、そうしたケースではこの点に注意するとよいでしょう」(宇都宮氏)
最大20倍の性能向上 Oracle Exadata X5はパラレル処理がお勧め
こうして無事、Oracle Exadata V2からX5への移行を完了させたライオンは、新たなデータベース基盤をどう評価しているのだろうか? 同社は、V2環境とX5環境のそれぞれ対してベンチマークを実施した。まずシングル処理でテストを行ったところ、大きな性能差は見られなかったという。
「パラレルではなくシングルで処理を実行した場合、Oracle Exadata V2とX5の性能差は最大で3.5〜4.5倍、テストの内容によっては、フラッシュキャッシュを使ったV2と大きく変わりませんでした。この結果を見て、最初は『X5は、あまり速くなってないのかな?』と思ったのです」(宇都宮氏)
しかし、パラレル処理のベンチマークを行うと、その評価は一変する。シングル処理とは異なり、パラレル処理では大きな性能差が見られたのだ。
「32パラレル処理でテストしたところ、Oracle Exadata V2とX5の間で最大で20倍の性能差を確認できました。また、同一環境でシングル処理とパラレル処理の速度向上率を比較してみたところ、ディスクを使ったV2で40倍、フラッシュでは60倍、最新のExtreme Flashを搭載したX5では140倍の性能を発揮し、パラレル処理の性能向上も確認できました。このようにシングル処理とパラレル処理には大きな性能差があるため、これからOracle Exadataを検討する皆さんには、パラレル処理で評価することをお勧めします」(宇都宮氏)
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