PGECons、PostgreSQL 9.5の性能検証やデータベース移行の検証結果を公表:「PostgreSQL」の普及推進に向け、2015年度の活動成果を発表
PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムが、「PostgreSQL」の普及推進に向けた活動成果発表会を開催。PostgreSQL 9.5の性能検証やデータベース移行検証結果などを公表した。
PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)は2016年5月13日、2015年度の活動成果発表会を開催。オープンソースのデータベースソフトウェアである「PostgreSQL」の普及推進に向け、PostgreSQL 9.5の性能検証やデータベース移行検証結果などを公表した。
PGEConsはエンタープライズ領域におけるPostgreSQLの普及推進を目的とし、業務システムでPostgreSQLを利用する企業に向け、ノウハウ提供や実機検証などの活動を行っている。PGEConsは2016年で設立から満4年を迎え、会員企業は52社、会員数は3000人を超えた。成果発表会には約200人が出席し、性能ワーキンググループ(WG)、移行WG、設計・運用WGの各主査が活動成果を報告した。
性能WGは、毎回恒例とする性能検証と共に、新機能の検証結果も紹介した。参照系検証は72コアのサーバ(HPE ProLiant DL580 Gen9/Xeon E7-8890v3 2.50GHz 18コア×4)を使い、PostgreSQLは最新版のバージョン9.5(β版)と直前の同9.4でクライアント数を変化させながらスループットの推移の性能差を比較した。測定結果は9.4と比べ、9.5はパフォーマンスが最大で22%改善されたという。また、9.5における最高性能はクライアント数100で2万8500TPS(Transaction per Second:1秒当たりのトランザクション処理件数)に達したことから、9.5で修正されたスピンロックのボトルネック解消が性能改善に寄与しそうだと推測している。
更新系検証は、サーバのコア数と接続数を変化させて計測した検証結果を公表した。ここでもPostgreSQL 9.5は9.4に対してパフォーマンス向上が見られた。いずれもコア数の約2倍以上の接続数でピーク性能に到達することが確認できた。新機能についても、9.5はVacuumを並列で実行できるParallel Vacuumの性能テストが紹介され、ワーカー数40で22%性能が改善されることが確認できたという。大規模テーブル向けBRIN(Block Range INdex)でも、btreeとデータ参照性能や索引の作成時間とサイズを比べたパフォーマンス比較の結果が披露された。BRINはbtreeと比較して参照性能は若干落ちるものの、作成時間は7分の1、サイズは1万分の1以下となるなど、大幅に軽量だと解説した。
また、Red Hat Enterprise Linux(以下、RHEL)における比較検証も行われた。RHEL 6.7と同7.2を用いて、ファイルシステムやI/Oスケジューラ組み合わせを変化させながら、OSの新/旧バージョンでのパフォーマンス差を計測。データベースのサイズがオンメモリかどうかによって傾向が逆転するなど、ナレッジアーカイブとすべき有益な結果が得られたという。
移行WGは「他のDBMSから、PostgreSQLへの移行ガイド」をまとめ、公開した。この移行ガイドは、実稼働しているアプリケーションはそのままに、データベースだけ(主に商用のRDBMSから)PostgreSQLに移行することを想定し、移行作業を体系化してまとめたもの。2015年度まとめ版は、組み込み関数の移行調査やデータベース選定基準などに関する項目が加筆された。
設計運用WGは、周辺ツールとセキュリティに関する調査結果と最新情報を公開した。PostgreSQLは商用データベースソフトウェアに対し、運用系の機能こそ不足することがあるものの、多種多様な周辺ツールが実在することをメリットの1つに挙げている。この状況を背景に、カテゴリーごとに周辺ツールを検証し、機能や適する利用条件をまとめている。
PGEConsは2016年度の活動体制として、性能WGを「新技術検証WG」と改め、新バージョンの性能チェックや新技術の検証を定期的に行っていく。また、他コミュニティーとの関わりなども探求していくという。
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