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“勝手にWindows 10にアップグレードされる”は本当か?山市良のうぃんどうず日記(67)(4/4 ページ)

今回は、今、世間を騒がせている“勝手にWindows 10にアップグレードされる”という恐怖を本当に体験できるかどうか、実際に試してみました。

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筆者の最後のWindows 7 PC、無償期間中に無事アップグレードを完了! その後、BSoD問題が発覚

 「Windows 10を入手する」アプリによる無償アップグレードは、無償アップグレードの期限である2016年7月29日(金)以降、提供されなくなる予定です。方法は明らかにされていませんが、「Windows 10を入手する」アプリはPCから削除されるそうです。

 Cドライブの空き領域が少ない、ハードウェアやアプリケーションの互換性問題が明らかである、勧誘がしつこいのでWindows 10は嫌だ……など、何らかの理由があってWindows 10にアップグレードできない、しない(したくない)と決めた場合は、残り少ない期間中にアップグレードが始まらないように事前に対処しておく(更新プログラム「KB3035583」の削除、またはレジストリの作成)とよいでしょう。

 さて、筆者はといえば、本連載で何度か取り上げてきたように、Windows 7 Ultimate SP1を実行するメインのPCのWindows 10へのアップグレードを先送りしてきました。

 この夏にリリースされるという「Windows 10 Anniversary Update(Redstone 1、RS1)」まで待とうかとも思ったのですが、期限ぎりぎりまで待って、アップグレードに失敗してそれに対処しているうちに期限切れということもあるかもしれません。そこで、5月下旬にとうとうWindows 10にアップグレードしました。

 筆者は「Windows 10を入手する」アプリを使用せず、Windows 10のインストールメディアを使用してアップグレードしました。インストールメディアは、以下のWebサイトからダウンロードできます。

 また、筆者は“すぐにアップグレードを開始する”などということはしません。さまざまなリスクを回避するために、次の手順で実施しました。

アップグレード手順(1)

 「Windows 10 Enterprise バージョン1511評価版」を使用して「Windows To Goメディア」を作成し、アップグレード対象のPCをWindows To Goメディアから起動して、全てのハードウェアが認識され、エラーなしで動作していることを確認しました。

 ただし、この方法はWindows To Go対応メディアが必要であるため、一般ユーザーにはハードルが高いと思います。この手順を実施できない場合は、「Windows 10を入手する」アプリの「PCのチェック」レポートの結果から判断してください。

アップグレード手順(2)

 Cドライブのフルバックアップとしてシステムイメージを、USB外付けHDDやDVDメディアに作成します。Windows 10は1カ月間、以前のWindowsバージョンに簡単にロールバックできる機能を提供しますが、筆者はいつも「ゼロトラスト(Zero Trust:信頼しない)」のアプローチで取り組んでいます。

アップグレード手順(3)

 Windows 10に対応していないアプリケーション、何年も使っていない不要なアプリケーションをアンインストールします。また、Windows 10で不要な機能が有効になっていないかどうかも確認します。

 筆者の場合、何らかの検証のためにインストールした「IIS」「SQL Server Express」「SQLクライアントコンポーネント」を削除しました。何が必要で、何が必要でないかの判断は慎重に行う必要があります。判断に迷う場合は、「Windows 10を入手する」アプリの「PCのチェック」レポートの結果を参考にしたり、アプリの提供元のWebサイトなどでWindows 10の対応状況を調べたりしてください。

アップグレード手順(4)

 Windows 10のインストールメディアから「Setup.exe」を実行し、アップグレードを開始します(画面10)。

画面10
画面10 筆者の最後のWindows 7 PCは「Windows 10を入手する」アプリではなく、インストールメディアからアップグレードを開始した

アップグレード手順(5)

 Windows 10へのアップグレードが完了したら、「デバイスマネージャー」や「イベントビューアー」を開いて、問題が発生していないかどうかを確認します。また、アップグレードで移行されたアプリケーションが問題なく動作するかどうかも確認します。

アップグレード手順(6)

 「ローカルアカウント」から「Microsoftアカウント」に切り替えて、お好みのアプリがあればストアからインストールします。

アップグレード手順(7)

 Windows 10はアップグレード後1カ月間、以前のバージョンにロールバックできますが、ロールバックに必要なものは「C:\Windows.old」ファイルと隠しフォルダ(「C:\$WINDOWS.~BT」など)に保持されています。Windows 10が正常に動作しており、ロールバックする必要がなさそうであれば「ディスククリーンアップ」を実行して、「以前のWindowsのインストール」と「一時Windowsインストールファイル」を選択してクリーンアップします。

 これで以前のバージョンにロールバックすることはできなくなりますが、大量のディスク領域が解放されます。筆者の場合は、アップグレード前にWindows 7のシステムイメージを作成してあるので、すぐにクリーンアップしました。

アップグレード手順(8)

 Windows 10が安定稼働している状態で初めてのシステムイメージを作成し、将来の万が一に備えます。将来の万が一とは、例えば、次の機能アップグレード(Windows 10 Anniversary Update)の失敗です。

 このように慎重にアップグレードすることで、コンパクトで安定したWindows 10環境を手に入れることができたと思っていたのですが、翌日、休止状態からのPCの起動で「死のブルースクリーン(Blue Screen of Death:BSoD)」を目にすることになりました。休止状態だけでなく、スリープからの復帰でも同様のブルースクリーンが発生します(画面11)。

PAGE_FAULT_IN_NONPAGED_AREA(atikmdag.sys)


画面11
画面11 休止状態からPCを再開させようとしたところ、グラフィックスカードのカーネルモードドライバ(atikmdag.sys)を原因とするBSoDが発生

 ブルースクリーンの原因となっているのは、筆者のPCのグラフィックスカード「AMD ATI Radeon HD 4350」(ビデオRAM 512MB、DirectX 10.1、WDDM 1.1)のカーネルモードドライバ(atikmdag.sys)です。同様のエラーはWindows 7でも発生したことがあり、その際にはメーカー提供の最新のドライバに更新することで問題を解消することができました。

 Windows 10でも同じように対処できるだろうと思い、メーカーのサイトでドライバを探していたところ、問題のグラフィックスカードのサポートはWindows 8までで、Windows 8.1およびWindows 10用のドライバはWindows Updateを通じて提供されるバージョン「8.970.100.9001」を使用する以外にないと分かりました。

 そして、AMDはATI Radeon HD 2000/3000/4000シリーズがサポートするWindowsで使用すること(ATI Radeon HD 4350の場合はWindows 8以前ということ)、あるいはWindows 10をサポートする後継のグラフィックスカードにアップグレードするかのいずれかを勧めています。

 どうやら、今回の休止状態およびスリープからの復帰時にBSoDになる問題を解消するには、グラフィックスカードを後継製品に交換するしかないようです。近所のPCショップで、ATI Radeon HD 5450を安価に入手できたので、これに交換して問題を解消しました。

 今回は、Windows 10へのアップグレードに合わせて、ソフトウェア環境を整理し、スリム化しました。グラフィックスカードの交換で3500円ほどの追加出費となりましたが、交換作業の際にPC内部にたまったホコリを掃除することができ、物理的にもキレイに掃除できたので、結果的には良かったのかもしれません。

 個人の場合、無償/有償は別として、Windows 10にアップグレードする/しないは、ユーザーの自由です。Windows 10へは簡単な操作でアップグレードできますが、特に古いPCでは何かしらのトラブルに遭遇するかもしれません。それを考慮した上で、Windows 10へアップグレードする/しないを決めるのはあなた次第です。使用しているPCによっては、メーカー側がWindows 10へのアップグレードをしないように警告している場合もあるので、アップグレードに踏み切る前に十分に情報収集しましょう。

 また、無償アップグレードをするつもりで期限ぎりぎりまで待っているという方は、手遅れになる前にアップグレードを始めた方がよいでしょう。意図しないトラブルで正常にアップグレードできないかもしれません。期限ぎりぎりだと、トラフィックが集中してダウンロード中に期限切れということも想定しておくべきでしょう。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。


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