2016年、手で触るプログラミングおもちゃが続々登場:小学生の「プログラミング教育」その前に
「プログラミングの考え方」を身に付けるのに、PCやキーボードを使う必要はない。小学生になる前でも“おもちゃ”を通じて「プログラミングの考え方」を身に付けられることを目指した製品が、2016年になって続々と発表されている。
文部科学省は2016年4月19日、日本でも小学生に「プログラミング教育」を必修化することを検討することを発表した。キーボードでプログラミング言語を打ち込む、いわゆる「コーディング」を身に付けることを主目的とするのではなく、国語・算数・理科・社会・図画工作・音楽などの教科で「プログラミングの考え方」を生かした授業を行うことが、2020年度からの新学習指導要領に盛り込まれる見込みだ。
「プログラミングの考え方」を身に付けるのに、PCやキーボードを使う必要はない。文部科学省が2016年6月16日に発表した「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」によると、「『アンプラグドコンピュータサイエンス』の考え方の下、コンピュータを使わずに紙と鉛筆で行う教育も提案されている」という。
こうした中、小学生になる前でも“おもちゃ”を通じて「プログラミングの考え方」を身に付けられることを目指した製品が、2016年になって続々と発表されている。
ボード上にブロックを並べて木製ロボットの動きをプログラミング
英Primo Toysは2016年6月24日、仏カンヌで開催されたカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで、同社の知育玩具「Cubetto(キュベット)」がプロダクトデザイン・ライオンを受賞したと発表した。
Cubettoは3歳以上の子どもに向けたプログラミング学習用玩具。木製のロボットやプログラミング用の木製ボード、プログラミング用ブロックなどがセットになっており、遊びながらプログラミングの基礎を学べる。
Cubettoを使った遊びの目的は、「World Map」と呼ぶ地図の上を、「Cubetto」と呼ぶ箱形の木製ロボットを動かし、目的地に到着させること。そのために、Cubettoを動かす命令を意味するブロックをボード上に並べることでプログラムを書く。
そのプログラミングは、LOGO言語によるグラフィックス描画(タートルグラフィックス)によく似ている。LOGO言語は、カーソルを移動させる方向や長さを指定することで、カーソルの軌跡を描画する機能を備えている。
通常のLOGO言語によるプログラミングでは、キーボードをたたいてプログラムを入力し、ディスプレイ上でカーソルを移動させて軌跡を描画させる。これに対してCubettoでは、木製ボード上にブロックを並べることでプログラムを「入力」し、これを実行すると、World Map上で木製ロボットのCubettoを動かせる。例えば、2マス前進させたり、右に90度回転させたりする。こうした要領で、子供たちは遊びながら論理的な処理の流れを学べるというわけだ。
CubettoのPrimo ToysのWebサイトでの直販価格は225ドルで、出荷は2016年10月の予定。日本での発売は、2016年11月ごろの予定である。
イモムシ型ロボットの胴部をつなげて動きをプログラミング
マテル・インターナショナルは6月9〜12日に東京ビッグサイトで開催された「東京おもちゃショー2016」に「プログラミングロボ コード・A・ピラー」(Code-A-Pillar)を出展した。
Code-A-Pillarは、イモムシ型のプログラミング学習玩具。「約90センチ前進」「90度右折」「90度左折」「止まって点滅し音を出す」の4つの仕掛けがコーディングされたイモムシの胴部となるパーツと頭部パーツをつなぎ合わせると、つなぎ合わせたパーツの順番通りにイモムシを動かすことができる。「イモムシがどんな動きをするのか」「イメージ通りに動かせるのか」などを、子どもが自然と考えながら遊ぶことができるという。
メーカー希望小売価格は6900円(税別)。日本での発売は2016年9月中旬を予定している。
Scratchのような「命令」のブロックを手で並べてプログラミング
米Tangible Playは2016年5月から「Osmo Coding」を発売している。Osmo Codingはさまざまな命令のブロックを手で並べることで、iPadゲーム上のキャラを命令通りに動かすゲームだ。並べられたブロックはiPad上に取り付けられたカメラが認識し、ゲームのキャラクターに命令として伝える。
ブロックとして用意されている命令は「歩く」「ジャンプする」「つかむ」「道具を使う」「繰り返す」「条件分岐」「実行する」などが容易されている。
Osmo CodingのWebサイトでの直販価格は49ドル。アプリは無料でダウンロード可能だ。
なお、触れるブロックを組み合わせてプログラミングをする方法は、公立はこだて未来大学でも2013年ごろから研究されている。並べられたブロックに付いているQRコードをスマートフォンのカメラで撮影することで、ブロックの命令を解析するようだ。命令ブロックは「Scratch」を基にしており、2016年5月21日に開催されたScratch Day in Tokyoでも「物質プログラミング」に関する展示が行われた。2016年6月13日には、カメラのみならず、スキャナーでブロックを読み取る方法や、電気回路上にブロックを置いてプログラミングする方法も下記のように動画で公開されている。
ブロックで「机上プログラミング」を行い、PCやタブレットでも答え合わせ
ワイズインテグレーションとナチュラルスタイルは2016年5月16日、「5才〜はじめる!こどもブロック・プログラミング教材 ソビーゴ BP1」を2016年7月下旬から発売すると発表した。ソビーゴ BP1は、記号化されたコマンドをデザインしたブロックを用いて、「机上プログラミング」を行い、そのブロックの組み合わせを、PCやタブレットで手入力で再現し、答え合わせをするというもの。ブロックは、カワダの「ダイヤブロック」に記号がデザインされたもので、それと同じビジュアルのブロックをPCやタブレットで並べることで、ゲームのキャラクターに命令することができる。販売価格は9800円(税別)を予定している。
なお、ソビーゴ BP1と同時に発売予定の「8才〜はじめる!こどもブロック・プログラミング教材 ソビーゴ RP1」は、小型PC「IchigoJam」を使って、段ボール製の組み立て式ロボット「ソビーゴ」を制御する教材だ。こちらの販売価格は1万4800円(税別)を予定している。
特集:小学生の「プログラミング教育」その前に
政府の成長戦略の中で小学校の「プログラミング教育」を必修化し2020年度に開始することが発表され、さまざまな議論を生んでいる。そもそも「プログラミング」とは何か、小学生に「プログラミング教育」を必修化する意味はあるのか、「プログラミング的思考」とは何なのか、親はどのように準備しておけばいいのか、小学生の教員は各教科にどのように取り入れればいいのか――本特集では、有識者へのインタビューなどで、これらの疑問を解きほぐしていく。
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